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第二段階

古典の冷え子先生の特別授業を終える頃には辺りは真っ暗になる。

もうさすがに有野さんは待ってないよな。ははは……

しかし恐ろしい…… 嬉しいことに校門を出るとすぐに有野さんが姿を見せる。


「どうしたの急いで? 帰るんでしょう? 」

「いやちょっと寄るところがあって…… 」

さすがに医者に通ってるとは言いづらい。そもそも有野さんが原因だからな。

ついて行こうとする困ったしつこさ。まさか保護者でもあるまいし。

俺の症状を理解してるのか?

確かに元凶の有野さんをどうにかすればいいのかもしれないが。

急に病院では彼女だって拒絶するに決まってる。

こう言うのは俺でなく家族か親友の五階さんがしてあげるのがいい。

おっと…… 上から目線だったかな。


「自分の部屋で待っていてください。今日はきちんと対応しますから」

おかしなことを言って混乱してる隙に撒く。

もし今夜も彼女が来るならそれなりの覚悟がいる。

でもその前にお医者様に相談だ。

実際は今日でなくてもいいが昨夜のことで悪化した可能性が高い。

早いところ相談した方がいいだろうと病院へ。


「はーい次の方」

先生は笑顔で対応してくれる。それだけでも救われる思いだ。

「どうしました一ノ瀬さん? 」

不安になったらいつでも相談に来なさいと言ってくれた。

だからさっそく来たが不安は尽きない。

今日はあえて遅い時間に行くことに。どうやら俺が最後らしい。


「長くなりますか? 」

いきなりそう言われればハイと答えるしかない。

俺が簡潔に答えられるはずがない。モゴモゴ言ってそれを先生の力でどうにか。

内容があまりにもデリケートだからな。

「そうですか。明日はおやすみなのでじっくり行きましょうね」

相当稀な症状なんだろうな。


いくら思春期症候群と名付けたところで詳細は不明。

どう治療すべきか迷ってるいるようだ。下手なことが言えないのが医者。

重く受け止められてネガティブになられてもダメらしい。

反対に楽観視されてもいけないと。

俺はどちらかと言うとネガティブ思考かな。


「それで…… 」

悪化したことをどう伝えればいいか迷う。

まさか裸の少女が都合よく自分の家にやって来るなど誰が信じる?

イカレてるとしか思われない。妄想が酷くなったと思われるだろう。

それは確かに俺だってそう感じた。でもあれは絶対に妄想なんかじゃない。

ただこれをありのままに言えば自分の名誉は地に落ちてしまう。

回復などあり得ない。でも正直にすべて話してくれと言われては仕方がない。

患者のプライバシーは守るそう。もう先生を信じるしかない。


「そうですか。覗いた先の女性が自分の家に入って来る。

それは何とも不可思議な現象ですね。本当ですか? 

いえいえ疑ってるとかでは決してないんです。確認の意味です。

はあ間違いでないと。でしたら鍵を掛ければいいかと」

誰にでも思いつく簡単で単純なこと。

それはごく当たり前のことで俺だってそれは真っ先に思いついた。

だがそれではつまらないと言うか根本的な解決になってない気がする。


「先生はどうにもならないことってありますよね? 」

「ええ…… 職業柄どうにもならないことがあります。

すべては本人の気力次第。気持ち次第。だから虚しい。

実際そんなことしょっちゅう」

笑ってはいるがその苦悩が滲み出ている。

医者はロボットじゃない。

俺みたいなおかしな症状に付き合っておかしくなることだってある。

あまり深入りせず冷静に患者の話を聞く。それを心掛けてるそう。


「俺も同じように無理でした。確かに鍵を掛ければ一時的には収まるでしょう。

しかし毎日のようにドアを叩かれては開かざるを得ないんです。

それが運命。抵抗など不可能と考えてしまうんです」

どうすることもできない現実を訴えかける。

「そうですか。何にせよ第二段階へと移った。その認識でいいですね? 」

先生は真面目にうんうんと聞いてくれる。そして決して俺を咎めない。

俺は悪いことをしてるんだから叱って欲しいのに。

覗きは犯罪ですよと。でも強くは言ってくれない。

それが精神科医なのだろうが不安になることも。見放された気さえする。


「落ち着いて。それで実害はないんですよね? 寝不足とか? 」

「はい。その時は興奮して眠れないですがそれでも睡眠不足。

睡眠障害にまで陥ることはありません。眠いとすぐ眠ってしまうんです」

あまり有野さんのことを考えずにただ頭を空っぽにする。

そうすれば寝れるがすると夢だったのではないかと感じる場合もある。

要するに現実感があまりない。それはどうしてか?


「そうですか。でしたらやはりあなたの根本を解消するしかなさそうですね」

先生は次の手を考えるらしい。

「これが妄想の類か現実かその辺は実際に見てみなければ分かりません。

まずはこちらで実験してみるのはいかがでしょう」

そう言うと看護師を呼びつける。


おいおい何をしようと言うんだ?

これは非常にプライベートなこと。余計な人を入れないで欲しい。

いくら医者も看護師も守秘義務があるとしても漏れないとは限らない。

できるなら多くの人に知られるのは避けたい。

それが願い。でも実験なら仕方ないか。


この前の続きをするとしよう。


                 続く

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