下手な言い訳
放課後ナンバーフォーの佐藤さんと二人っきり。
俺に話があると不機嫌なのが気になる。
まさか俺たちの関係がバレたのか?
絶対に誰も知られてはならない秘密の隣人関係。
俺たち三人が秘密を共有することで繋がっている部分もある。
強力な隣人同盟と言うか隣人契約を結んでいると勝手にそう思っている。
「ああホテルに入ったよ。何なら泊りもした。それが何か? 」
うわ…… つい面倒臭くて正直に吐いてしまった。
でもこうでもしないと疑ったまま。
開き直りと捉えられてイメージが悪くなったか?
「だったら二人はそう言う関係ってこと? 」
頬を赤らめる。何を勘違いしてるんだろう?
「違うって! ただホテルでお話してただけ。よくあることだろう? 」
「あるかな? たぶんないよ」
佐藤さんは一歩も引かない。
まるで自分が正しくて俺が間違ってるんだと示すかのように。
「でも本当のことだからさ。いや実際は秘密の勉強会」
「はいはい。何の勉強をしたんだか」
うわ…… 疑っている。単純に期末テストの勉強しただけなのに。
何の疚しいこともない。あるとしたら二人っきりでベッドインしたぐらい。
「俺は漢字の書き取り等。有野さんはロープとか」
思い浮かぶのは有野さんのだらしないところばかり。
後は手を繋いで眠ったところぐらいかな。いい思い出だ。
「はあ? ロープって体育? 」
訝しがる佐藤さん。
「知らない? この学校で十五年前に起きた悲劇」
「さあ初耳」
「でも有野さんがくそ長い即興話をしてくれたからてっきり本当のことだと」
正直に告白してしまったがこれは逆に疑われたか?
「毎学期に? それならただの避難訓練だけど」
どうやら惨劇は起きてなかったらしい。そうするとあのロープは一体?
なぜ有野さんはつまらない嘘の即興劇を? まさかな……
「とにかく俺たちは何もなかったんだ。ただの勉強とお喋りさ」
「それが通用する訳ないでしょう! 」
別に彼女に分かってもらわなくてもいい。ただ余計な噂を立ててもらいたくない。
俺たちはまだそう言う関係じゃない。
それにもしこのことがバレたら確実に退学だ。
真実を話すにしても五階さんまで巻き込むことになる。
しかも五階さんの父親に泥を塗りかねない事態。
今回の主催でスポンサーを怒らせては俺の立場がまずいことになる。
それは有野さんも同様。もし次の選挙に影響することになれば損失は測り得ない。
言い訳はできるが学校に知られるのだけはまずい。
「信じてよ! 有野さんに聞いたっていい」
「でもいつも怒ってるみたいで怖いし…… 」
どうやら友だち意外にはあのいつもの有野さん。
ただ多重人格だから許してやって欲しい。
ははは…… まるで俺が保護者みたいだな。
おっとそんな呑気なこと言ってられないぞ。
急いでこのトラブルを自力で解決しなくちゃ。
ある程度の犠牲は仕方ない。取引も交渉も必要になって来るかもな。
「ごめん。そう言うことだから」
「証拠は? 誰が信じられるの? 市民はもちろん先生だって信じないよ」
はっきり言うな。確かにそうだ。俺だって信じないさ。
どうやらまだ納得がいってないのだろう。でもここで話し合うのは危険だ。
誰の耳があるかも分からないんだから。
「でも俺たちが泊まったホテルは高級ホテルだから。
佐藤さんの考えるようなホテルじゃないし。
仮にそこだってただお話をするだけで入ることだってあるよ。
トップシークレットならこれくらい慎重になるさ。勘違いして欲しくないな」
「それで二人は付き合ってるの? 」
「どうしてそうなるの? ただの友だちだよ」
ご近所と言えば余計な詮索をしそう。ここは慎重に。
「俺が愛してるのは君だけだ! 」
つい出任せを言う。友だちだからこれくらいのジョークはいいよね。
「うん。知ってる」
意外にもあっさり受け入れる。でも知ってるって何だ?
まあいいか。トラブルが解決すればそれでいいさ。
この後のことはごまかせばどうにかなるだろう。
「まさか誰かに? 」
「言う訳ないでしょう! 一ノ瀬君を信じてるから」
そう言って立ち去ろうとするのでせっかくだから相談することに。
「ええっ? プレゼント? 」
「そうなんだ。何が欲しいかなっと」
有野さんとは今後もあるしお隣さんだしたぶん恋してるし罪悪感もある。
だからプレゼントをと思ってる。でも何にするか迷う。
だからこそ同じ女子で感覚の近い彼女に聞く。
本当は五階さんがいいんだけど漏れる恐れもある。
俺たち三人の関係がいまいちはっきりしないからな。
「直接本人に聞く気? 」
「ははは…… うーん。それで何がいいかな? 」
こんなこと聞くのはとても失礼だと思う。
でも佐藤さんなら二人の関係も知ってることだし。適任だろう。
それに友だちだと思ってるからな。頼るのは彼女ぐらいなものさ。
そもそも男に聞いても無駄だよな。ロクな案を出しやしない。
まあこう言う時こそ妹を頼ってもいいが恥ずかしいのは間違いない。
それに和葉だって見ないうちにお兄ちゃん子を脱却してるかもしれないし。
ふざけておかしなものを選びそう。
「服は? 」
「そうか。でもサイズが分からないから…… 」
「一緒に行くって」
おっとこれは乗り気ですな。よしクリスマスまでにはどうにかなりそう。
「でも服って着るの? 」
「はあ当たり前でしょう? 着ない人はいないよ」
彼女はそう言って笑うが実際有野さんは裸なんだよな。
俺の妄想とかではなくそう言う主義らしい。
いくら注意しても直らない。おかしな趣味の持ち主。
それなりのポリシーを持ってのことだろう。
裸族の人に服を着ろは侮辱に当たるのかな?
さあどうする?
続く




