お隣さんはどんな人?
屋上で修羅場に遭遇。
呑気に弁当を食ってる場合じゃない。
「ちょっと…… 」
スパーサブに続いて彼女まで。引き留めようとするも予鈴が鳴る。
うわ…… もう時間? 急がなければ!
スーパーサブはどうでもいいが彼女は心配だ。元気になったかな?
十一月。
ついにコタツの設置完了。後は点火式を済ますだけ。
一人でコタツもいいものだけど何だか寂しい気もするな。
涙が止まらない。どうしたんだろう俺?
疲れてるのかな? それとも目がやっぱりおかしい?
誰か来てくれよ。有野さんでもいいな。いやこの際贅沢は言わない。
かわいい女の子なら誰でも大歓迎……
「どっこいしょ。いや冷え性だから」
大家さんがおすそ分けついでに部屋へ。
「しかし汚いねあんたの部屋は。ちゃんと片してる?
前見た時より酷くなってるじゃないか。
あーあもうこれだから男の子はダメだと言うんだよ」
時代錯誤の大家さん。勝手に俺を男の代表みたいに決めつけて。
他のだらしな奴よりはよっぽどよくやってると思うんだけどな。
理想が高いとこうなるんだろうな。口も悪いし傷つくんですけど。
掃除はどうしても苦手なんだよな。
苦手と言うかいつ片づけていいか分からない。
何とかなる段階だと気にならないしギリギリでも動こうとはしない。
限界を突破してようやく片づける。
それではゴミ山になるがそこまでは行かない。
母さんが三日に一度掃除しに来てくれる。
でも二日も経てば部屋はぐちゃぐちゃ。
だらしないと言うよりワイルド。ただ中途半端な気もする。
もっと汚して汚部屋にすればゴミ屋敷として目立つんだろうが。
そんな風に戯言を吐いてると叱責されてしまう。
「馬鹿言ってないで片づけな! 」
「でも…… 」
「あんただってできるさ。誰だってきちんと片付けてるんだからさ」
「はあ…… そんなことよりお隣さんはどんな人なんですか? 」
これ以上は嫌なので話を変える。
思い切って隣人について聞いてみることに。ご近所付き合いもあるからな。
「それは礼儀正しくて素敵。あんたと同じ学校だろ? なぜ知らない? 」
訝しがる。引っ越しの挨拶で会ってると普通は思うよな。
でも俺はそう言うのが苦手だから母さんに任せてしまった。
「ははは…… まったく興味なかったものですから」
ミカンを食い散らかした大家さんの評価を真に受けていいものか気にはなる。
「それで今は興味あるのかい? 」
「まあ多少は…… 」
正直どうでもいいが害をもたらすような非常識な奴は嫌だ。
ただこんな低家賃のボロ家に集まるような人間だかな。
どう考えても一癖あるに違いない。
現在。両隣は塞がっている。右隣は漏れ聞いた音から推測するに男。
怪しげなものを見て興奮してるんだろうな。お近づきにはなりたくない。
もう一人は静かだからほとんど帰ってないのでは?
まったく推測できない。正体不明。
「でもおかしいね。確か引っ越しの挨拶はしたんだろう?
それにちょとは見かけるはずさ」
二か月前の話。果たしてどうだったかな?
そうそう。引っ越しの挨拶はシンプルにタオルと素麺。
毎年よく食べるものだから飽きていた。
どうしてか夏になると素麺が多くなる。
夏バテして食欲が落ちて食べれないとよく言うが逆な気がする。
夏バテで暑くてあっさりしたもの以外は食べたくないのは分かる。
でもそれは素麺等の冷たくてあっさりしたものを食べ続けたからでは?
やはり夏は温かいものを食べるべきだろうな。
おっと脱線。そう引っ越しの挨拶は母さんが済ませてしまった。
だから俺が隣に出向く必要がなくなった。
「そうかい。大事な引っ越しの挨拶を任せちまったのかい…… それは情けない」
寒がりの大家さんはまだ帰ってくれそうにない。居心地がいいのだろう。
ここは心を鬼にして切るかな。
「ははは…… そう言うの苦手でして」
「でもその時にどんな人か聞いただろう? 」
「いえ興味がないのでそのまま…… 」
「呆れた…… ご近所付き合いぐらいはしっかりしなよ」
「それで大家さん…… 」
「個人情報さ。知りたければ自分で確かめな」
挨拶ぐらいはするようにと。もう大家さんったら心配性なんだから。
しかしこの後とんでもない事実か発覚するとは思いもしなかった。
どうにか無事に文化祭が終わる。
文化祭が無事に終わったはよかったが俺の存在感が示せなかった。
これではまたクラスでの立ち位置が難しくなっていく。
有野さんはよくやったけど。
でもオリジナル劇をやると言い出したのは有野さんだからな。
やっぱり無難にシェークスピアのどれかをやっていればよかったんだよな。
現代風にしてガールズラブを取り入れたから評判は芳しくなく客入りも悪かった。
しかも主演を務めた女の子が責めた脚本で降りてしまう惨事。
まさか有野さん自身が主演を張ることになるとは思わなかったんだろうな。
大胆な動きが失われオリジナル性はあっても現代劇と変わらない。
こうして無理を通した有野さんが責められる形になってしまった。
俺にとってはどうでもいいけれど成功とは言えない。
ずっと見ていた。それで失敗されても応援したかいがない。
俺の役どころは通行人の一人だ。セリフもない。アドリブもなし。
淡々とこなして合計二回の劇を無難に乗り切った。
来年はやっぱり気軽なカフェがいい。
模擬店だっていい。もちろん俺は手伝わないが。
求められたら意見は言うかな。
それも来年この学校にいられたらの話。
続く




