覗くな! サトルからの警告
どうやら有野さんは大家さんのところで引っ掛かってるらしい。
話が盛り上がるのもいいけど少しは俺の相手もしてくれよな。
仕方ないので時間つぶしにたまにしかしない掃除を始める。
夜だから騒音に気をつけて。
うん何だこれ?
テレビの下にホコリ塗れのノートが落ちている。
前の住人の忘れ物だな。どれどれ読んでみますか。
《これを読んでいるあなた。どうか気を付けください》
不審な一文が目に付く。
一体何だろうか? まさかサトルって奴の黒歴史か?
続いて二ページ白紙が続き新たな一文が浮かび上がる。
シャレてるがどれだけもったいない使い方をするんだよ。
こいつはただの落書きにノート何個分使う気だ?
《あなたが男ならどうか覗かないで。夜に奴らはやって来る! 》
おかしな警告文だな。悪ふざけにしても脅かし過ぎだろう。
男なら? 普通男以外覗かないだろう? 俺は紳士だから覗かないし。
おっと有野さんが戻ってきた。では今夜も楽しみましょうか。
おかしな奴のおかしな警告文など一切無視。無視! 無視!
うん。いつ見てもきれいだな。さすがは有野さんだ。
ああ…… 俺は何をやってるんだろう。
もうクリスマスも正月も迫ってきてるのに約束一つせずただ絶景を眺めてるだけ。
絶景だって眺めているうちに飽きてしまう。それが人間と言うもの。
もう俺のこと気づいてるんだろう。それでもなお踊り続ける。
これは夢か幻想か現実か?
噂は本当だった。外を素っ裸で歩くことはないまでも家では裸族を通している。
もう見慣れたとは言え近づけば近づくほど緊張と言うか興奮が治まることはない。
俺は変態なのか? ただの冴えない高校生だと自分では思っていた。
でも違ったらしい。クラスで噂されるように変態なのかもしれない。
自覚はない。ただ言い訳できるとしたらすべてが見えてないと言うことだ。
その美しい肢体は直視するのには眩し過ぎる。
もう冬の真っ暗闇で光と言えば部屋のみ。それでは本来反射するはずがない。
自分の目さえおかしくなければ…… 俺はどうなっていただろう?
こんな風に取り込まれていたのだろうか?
まただ。笑顔の有野さんが姿を見せる。
「ふふふ…… 」
もうノックすることもない。躊躇ってさえいない。
俺の前に有野さんはいる。十分満足したところで堂々と入って来る。
当然二人の間を閉ざす扉の鍵を開け放っている。
どうせ閉めてもノックをするかガチャガチャやり続けるだろう。
それは心臓に悪い。ただいきなり入って来られると慌てる。
心の準備がまだできてないからな。
今夜はどうなるのか? どこまで行くのか?
期待と恐怖があるが恐怖が上回ることがほとんどだ。
表現は悪いけど狂った人間の考えてることなど到底理解できない。
欲は際限がない。俺だってない訳ではないができるならきちんと告白してから。
でも夜の有野さんはお構いなしに最後まで突っ走ろうとする。
俺が必死に止めてなければどうなるか分かったものではない。
そう言う面では俺は臆病なのだろうな。
でも彼女の意図が掴めない以上危険は冒せない。
そして罪も犯せない。受け入れる訳には行かないんだ。
俺が狂わない限りこれ以上は進展はない。
ふうーと息を吐く。
「有野さんどうしたんですか? そんな姿で? 」
今夜も完全なる素っ裸。どこも隠そうとしてない。堂々としたものだ。
俺はだからって全部が見える訳ではない。
肝心なところがすべて隠れてしまっている。
そのことについて有野さんは気づいてない。
これだけ興奮していればそれも当然のこと。ただ彼女に悪い気もする。
俺を喜ばせようと意を決してやった行為。
それなのに俺は見えてないのだからな。
もはや隠れた部分は想像で補うしかない。
ははは…… それにしても何をやってるんだろう俺?
相談することさえ難しい。本人は当然五階さんや大家さんにも言えない。
どう考えても家族にも友だちにも医者にも言えるはずがないんだ。
俺が見えてないのは俺だけの問題。有野さんは関係ない。
しかし想像で補ってるとは言えやっぱり見たいかな。それが偽りない俺の想い。
格好つけてるが俺はそう言う人間なのさ。と言うかまだ高校生。
よく分かってないのが現実。
それにしても俺と有野さんの間にあるものが抜けない限り進展はなさそうだ。
大体が白いモヤ。胸と下半身付近に漂っている。
何度目を擦っても変わらない。モヤが晴れることはない。
そうすると頭の中はモヤモヤしたまま。五里霧中状態となる。
続けて多いのは湯気だ。どこからともなく漂って来る。
下から徐々に徐々に上がって行く。
この場合は最初に見てしまえばもしかしたら見えるのかもしれない。
しかしそれができない。もったいないし神々しいから。
俺は好物は後に取っておく派だ。
モヤと湯気は似ているがより目の影響を考えるとモヤ。
目の負担を考えると謎の光もそう。
見えそうで見えない代物の代名詞。部分的に直線状に当てるから厄介だ。
大体の邪魔者はこの三つ。残るは黒い落書き。のり弁と言う奴だろうか。
黒塗りは全体的だから芸術性が皆無。多少の隙間がなければ余裕を感じられない。
芸術性と言えば髪の毛かな? 特に黒髪のストレート。
隣から見てる分には有効だろうが実際近づけば手に取ってしまう危険がある。
おっと…… つい思春期症候群を熱く解説してしまった。
他にもあればぜひ教えて欲しい。
おっと…… 俺は何を熱くなってるんだ? 恥ずかしい限り。
気づけば有野さんは呆然自失状態。
続く




