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疑いの目

突然の五階さんの訪問と言うか侵入でおかしなことになっている。

もう随分前に感じたが昼休みに五階さんに相談していた。

親友の五階さんなら有野さんの異常行動について真剣に聞いてくれると考えて。

しかしまさかこんなことになるとはな。


ダメだ。さっきから胸ばかりが気になる。もう気になってはどうにもならない。

せっかく来てくれた五階さんには悪いが我慢の限界だ。

見ないようにすると余計に凝視してしまう悪循環。

目を瞑ればいいのかもしれないがそれができるほど俺は大人じゃない。


「もう一ノ瀬君。どこを見てる訳? 集中してよね! 今日何かあった? 」

鋭い。さすがは五階さんだ。どこか違和感があるんだろうな。

冷静にいつも通りに振る舞おうとしてもつい意識してしまう。

情けないことだが実験の影響をモロに受けている。


「何か今日はそわそわして。やっぱりこんな時間に五階さんと一緒だからかな。

つい余計なことを考えてしまうよ」

どうにかそれっぽい言い訳でごまかす。

ホテルで密会して以来の二人っきり。学校でもあるがその時とはまるっきり違う。

「はいはい。集中しましょうね一ノ瀬君。私はいいからマナを見るの。

大体夜なんてテレビ見て本読んで勉強して寝るだけでしょう? 」

俺があまりに情熱的なものだから五階さんは若干引き気味。

真面目な彼女は毎日規則正しい生活を送ってるそう。本当かな?

こんな五階さんみたいな人が裏で何をやってるか分からない。

それが人間と言うものだろう。俺は昔から嫌と言うほど見てきたからな。


「しかし有野さん遅いですね。もう寝ましょうか」

何とか有野さんを守ろうとおかしなことばかり言ってしまう。

「まさかそれが目的? 」

警戒するように体を縮こまらせる。大げさだな。

俺を少しは信頼しろよな。勝手に訪ねてきて何を言ってるんだよ。

新婚プレーでその気にさせたくせに。


「目的も何もそっちが勝手に入って来たんですよ」

まるで俺が変質者みたいな扱いは迷惑だ。俺はただ…… ただの変態か。

誰にどう思われようと有野さんを守るつもりだ。

「もうだったら少し離れて。今日の一ノ瀬君どこかおかしい」

どうしても実験を意識し過ぎてしまう。そこに五階さんだからな。

まったくとんでもない環境。我慢しろと言うのが無理なのだ。


対象の帰宅。

明かりが灯った。どうやら隣の住人が帰って来たらしい。

ではぼちぼち監視を開始しますか。

いつものように着替え始める。だがなぜか今日は奥に引っ込んでしまう。

どうしたんだろう? いつもわざとやってると思うぐらい大胆に着替えてるのに。

まあいいか。五階さんに気づかれなければそれで成功だ。


「何もおかしくないけど? まさかいつも覗いてたの? 」

「ははは…… 極たまにだよ。俺だってそこまで暇じゃないし」

言い訳するもはっきり言って五階さんには通じない。

どうするかな? これではただ俺が変態だと証明されただけ。

でも実際はカーテンもせずに開けっ放しで裸になってる有野さんの方が変態だ。

俺はただおかしな人を観察するただの一般人。

どうやらお風呂に直行したらしい。姿を見せない。


それから三十分経過。五階さんといちゃついてるとついに有野さんが姿を見せる。

おっと風呂から上がってバスタオルを巻いている。

これはどっちとも取れる行為。

五階さんを見るがこれがどうしたのと笑う。

本来自分の部屋で何をしてようと問題ない。

裸にさえならなければ何の問題もない。解放感に浸かりたいんだろうなと。

ポジティブに捉える。それではますます俺の立場危うい。


「まさかこれのこと? 」

「あれおかしいな? いつもと違うぞ」

なぜだ。昨夜は素っ裸でずっといて終いにはそのまま部屋まで入ってきた。

それが有野さんだ。俺は見たんだ! 目撃したんだから。

でも五階さんの視線が痛い。まさか俺を疑ってるのか?

だから勘違いなんだって。俺の妄想じゃない。全部事実なんだから。

しかし心でどんなに叫ぼうと伝わるはずがない。


「まさか一ノ瀬君。つまらない嘘を吐いて私を連れ込んだのね」

とんでもない誤解だ。しかし有野さんがあれでは説得力に欠ける。

なぜいつものように素っ裸にならない。

もはや念じる。早く脱ぐように祈る。

しかしそれで上手くいく訳もなく窮地に立たされる。

どうしてこうなった? もう五階さんは俺を信用してない。


「嫌! 近寄らないで! 」

ついに拒否反応まで見せる。

誰も近づいてないし勝手に入ってきたのはそっちなのに。

らしくなく冷静さを失っている。俺は何もしてないじゃん。

それでも言い訳はしないぞ。俺が正しいんだ。間違ってはいない。

俺の目はおかしくない。心だって透き通っている。


「もう酷いな五階さんってば。もうだったら勝手のお帰り下さい」

誰も引き留めていない。勝手に入って来て勝手に居座っている。

確かに今日一晩泊まるのかなと思うとワクワクドキドキはするが。

それでも今は自分の正当性を訴える。そうしないとおかしな噂が立ってしまう。

毎晩のように覗いてる変態だとか。ほぼ事実だけどさすがに言い過ぎ。

俺は紳士。紳士でありたい。

ただの願望だけどそれがあるのとないとでは心の持ちようが違う。


こうして有野さんを観察すること一時間。ついに眠りにつく。

こっちもそろそろ寝るとしよう。

おやすみなさい。

                  続く

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