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有野さんの素顔

ホテル三階。有野さんと二人っきり。

どれほどの時間が経ったのだろう? 

ついにだ。ついにお待ちかねの時がやって来た。

恥じらいつつも笑顔の有野さん。

二泊の豪勢な勉強合宿の予定を終え多少なりとも浮かれている様子。

寝ぼけつつ薄目を開けて対応。


「一ノ瀬君。ほら起きて。きちんとしないと風邪ひくよ」

「ああごめん。眠くてつい…… お休みなさい」

ベットを独占しては悪いよな。

今日も寂しがり屋の有野さんの手を繋いで寝るのか? 面倒だな。

それとももっと違うことをするのかな?

すべては気分屋の有野さん次第。俺はただ従うのみ。

情けないがそれが俺だ。有野さんがその気じゃないと何も始まらない。


「さあ汗を掻いたでしょう? お着替えしましょうね」

勝手に脱がされていく。無抵抗と言うか身を任せる。

でももう着替えはないはずだが。どうするつもりだろう?


「何をしてるの? 」

「いいから。大人しくしてて」

へへへ…… 眠くてどうにもならない。

されるがままも悪くないかな。

こんな無防備な状態を晒すのは初めてのこと。

俺たちは何だかんだ言っても同部屋。

現在クラスメイトでありルームメイトでもある。


ううん……

一度意識を失った感覚。恐らく眠ってしまったのだろうな。

気持ちよくてついひと眠り。それも五分少々。

「ごめんね一ノ瀬君…… 」

まただ。これで何度目だろうか?

俺が眠ってると思って無防備になってるんだろうけれど。

それは体だけであって心まで解放しないで欲しい。

それがマナーだし優しさだろう?

見たくない。本当の有野さんを見たくない。

どうしたの有野さんと言えたらな…… ここは寝たふり。

下手くそないびきで有野さんをごまかす。


ただ有野さんもそこまでバカじゃないし警戒はしてるようだ。

すぐには話しかけようとはしない。完全に寝てることを確認してからポツポツと。

俺は有野さんを覗く癖があるから彼女の動きもよく分かってる。お手のもの。

さあもう本当に意識を失いそうだ。早く頼むよ。


「あのね…… 」

頬を赤らめる。恥ずかしいことらしい。

一体どう言うことだ?

もう限界。口の堅い有野さんを放っておいて先に寝るとしよう。

「本当の私を知っても嫌いにならないでね」

涙声で真剣そのもの。冗談やからかいではなさそう。

そもそも有野さんはそう言うことが得意ではないよな。

俺と一緒で不器用。だからいつも変なところで失敗する。

だから親近感が持てる。学校でも頑なに睨み続け俺を避けてばかり。

俺のこと嫌いなのかな? あまりにも大げさだから想像もつかない。


俺の知らない有野さんの裏の顔。

それをどうしても見たくなってしまう。知りたくなってしまう。

興味とは一旦湧くとどうにも止まらなくなるものだ。

それが憧れの有野さんなら尚更。どうにかしてでもその裏の顔を暴きたい。

それが男と言うものだろう。

でもここは止めるのも手。彼女のすべてを知ることに抵抗がある。


「もう我慢できないの! 」

そう言って抱き着いて来た。

いや重いんですけど。とても立ち上がれないほどのずっしりした重さ。

それを受け取りつつ眠る。眠気は本物だからどうにもならない。

結局有野さんがその気でも俺が本気じゃないとすれ違いが起きる。

俺から誘っておいてみすみすチャンスを逃す愚かしい行為。

こんなチャンスは状況的にも二度とないのに。

でも眠気は本物で収まる気配はない。

仕方ないんだ。俺にはそこまでの気力はない。


おやすみなさい。

こうして波乱の勉強合宿はどうにか三日間の日程を終える。


間もなく試験。

合宿のお陰で今まで諦めていた問題にも手がつけられるようになった。

こうしてクラスでも使命感に燃えるように。

それだけでも合宿した甲斐があったと思う。

二人のお陰で自信もついたしやる気も出た訳だから感謝してもしきれない。

ただずっと気になってることが一つ。

なぜ有野さんがあんなこと言ったんだろう?

言われたらすごく気になるじゃないか。


コロコロと消しゴムを転がすと再びナンバーフォーの前に。

地味で目立たなかった彼女は髪型を変えたことで突然人気が。

まったく本当に単純な奴らだよな。笑っちまう。

と言っても俺も人のこと言えないか。


あれ…… 気づいてくれない? そうすると俺がまた取りに行かないとならない。

面倒臭いが放っておけばまた消しゴムが消えるだろうから。

そうなる前に回収する必要があるが。これが意外と大変。

有野さんに合図を送るも睨み返されてしまう。

分かってるんだ。学校での有野さんは恐怖でしかない。

まだ教室を出れば多少変わって来るんだろうがそろそろ優しくしてもよくない?

ただトラブルが増えるだけだぞ。

まあでも俺以外の男子にも同じようにに冷たく接してるからな。

まだどうにか我慢できる。


一歩外に出れば人格が変わって優しくなる。

かわいらしい嫉妬深い女の子になる。

それを知ってるのは今のところ五階さんと俺ぐらいなもの。

他にいるとしたら有野さんの家族ぐらいだろう。


そう言えば五階さんと違って有野さんって家族について何も言わないな。

聞いたこともない。俺も必要最低限のことしか言わないので別にいいが。

秘密主義者と馬鹿にされるもんな。それは前の学校にいた時の話だが。

今はと言うと変態のレッテルを貼られてほぼ一人ぼっち。


ナンバーフォーと話すようになって学校も楽しくなったのに。

よく気がつく人だから俺が困っていれば助けてくれるはずなんだけどな。

だがまったくの反応なし。これはどう言うことだ?

仕方なく授業中とは言え取りに行くことに。


                     続く

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