屈服! 刺激的な世界
思春期症候群の影響で自分を見失っている。
すべてが俺の妄想か夢ならどれだけいいか。でも真実は違うんだろうな。
真実か…… 追及するには一歩踏み出すしかない。
へへへ…… では今夜も行ってみますか。
俺は悪い人間だから今夜も覗くんだろうな。
それが俺のルーティンだから。どうしようもない。
夜食を片手に今日も張り込む。
しかし昨夜も一昨日も結局のところ派手な動きをせず無事に過ぎていく。
三日前は五階さんと。二日前は日暮先生と。昨日は一人で。
やはり俺の妄想の産物なのか? 違うよね? 違うと言ってくれよ有野さん!
さあどうしようかな?
今日はずっと有野さんを見ていた。
やっぱりかわいいよな。その睨みつけた顔が堪らない。
あれ? おかしいぞ。教室での有野さんはいつもと真逆。微笑んでいた。
大丈夫か? どこかで頭でもぶつけたのだろうか?
有野さんがそれでは俺だって調子が狂ってしまう。
カーテンから見える世界はそれはそれは夢のようで見続けるには刺激が強すぎる。
だからなるべく目を逸らしてずっと見ないように気をつけている。
それでも刺激的な格好でほほ笑む有野さん。
昨日一昨日とはうって変わって臨戦態勢だ。
俺は一体何を見てるのだろう? 見せられてるのだろう?
帰ってきてすぐに制服を脱ぎ捨て下着で。はしたないと考える暇もなく全裸に。
そして恐怖の夜が今日も訪れる。
姿を消したと思ったらどんどんと叩く音。
この奇妙な打撃音は有野さんの叫びとも言える。急いで入れなけば悪化する。
考える余裕を与えられずについドアをオープン。
そこにはあられもない有野さんの姿が。
「どうしたんですか? 」
もう抵抗は不可能だろう。
有野さんの一糸纏わぬ姿に理性を失いそうになる。
でも問題ない。そこには強烈な光の筋が。
それにより大事な部分が見えることはない。
大変残念だが心の平安にはなる。あまりに刺激的ではいつ理性を失うか?
開けなければいいのに開けてしまう不思議。
ほぼ強制。命令されて非常口を開錠する。
そうして再び有野さんを招き入れてしまう。
目の前に全裸の女子。我慢はできない。
ただどちらかと言うと有野さん方が欲求不満だ。
「あれれ一ノ瀬君。そんな風に恥ずかしがってちゃダメだよ」
何と俺まで脱げと言う。もう無茶苦茶だ。それでも命令に従うのが俺と言う男さ。
「ははは…… 本当にどうしたんですか? まるで酔っ払いですよ」
とりあえず反論。さすがに従う振り。全裸にされて堪るかよ。
それにしてもこの余計な光さえなければ俺は見れるんだ。
いつもこいつに邪魔されて散々我慢させられた。
もういい加減解放して欲しいよな。それがマナーだろう?
たかが裸じゃないか。冷静になってみればいい。いい加減目に悪い。
だって凝視してるんだぜ。それで見えるかもなどと淡い期待に胸を膨らませて。
時代に逆行してると思われてもいい。俺は有野さんのすべてが見たいんだ。
彼女がいいと言うのに止める理由などないだろう?
光など健全な精神の元では何の意味もない。
さあ叫ぼう! 解放だ! 解放せよ!
無意味な世界の住民になってはいませんか?
おっと…… 感情が昂って現実と虚構の区別がつきづらくなっている。
それは悪いことではないがどうやら俺たちの力だけでは無理そうだ。
解放運動は収束に向かうだろう。
「もうさっきからちっとも見てない! どうして目を逸らすのかな? 」
恐ろしいほどの笑み。従わなければ殺されそうなほどの邪悪な笑顔。
思い通りに行かないと冷酷に切り捨てようとする。
ああそこまでの覚悟があるのなら俺だって。でも今日はまだダメだ。
心の準備ができてない。もっと高校生らしいことしようよ。
手を繋ぐだけで充分じゃないか。付き合うにしてもキスまでだ。
それくらいの楽しみが一番ドキドキする。心が満たされる。
でも有野さんはもっと過激なものを。
そう夜の有野さんは過激的なものをご所望している。
分かっているんだ。でも俺に度胸がない。
それだけでなく思春期症候群で見えないものだからいまいち乗り気にならない。
この手のことは俺の症状が治まるまでは我慢して欲しいな。
大体裸で訪問してくる奴いるか? しかもこんな夜に裏口から。
常識で考えれば彼女は狂っているよ。俺も人のことが言えないがそれでもだ。
ここはきつく言ってやるかな。
「あの有野さん…… 俺はその…… 」
「どうしたのかな? これだと興奮しない? 」
「そんなことありませんが…… なぜ俺が一人の時を狙ってこんなことを? 」
疑問を口にする。しかし彼女は微笑むだけ。
何も言わず微笑み続けるのは怖いもの。もし笑みが消え怒りを見せたらどうなる?
冷え子先生じゃないけどいったん火が着けばどこまでも燃え続けるだろう。
多少のことでは鎮火しない。仮に俺の情けない水を掛けても効果はないだろう。
ははは…… 恥ずかしい話だ。
逆に火種がくすぶることになる。それが破裂し大火事に繋がる。
だから怒りを隠して無理やりの微笑みの天使の時は無理しないしさせない。
大人しく従うのが一つの手。
「きれいです有野さん。いつもにも増して輝いてます。
何でか体のところどころで光が差している。まるで俺の女神様であるかのように」
これくらい言っておけば文句ないだろう。
よく考えれば夜に全裸でやって来る奴など普通じゃない。
褒めるだけ褒め煽てるだけ煽てる。もうそれしか手はない。
ただこれで俺が狂ってるのではないと言うことは確認できた。
これも妄想だとするなら別だが明らかに他の人がいる時は避けている。
知能を有していることになる。これが支配された者だとすれば恐ろしいこと。
「ふふふ…… ありがとう。そこまで受け入れてくれるなんて思わなかった」
どっちだ? 支配されてるのか? まさかこれがシラフなのか?
「有野さん…… 」
「さあ思いっきり楽しみましょう」
「はい! 」
俺たちはついに結ばれるのか?
ようやくこの時が訪れた。
拒絶どころか超積極的な有野さん。
真夜中の有野さんはとんでもない人格の持ち主だ。
続く




