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ストーカーだから

有野さんとホテルを抜け出して近くのファミレスでお食事。

仲良く二人っきりでロマンチックで楽しい夜を過ごすも……

トラブル発生。どうやら有野さんが巻き込まれたらしい。


「あの…… どうされましたか? 」

ヘロヘロの店員が止めに入るが無駄なのは百も承知。

相手を勢いづけてしまうだけ。

「黙れ! 」

一喝され店員は二歩ほど下がる。これ以上は無理と白旗を上げる。

そうなるともう誰も近づきはしない。

早く店長呼ばないとまずいって。


「それでおっさん。彼女が何かしたの? 」

とにかく主導権を奪われないようにしないと。舐められたら終わり。

怖そうな見た目だがここで退けば相手の思う壺。

多少なりとも余裕を見せないとな。これ以上舐められて堪るか。

うーん。でもやっぱり怖いんですけど。

そんな風に子犬のように震えるが有野さんの手前格好つけてしまう。


「その女が睨みつけて人を虫けらのように扱ったから…… 」

意外にもまとも。ただの最低野郎ではないらしい。

「ああ彼女ならいつものことですから気になさらずに」

「そうかい兄ちゃんってふざけるな! 」

「ふざけてないって。いつもあの目つきで睨みつけるんです。俺も被害者」

懐かしむ。学校ではこうだもんな。気持ちはとってもよく分かる。

それだけに男に親近感が湧く。


「嘘つけ! 楽しそうに聞こえるぞ」

「認識してもらえるんですよナンバースリーに。嬉しくないですか? 」

共感してもらえると思ったら店員さんも引いて有野さんも俯いてしまった。

まずい。これはドツボに嵌ったか?

 

「それはあれだ…… 」

まずい。男に主導権を奪われるぞ。

「我慢すればどってことないですよ」

必死に弁解。これで何とか頼む。

「うんうん。お前も大変なんだな。この女王様にこき使われてよ。

何だか可哀想に思えて来るぜ。頑張れよ! 」

そう言うと行ってしまった。


一体何だったんだろう? これって俺が有野さんを守ったことになるの?

大体睨まれるのも暴力振るわれるのも嫌われるのも慣れてるからな。

良い悪いは別として日常だからこれくらいでは動じないのさ。

ただの怖い人だと思ったら意外に物分かりの良い人。

俺が正直に答えたから長引かずに済んだのかな。 


心配そうに様子を見守っていた有野さんの手を取る。

「一ノ瀬君…… 」

どうやら有野さんも怖かったんだろう。それは俺だって同じさ。

足の震えが止まることはない。

「さあ行こうかナンバースリー」

バチン! 

怒らせてしまったらしい。俺も少し油断していた。

でもそれはないよ。せっかく助けてあげたのにこの仕打ち。


「どうして有野さん? 睨んでいるのはいつものことでしょう? 」

「そんなことはどうでもいい! それよりナンバースリーって酷い! 」

うわ…… そっちかよ。学校でのことじゃないか。

確かに学校やクラスのことを持ち出すのはどうかと思うがこれも不可抗力。

まあドリンクぶちまけられるよりはマシか。お店にも迷惑だからな。


「もう知らない! 」

本気で怒ったらしい。もう我がままなんだから。

「いや待ってくれ! 一人にしないで! 」

俺はこの辺りの地理がまったく分からない。一人にされたら迷子確定。

情けないが有野さんを追いかけるしかない。


「お客様。お会計の方を? 」

「しかし逃げてしまう」

「だからあんたが逃げてるんだって! 会計を! 」

結局支払うことに。そして案の定有野さんは姿を消す。

俺って何をやってるんだろう? ははは…… 情けないな。

仕方ない。隣のコーヒーショップで頭を冷やすか。

きっと迎えに来てくれるはず。


「いらっしゃいませ」

あれ? 走って逃げたと思ったら有野さんの姿が。どう言うこと?

「よかった有野さん。俺反省してるんだ。ナンバースリーは言い過ぎた。

俺には君はナンバーフォーだよ」

まずい。一個下げてしまった。

猛追してる女子がいるのを知ってるのでつい優しさで教えてしまう。

バカだな。俺はどうしようもないバカだ。


「ねえ戻ろうよ有野さん? 」

「知らない! 」

どうすればいいんだ? 感情が滅茶苦茶だぞ。

あのおっさんが余計なことするからこんなことになるんだよな。


「待ってよ有野さん! 」

「あれ一ノ瀬君じゃない? 」

まずい知り合いがいたらしい。

一番まずい展開。ナンバーフォーのお出ましだ。

恥ずかしいところを見られたか?


「二人はお知合い? 」

ナンバーフォーと遭遇。一人っきりでこんな時間に?

気にはなるがここはどうにかごまかすことが優先だな。

「それは…… 」

「一ノ瀬君? どうして有野さんと? 」

追及を緩めることはない。まずい展開。追い詰められていく。

「ほら俺ってストーカーだろう? 」

「最低! 」

どうにかごまかせたがこれでもう相手してくれないなきっと。

とにかく乗り切ったなら細かいことは気にしない。

充分に時間を取って有野さんとホテルへ戻る。

別に何も疚しいことはない。


部屋に戻ると五階さんが姿を見せる。

「ごめんね。パパが放してくれなくって。

きちんと食べた? せっかく一緒にと思ったけど次回行こうね」

堅苦しいパーティーなど冗談じゃない。でも五階さんの手前何とも言えない。

俺を紹介するつもりだったらしいがまだ心の準備がまだ。


「よし続きをしようか」

そう言うと地獄の追い込みに。

十二時までみっちり勉強して部屋へ戻る。


汗を掻いたのでシャワー。

二人はまだ頑張ってるようだけど俺はもう限界。髪も乾かさずに横になる。

何て気持ちいいんだろう? 待たずに寝るか。

いやそうはいかないよな。有野さんを待つのが常識。

有野さんも昼にいいと言ってくれた。期待大だ。

でも…… 眠気が襲って来る。もうダメだ…… 

おやすみなさい。


それからどれほど経ったのだろうか? 

ついに待ちに待った瞬間がやって来た。


                  続く

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