妹との関係
ついに三日間で近隣トラブルが解消される。
両隣が些細なことで喧嘩を始めたから止まらなくなった。
しかし見守ってると三日がどうやら限界だったらしい。
たぶん大人の五階さんから折れたかしたんだろう。
すべて推測だけど二人を比べるとどうしてもそう言う結論になる。
だから放課後の有野さんはいつも以上にしつこくてうっとうしい。
「ほら手を繋ごう! 」
「ダメですよ! 我々の関係を疑ってる者がいるんですから」
おかしな言い訳をする。ただ間違ってはいない。
そいつらはクラスにもいるし教師にも。緑先生の動きがどうもおかしい。
最近屋上で一人っきりで食べなくなったから。特に五階さんと一緒の場合が多い。
だから何かあると探りを入れて来ている。
でも俺も言えないし緑先生が好きだから隠し通している。
ただ親密にできない理由は別にある。
気持ちの問題が大きい。
有野さんの部屋を覗いてる件を本人に言えてない。言っていいはずはないが。
ただ有野さんが乱入してくるようになってもう彼女が分からなくなっている。
俺はやっぱりきちんとすべてを告白すべきだろうな。
その上で嫌われたら仕方がない。その時は五階さんにでも慰めてもらえばいいや。
そんな風に軽く考えている。それでは最低最悪のクズ野郎じゃないか。
これではいつか愛想を尽かされる。
「まさか妹さんとの関係に悩んでるの? 」
有野さんは俺をどんな風に見てるのだろう?
妹大好きのシスコンブタ野郎だとでも思ってるのか?
それはいくら何でも心外だよな。
俺はちょっと妹思いが強い単なる男さ。それが言えたらどれだけいいか。
言ったら絶対誤解される。いや本当に誤解なのか?
「はあ? 和葉はかわいいけど生意気で…… 」
あまり余計なことが言えないから疲れる。
妹との関係はそれは大変デリケートな問題。
いくら有野さんでも立ち行ってもらいたくない。
「私とどっちが好き? 」
うわこの究極になってない質問は何だ。
うーん。どっちって言われても。和葉は妹の訳で。有野さんは多重人格な訳で。
どっちだと一分以上悩んだ末に答えを出す。
「もちろん有野さんに決まってます! 」
「あらあら一ノ瀬君随分間があったけど? 本当に決まってるの? 」
「それは真剣に考えた上で答えを出したから」
若干悩んだよな。悟られたら厄介だ。この間は歓迎してもらいたいぐらい。
「ありがとう一ノ瀬君。嬉しい! 」
そう言って手を繋ぐのではなく腕に絡みつく。
うっとうしいほどの有野さん。でも悪くない。
しかし当然のことを述べたに過ぎないのにそこまで喜ばなくても。
これは不安の表れかな? 俺も人のことは言えない。
今すぐにサトルと比べてどちらを選ぶか聞いてみたいなと言う願望がある。
しかし当然サトルなどと言われたらもう立ち直れない。
だからやはり言えないんだ。
「有野さん。だから慎重になりましょうよ。誰が見てるか分かりませんから」
「はいはい」
しかし放してくれない。困ったな。ああ俺って何て罪な男なんだろう?
「そうだ。パピヨンと私はどっちがいいのかな? 」
笑いながらふざけて聞く。これは舐めてる? だったら逆を言ってやれ。
「もちろん五階さんですよ」
「そんな…… 一ノ瀬君私…… 」
あーあショックで泣き出しそう。そうさ。俺は酷い男なのさ。
数え切れないほど女を泣かせた罪な男。
おっと…… 現実と妄想がごっちゃになっている。
「冗談ですよ。冗談に決まってるでしょう」
まあ半分ぐらいは本気だけど。それは今はいいよな。
「嬉しい! 」
「ははは…… では離れてください」
「嫌! 」
ダメだこれは。
「失礼。今私のこと話してなかった? 」
五階さん参戦。あれこれはヒートアップの予感。
そろそろ逃げようかな。
「楽しそうにお話になってたわねお二人さん。
まさか一ノ瀬君は私よりマナの方がいいの? 」
お弁当箱をちらつかせて優位に立とうとする戦略家の五階さん。
うわ…… 毎日のように作ってくれるのでつい慣れてしまった。
もう前までの雑で大味のお昼には戻りたくない。だからって言えるはずない。
「そんなことはありません。ただ比べることができないほど二人はきれいで。
俺にはもったいない限り」
どうにかごまかすが五階さんの追及は厳しい。
それに対して有野さんは恥ずかしそうに喜ぶ。単純だな。
「まあいいわ。明日からも変わらずこの関係でいましょうね」
そんなこと言ってからかだうけからかって気持ちを弄ぶ五階さん。
結局五階さんは俺のことをどう思っているんだろう?
ホテルでのこともある。有野さんのこともある。
ここははっきりしてもらいたいところ。
何だかあやふやなままで帰って来てしまった。
こう言う時はストレス発散をするのがいいでしょう。
絶対に気づかれないようにカーテンを開け有野さんを探る。
どうやらまだ帰ってきてない。大家さんに用があるようなこと言ってたっけ。
ほら有野さん。お喋りに夢中になってないで早く戻って来てくれ。
我慢できないだろうが。
しかし一時間経っても帰って来ない。
仕方ないのでたまにしかしない掃除を始める。
夜だから騒音に気をつけて掃除機をかける。
テレビの下に隠れるようにノートが落ちていた。
まったく前の住人の忘れ物だな。どれどれ暇つぶしに読んでみますか。
続く




