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誰にも言えない悩み

翌日。

コソコソしてるといきなり後ろから有野さんが抱き着いて来た。

嘘だと思うだろうが事実だ。どうしてかは不明だが有野さんは明るい。

昨夜のことを覚えてないはずがないんだが。

気まずくないのか? 俺は気まずくて耐えられないぞ。


真冬の寒さも気にせずに素っ裸で訪問してくる異常行動。

裸を見られた上にそのまま迫る暴挙に出た。まるでその辺の酔っ払いだ。

下品で自分勝手で言うことをまるっきり聞かない迷惑な存在。

それが昨日の彼女。覚えてなかったらホラーだ。

と言ってもこれはホラーなのだが。


「どうしたの一ノ瀬君? 元気ないね」

確か朝は世話焼きお姉さんモードだったよな。

寝癖を勝手に整えてくれるし服も直してくれる。

極め付きは優しく手を引いてくれる。完璧だ。

理想の女性をきちんと演じられている。

ははは…… 俺がだらしないだけとは言え朝からよくやるよ。

これが昼の教室だと睨みつけるから不思議だよな。

情緒不安定なのかただ不機嫌なのか。

多重人格の彼女を持つと苦労するよ。おっと…… ただのお隣さんだっけ。

俺たちの関係はまだはっきりしたものではない。

一緒にホテルに泊まる仲とは言え付き合ってる訳じゃないんだ。


「元気ないみたいだから撫でてあげようか? 」

うわ…… 赤ちゃんプレーに走りやがった。俺はそこまで情けなくないぞ。

ゴホンと一つ。

「何だ風邪? だったら無理しちゃダメだって」

そう言うとマスクを取り出した。エチケットらしい。

ははは…… たかが咳一つで大げさな。


「いいですよ。風邪ひいてないし」

「いいからいいから」

意外にも強引な有野さん。これでは大人しく従うしかなさそう。

「もう分かりましたよ。それより昨夜の件ですが…… 」

「ううん? 何かな一ノ瀬君? 」

笑顔。これはどう言うことだ? 恥ずかしくないのか?

俺はさすがにそのまま流せれない。


「ごめん。覚えてないんだ。夜はいつもそう」

堂々と言ってのける有野さん。これはもはや追及などできそうにない。

したって時間の無駄。はぐらかすだけ。

「どうしたの二人とも? 遅れるよ」

五階さんが姿を見せる。らしくなく欠伸をする。どうやら寝不足らしい。

勉強して夜更かしでもしたのだろうか? 俺たちとはえらい違い。

さすがは政治家の娘。きれいだけが取り柄のお嬢様ではないな。


「ああパピヨン。昨日の夜って何したか覚えてる? 」

有野さんはよせばいいのにおかしなことを聞く。どうせ勉強だろう。

「ええ? 覚えてないよ! たぶんご飯食べて寝たんじゃないかな」

「そうだよね。普通そうだよね」

二人だけの世界。あたかも覚えてないのが当然だと。記憶喪失の姫かよ。

恐らく有野さんはしらばっくれてるだけ。五階さんはフォローに回ったのだろう。

俺としてもこれ以上追及してこちらの罪を暴かれては敵わないので諦めることに。


今はこれでいい。後でゆっくりと五階さんに相談しよう。

明らかに異常だからな。裸族なら裸族で構わないけど……

いや待てよ。そう言えば現実感がなかったような。

まさか裸で訪問したのはただの夢? そもそも覗いたのも俺の願望が見せる技。

と言うことは真実はまったくの逆。俺がおかしいのだ。

夜になると自分が狂ってこんな風におかしな夢だか妄想だかを見るようになった。

とすれば俺は覗いてない。まだ立派な人間のまま。

助かったことになる。うーん本当かよ? それはそれで現実感がない。


昼休み。

「どうだった? 」

いつも通りの五階さん。俺は昨夜のこともあって意識してしまっている。

「美味いよ。さすがは五階さんだね」

ホテル合宿辺りから俺たちの関係が徐々におかしくなり始めている。

そんな風に思うのは俺が彼女を意識してるからだろうか?

彼女だってちょっとぐらいは好意があるはずだ。

ただの隣人だけではない特別な感情が。それを隠している?


「ねえ五階さん」

有野さんについて思い切って相談することに。

どう考えてもおかしい。ただどう言えばいいか迷う。

覗いてましたとは言えない。そこがなかなか相談に踏み切れないところ。

でも俺はもう限界を迎えてる。これ以上はどうなるか分からない。

「マナは多重人格なの。一ノ瀬君ももう気づいてるでしょう? 」

その話は前もした気がする。


そもそも学校での有野さんは話しかけただけで睨みつける鬼。

朝はまるで天使のように優しくしてくれるのにだ。

教室を出たり人がいない時は元の彼女に戻る。

そして夕方下校する頃には引っ付いて離れない。

かわいらしい上に積極的な有野さん。ただ喜びより驚きが勝る。


「それは分かるんだけど…… それだけではない気がしてさ」

今は五階さんにしか。そもそもこんなことを相談してもいいものか。

「何があったかは聞かない。なるべくマナのことを見ていてね」

そう言うと行ってしまった。

どうやら気にしてないかあるいは興味を示していてあえて避けてるか。

なぜ仲間でこちら側の人間のはずなのに。まるで何かを隠してる雰囲気。

こっちとしてはどうすることもできずに付き合うしかない。


有野さんをきちんと見ていて欲しい。

それが親友の五階さんの願い。 

とりあえず聞いて貰えてよかった。


今度は有野さんに選択させ自分を試すことに。


                   続く

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