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大人の時間

夜。急な母さんの予定で帰り道は突然二人っきりに。

こんな展開になるとは思いもしてなくてただ茫然となる。

しかもいい雰囲気なんだから月が出てればいいのに生憎の雲で台無し。

ロマンチックな夜が曇り空ではついてない。

その分くっ付きやすくはなったけどどうしていいか分からずに無言だ。


こうして家の前で別れる。

ああ虚しいな。せっかくいい雰囲気になったのにどうも積極的になれない。

これは俺にも有野さんにもそれぞれに原因がある。

有野さんが秘密にしてる面もある。でも裸が何だと言うんだ?

裸族ぐらいどうってことないだろう?

俺も覗いてる負い目がある。と言ってもあれは見せてるのであって不可抗力。

だからかどうしても積極的になれない。

おかしいよなそんな気にすることでもないのに。


推測も一部入るがお互い両想いでありながらすれ違ってしまう。

俺が情熱的に行こうとすると恥ずかしがる彼女。 

それに対して積極的にスキンシップをしようとしてくれるのに嫌がってしまう。

今日みたいに寒かったり暗かったりするとその感覚が薄れては行くが……


さあ一人寂しく夜を過ごしますか。

風呂も入ったし勉強もちょっとだけやった。

予習と復習をするように五階さんから指示されてるからな。

大人しく従うのが男と言うものだろう。あーあ情けない。

そう言えば母さんが何か言ってたような…… 物騒だから戸締りしておけだっけ?

都会はそうだけどこの辺は駅からも遠いし学校からだって離れてる。


約二十五分かかる。有野さんは隣なのに二十分。この差はなんだろう?

本当に入り組んだところにあるから困ってしまう。

物騒なのはどちらかと言うとお隣さん。常軌を逸した夜のダンスショーさ。

細かいことはいいさ。玄関のカギは掛けてるんだから問題ない。

さあ準備も整ったことだしそれではお待ちかねのショータイムと行きますか。

ではカーテンをちょっとだけ開いて……


うーん。時間はいつもより三十分遅い。

ちょっと拘束し過ぎたかな。夜更かしは健康によくないよ。

肌だって荒れるしそれになにより癖になる。

へへへ…… 何か忘れてるような気もするがまあいいか。

明日にでもやればいいさ。今は集中あるのみ。


癖なのかこちらを向いて着替え始める有野さん。いつものスタイルだ。

俺の存在にもうとっくに気づいてないか? 

何と言っても笑っている。微笑んでいるそんな気がする。

俺を誘惑しないでくれ。俺はそこまで人ができてないんだ。


しかし俺も情けないよな。なぜこうまでして見たいんだ? 背徳感からか?

でもこれって特別なことをしてるのではない。

自分の家のカーテンをちょっとだけ開けたに過ぎない。

誰でもやること。カーテンを開けて周りの様子をちらりと見る。

そしておかしな人はいないか。不審者はいないか。


夜景を見ることもあるだろう。俺にとってこれが夜景だ。

夜景観賞は自分の家から見るのが格別。

ただそれは豪勢なマンションであればだが。普通はあり得ない。

ここは平屋だ。マンションでもアパートでさえない。

大家さんの善意で住まわせてもらっている。


有野さんがついに下着だけになった。

別に気にすることではない。普通はここで服を着るのだろうが彼女は裸族だから。

でも裸族って言うのは一人の場合微妙だよね。もう一人ぐらい必要だな。


ついにブラにまで手をかける。

焦らしてるんだろうな? いつもここで後ろを向く。

往生際が悪いぞ。早くすべてをさらけ出さないか! 中途半端が一番よくない。

裸道に反してるとは思わないのか? 実に情けない! そして実にけしからん!

おっと涎が出てしまった。行けない行けない。つい我慢できずに。


ついに最後の関門に手をかける。おっとこれは凄いことになってるな。

だがその光景が見えないのは惜しい。恐らく呪いか何かだろう。

どうして俺ってこうついてないのか? 素直に気持ちを伝えるべきなのに。


こうして再び夢のような世界が広がるのだった。

さあもう充分さ。これ以上は気が引ける。いくら裸族でも冷えるだろうしな。

今すぐにもういいと言ってやりたい。十分だと褒めてやりたい。

それができないから辛い。

さあもういいだろう。そう思って三十分は経った。でも視線はその辺りで釘付け。

見えないのに見ようと無駄な努力をする。男とはそう言う生き物さ。


あれ? いつもならおかしな音楽をかけて踊り狂うのに今夜は違う。

趣向を変えたらしい。どうであれその様子を大人しく見守るとしよう。

こちらが余計なことをすれば感づかれる恐れがある。

だがもう限界だ。叩きたい。窓を叩いて自分の存在を知らしめたい。

その衝動が抑えられない。


彼女は気づくだろう。そして気にせず再び踊り出すに違いない。

だが今のところ有野さんの姿が消えたまま。部屋にはいない様子。

こんなことは初めてのこと。どうしたのかな?


その時だった。突然ガチャガチャと言う音がする。

一体なんだ? こんな夜中に異音がする。

まさか泥棒? それともまさかの大家さん?

でも鳴らせばいいのにそれをしない。大家さんなら十分にあり得るが。

しかしもうとっくに寝てるだろう? 今何時だと思ってるんだ?

いい子とお年寄りは寝る時間だよ。今は大人時間さ。


やはり幻聴なのか? こんな時間に訪問客など来やしない。

そもそも俺は学校では一人ぼっちさ。誰が来ると言うんだ?

だとすればそれは人間にあらざるものしかいない。


ドンドンドンドン!

どんなに言い訳をしてみても音は消えない。

仕方なく音のする方に。


さあ恐怖の時間だ。もう逃れられない。



               続く

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