大掃除
有野さんへのクリスマスプレゼントを佐藤さんに考えてもらっている。
教室での唯一の話相手だからな。
いろいろと面倒な頼みごとをすることだってある。
「やっぱり下着の方がよくない? 」
ただそれさえ身に着けないから。嫌がらせだと思われたら嫌だな。
まさかキャンセル界隈がここまでとは。
「何を言ってるの? 」
「だから一緒に選びに行こう」
つい軽く友だち感覚で佐藤さんにお願いする。
「そうだ。今からどう言うのがいいか実際に見せてよ! 」
もはやプレゼントのことで頭が一杯。
彼女が怯えてることに気づかずに無理やり頼み込もうとする。
「もう知らない! 」
まずい。怒らせてしまった。どうやら下着はダメだったらしい。
最後に水着って聞かなくてよかった。これでも迷ったんだから。
「待ってよ! 」
それでも聞く耳を持たずに本当に怒らせてしまったらしい。
悪いとは思ったがこれも特殊な事情によるもの。
やっぱり五階さんに聞いておくか。そうすれば失敗はないはず。
ただ五階さんにも何かないとまずいよな。
でも前回和葉のプレゼントにつき合わせたからな。頼みづらいよな。
うーん。どうしよう。
こうして一難去ってまた一難。悩みは尽きない。
まずい。今日は母さんが来る日だ。
もう話はついたとは思うけど何日もいることになっては何かとまずい。
真夜中の楽しみがなくなってしまう。それだと張り合いがない。
うーん。まあいいかとは絶対に言えない。急いで帰ろう。
まさか和葉まで来ないよな? でも久しぶりに会っておきたい気もする。
帰り道をひたすら走る。
もちろん目立つためであって他意はない。
「一ノ瀬君…… 」
ほらやっぱり。有野さんが息を切らして後ろから追いかけて来た。
「どうしたの急いで? もしかして私を探していた? 」
こんな時ばかり天使のような微笑みを浮かべる有野さん。
一緒に帰ろうと言う。それは嬉しいことだけど。
俺は急がないといけない。
今日は通り道のショッピングモールに寄ってられない。
占いも立ち読みもパスだ。
「ねえ彼女何か言ってなかった? 」
やっぱり。有野さんが探りを入れてくる。
まさか五階さんの入れ知恵?
「さあ…… 」
「きれいな子だよね。かわいいし話しやすいし」
「そうかな…… 」
嫉妬? いや嫉妬はないか。でも下手に頷いたらどうなっていたことか。
想像するだけで恐怖。胸倉は掴まれるよなきっと。
それはそれで悪くないと思ってる自分がいる。
「悪い。急ぐんだ。今日は母さんが来るから」
慌てて帰っては怪しまれるが俺たちの関係が母さんにバレるのもまずい。
だから急いでるのにどうでもいいことに拘っている有野さん。
それは確かに思った以上の衝撃だけどどうにかなったと勝手に思っている。
「しょうがないな一ノ瀬君も。あの子はもういいのかな? 」
そうやって微笑む。いや恐ろしいんですけど。脅しなのか? 脅し?
「有野さん何を言ってるの? 彼女とは何でもないよ。ただのお友だち」
「私とは? 」
有野さんは抜け目がない。そう聞かれては答えない訳には行かない。
「もちろん恋人。迷惑でなければ恋人でお願いします」
本音をぶつける。ここで誠意のない対応すればどうなるか分かったものじゃない。
恋人は本人次第だけど。ホテルの件もある。そうでなければ誘いはしないさ。
問題は有野さんの方だ。はっきりせずいまいち分からない。
睨んでる時と笑ってる時があるからな。
「恋人…… 」
満更でもなさそうだ。今の有野さんは寂しがり屋のバージョン。
ずっとこうだといいんんだけどツンデレタイプだからな。
多重人格なのか単なるツンデレなのかもう分からない。
「あの有野さん? 」
「ありがとう。ならシラベエは? 」
五階さんのこと。シラベエは五階調から来ている。
たまに気に喰わない時に言うのがこのシラベエだ。いつもはパピヨン。
これは蝶から来ている。まあ俺にはどっちでもいいけど。
やっぱり何だかんだ嫉妬してるな。ははは…… かわいい。
「ほら一ノ瀬君? 」
「えっと…… 五階さんは何でも相談に乗ってくれる先生」
政治家の娘で頭もよく話を聞き多彩な意見を述べるのでそう呼ぶこともある。
「まさま狙ってない? 」
おかしいぞ。まさか俺を信頼してないのか?
学校であれだけのことをすれば誰でもそうなるか。
自分で納得してるのだから情けない。とても情けない状況。
「ちょっとだけ。だって政治家の娘だよ。金持ちじゃないか」
ちっともその手の感情がないと言っても嘘だとバレるのでこんな風にごまかす。
でも俺ってそこまで浮気性ではないし。
確かに五階さんにしろさっきの彼女にしろきれいだったりする。
ただそれで感情が動かされるかと言うと違う。俺はやっぱり有野さん一筋だ。
その有野さんが俺を気に入ってくれるのがその時の感情でないなら嬉しいのだが。
どうも分かりづらいところがある。女性はそう言うところあると思うけどでも……
「急ぐわ! 」
「待って。私も一緒の方がいいでしょう」
そう言って勝手について来る。隣の家なんですけどね。
「ああお帰り。マナちゃんも一緒? 」
もうすでに先に来ていた。くそ…… 思ってたよりも時間食ったからな。
佐藤さんの追及が続いたからな。予定が狂っちまった。
「母さん。片さなくていいって言ったろ」
「何を言ってるの? 汚くして不潔なんだから」
ダメだ。計画がすべてご破産する。
「ホラあんたも手伝いなさい! 大掃除するんだから」
うわ勝手に始めやがった。まあいいけどさ。
こっちのことも少しは考えて欲しいな。
ダメだって言っても勝手に動かすからな。その上勝手にゴミ認定する。
俺掃除するの苦手なのに。
こうして空気の入れ替えに窓全部を開けなぜか非常口二か所を開放。
仕方ない。掃除するかな。
続く




