ハプニング的医療行為 視聴者目線の限界の可能性に迫る
思春期症候群の悪化の兆候が見られたので思い切って医者へ。
予約は入れてないので一番最後。
診療時間ギリギリに来たから待たされることもない。
「済まないが彼女を呼んでくれないか。君はもう帰っていい」
日暮先生が別の看護師を呼びつける。
実験の準備が整えられていく。
こうして他のスタッフは帰され三人だけとなる。
静かになったところで実験開始。
「こちらは? 」
「まずはこれをよく見てください」
そう言うと頷き合う二人。
看護師は仕方なそうに衣服を脱ぐ。そして一気に上半身を露にする。
本来つけてるであろうブラはどこにも。一気にCカップがお目見えに。
おいおいここは病院だぞ。この看護師さんは頭でも打ったか?
それとも看護師の格好はただのコスプレで本場のお姉さん?
一応俺はまだ高校生で未成年なんだけど。
俺は何を見てるんだ? 見せられてるんだ? これは現実か?
どう考えてもおかしな世界に迷い込んだとしか思えない。
「どうです見えましたか? 」
「はあ? 何が? 」
「だから大きなたわわですよ」
何を言ってるんだこの医者は? 今日は何曜日だ?
水曜日? 木曜日? 忘れたけど月曜日でないことだけは確かだ。
見せる看護師も看護師だがそれを指示する医者も医者だ。何を考えてる?
「その様子ですと見えてるようですね」
明らかに動揺してるのを見てとり指摘する。
いやいや仮に見えていても言えるはずがない。
「ええ? 何のことですか? 」
しらばっくれる。これでも俺は立派な人間なはず。それなのに嘘を吐いてしまう。
どうにか取り繕うとするが難しそうだ。
「ふふふ…… よしましょうよ一ノ瀬さん。見えてるんでしょう? 」
「ですが先生…… 」
ダメだ。恥ずかしくて正直に言えない。俺は一体どうしたらいいんだ?
俺たちは全員狂ってる。医者も看護師も患者さえもだ。
「こちらも最大限協力してるんですよ。正直に答えてもらわないと困るんですよ」
医者はもう俺が嘘を吐いてると確信してるらしい。さすがは精神科医だ。
「でも俺…… 」
「恥ずかしがらずに一ノ瀬さん。これは純粋な医療行為ですよ。
あなたの症状を改善しようと実験してるんです」
嘘だろ? そうまでして俺を理解しようとしてくれるとは医者の鑑。
感動したしなぜか急に元気も出て来た。
ここはお医者様の言う通りきちんと答えるのがいい。
こんな時に恥ずかしがってる場合じゃない。これは俺の為にやってるんだから。
「はい見えました。バッチリ見えました! 見えたんです! 」
俺は一体何を言ってるんだ? どうかしてるぜ。
でも嬉しいのは確か。それはたわわそのものではない。
今まで見えなかったものが見えるようになった。
視界が開けたことに驚いてるし感動してる。これほど素晴らしいことはない。
卒業するまでは無理だと思われた思春期症候群が劇的に改善された?
だとしたら今日は記念すべき日となるだろう。
「それで感想は? 」
「えっと…… とても素敵な胸でした」
「ははは…… 褒めてどうするんです。嬉しかったですか? 興奮しましたか?」
「はい! 大興奮です。嬉し過ぎて飛び上がりそうです」
今の気持ちを率直に答える。医者も納得したらしい。
「ふむふむ。正常と」
メモしている医者。
待ってくれ。そんな観察日記は嫌だ! 恥ずかし過ぎて死にそう。
「先生あのそれ…… 」
「大丈夫です。基本的には見せませんのでご安心ください」
「本当に本当ですか? 」
「もちろん! 安心してください。穿いてれば穿いてますから。違う違う。
ただ一ノ瀬さんはまだ未成年なので親権者の要望には応えねばなりませんが」
「親権者? もしかして…… 」
もしかしても何もない。絶対まずい奴だ。
「大丈夫。プライバシーなので詳細は伏せます。ただ察せられる恐れもあります。
いいですか? 原因が分からなければただのおかしな報告書になるはず。
それと後世の方の為に開示することもあるでしょう。
ただこれも名前を伏せますのでご心配なく。それと事前に許可を取りますので。
ただ断るのはお勧めしません。代わりに親権者の方に許可を取ることになる。
それは一ノ瀬さんにとっては不都合でしょう? 」
脅されてるのか俺は? もちろん名前を伏せるのなら別に構わないが。
知り合いに知られるのが一番まずい。
「さあもう少し実験に付き合ってもらいますよ」
そう言うと整えたコスチュームを再び脱ぎだす看護師。本当に看護師さん?
期待に反して当然見えるはずがない。
足元から崩れ落ちる。
あれほど見えていたものが一瞬のうちにモヤに隠れた。
「うーん。どうやらあなたの言葉は真実だったようですね」
そう言って何度か繰り返さす。残酷な行為だ。
見えないと分かっていながら。見ようとしても見えない地獄の中で耐える。
これほど辛いことはない。
「ちなみに下半身の変化は? 」
とんでもないことを聞きやがる。いつだって正常だ。
変化することなどあり得ない。疑うなんて勘弁してよ。
「おっと聞くまでもありませんね。非常にに強い反応を示しています。
興奮状態が収まる気配はなさそうですね。うん続けましょうか」
そう言うと下着だけになってもらう。だが下着を見たからって変わらない。
俺は常に正常だ。つまらないことしないでくれよ。
「うんうん。激しい。正常の反応ですね。面白くもなんともない」
感想まで。情けなくも恥ずかしくもなる。
最終的には何も感じなくなってしまった。
「それでは以上で今日の実験は終わりにします。
お疲れ様でした。どうぞゆっくりしてください」
親身になる先生。適当に話を聞き薬を出すようなことはしない。
身を切って患者に向か会う。その姿勢が大きい。俺には立派な先生に見える。
日暮先生なら絶対見放なすことはないだろう。
思春期症候群のメカニズムは解明されてないが先生と共に向き合っていくつもり。
「先生…… 何だか看護師さんに悪い気がして…… 」
今回の実験で付き合わされた看護師さんには同情する。
俺のために尽くしてくれたからな。言い方を変えれば奉仕してくれたのだから。
確かに患者のために奉仕するのが医師とも言えるが公務員でもあるまいし。
看護師さんなんかまったくの無関係。
「ですからこれは医療行為であり恥ずべきことでも何でもありません。
堂々と胸を張ったらいいんです。あるいは芸術行為かな? 」
ダメだ。この医者がパワハラかセクハラで捕まる未来が見える。
もはや止めようがない。
続く




