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楽しいお食事

有野さんの長いお話に付き合わされ欠伸が止まらない。

ようやく終わったよ。しかしよくやるよな有野さんも。

ロープを持ち込んでさ。理由を十五年前に起きた惨劇のせいにするんだもんな。

即興劇の割にはよくできているがまさか本当の話?

五階さんに確認したところで正直に答えるとも思えない。

それに五階さんは政治一家だから。庶民の昔話など興味ないから知らないかも。

学校の図書館で調べるのが無難だろう。

もし嘘ならお仕置きしないと。

へへへ…… どうしようかな。やっぱり夢のお返ししなくちゃな。


今話してくれたのが仮に事実だとして。現在は超高級ホテル。

現実離れしてる面では同じだが立ち位置が真逆。

その遭難場所がどこか知らないがこことでは天と地の差がある。

ここは都内でも有数の高級ホテル。対して田舎の隔離された村。

今その話をされても実感が湧かない。これでは意味がない。

ここではリッチな気分を味わいに来たんだから。


「ロープはその時。でも使い方が分からずにチャンスを逃した。

そこでうちの学校では山や海での遭難に備えて年に二回特別授業があるの」

初耳だが俺は二学期からだからな。

彼女の話では一学期に一度。二学期も試験終わりにあるそう。

ロープの使い方も大事だが今はクマ対策の方が重要では?


「さあもう目が覚めたでしょう? 一緒にお食事に行きましょう」

お腹ペコペコだと笑う。

「そんな有野さん。二人っきりでもっと楽しいことしようよ」

つい心にもないことを言ってしまう。

「はいはい。夕食の後にね」

「ラッキー! いいんだね有野さん? 」

「もう一ノ瀬君ったら。子供じゃないんだからこう言うのは確認しない」

どうやら本気らしい。これはこっちも覚悟を決めなくちゃ。

こう言うのはタイミングが大事。俺が求め彼女も応じる。

昨日までは二人とも勇気もやる気もなかった。

それが最後の夜と言うこともあり積極的になりつつある。


さあとにかく今は飯にしよう。

有野さんとの二人っきり。これはこれで楽しくて仕方ない。

「どうしたの? 口元が汚れてるよ」

「いや…… そうかな? 」

つい涎が…… どうやら俺も浮かれてるみたいだ。


でも俺たちこんなことしてていいのか?

二泊三日で試験前合宿に来ていた訳で。

これでは身が入らない。そもそも有野さんと一緒にいると目のやり場に困る。

今更だけどどうも恥ずかしくて。まあいいのか?


ここで五階さんの話は邪魔になるから一切出さない。

ただそうすると俺はいつも一人だから誰の何の話をすればいいか。

有野さんに任せるしかない。

フレンチは止めて近くのファミレスに二人で。

これが贅沢なんだろうな。


「一緒に食べようか? 」

嘘だろ? 食べさせてくれるのか? 俺そこまで求めてないよ。

「どうしたの? 」

大皿を二人で取り合う。

うーん。そう言うことかよ。変な風に期待した。

黙ってると笑顔を振りまく。

これが有野さん? いつもの学校で睨みつけるような厳しい顔も有野さん。

そしてこっちの天使のようなの彼女も有野さん。

百八十度違うから苦労する。学校での有野さんもそれはそれで好きだけどな。

何と言っても出会いは消しゴムコロコロと言う単純なもの。同じクラスだからな。


「サラダ食べる? ドレッシングは? 嫌いじゃない? 」

気配りのできる若干お節介気味のニコニコモードの彼女につい甘えてしまう。

「ドリンクバー取って来るね」

そう言うと行ってしまった。ただここでぼーっとしてる余裕はない。

トイレにでも行くか。


きゃああ! 

悲鳴が店内に響き渡る。

「ちょっと触っただけだろう」

うわ…… この手のトラブルが一番面倒だよな。逃げちゃうか?

まさか冗談? そんな格好悪いことできるはずがない。

ではここはまず一般的な対応で。

テンプレートをなぞればいいだけ。


「おいおっさん! 何やってるんだよ? 」

うん。順調順調。店内ならばこれでいい。

もしこれが店外で今ぐらい暗ければ敬語。相手は一人のようだし。楽勝さ。

「ああん? 舐めてるのか兄ちゃん? 」

おっと…… これはすべてすっ飛ばしてクロージングしやがる。

もっと柔軟に話し合いに応じてくれないと困るな。いくらおっさんでもさ。

しかもただのおっさんじゃない。怖そうな見た目のおっさんだ。

いかつく男臭く時代錯誤の髪型に鋭い目つき。これはまさか……

アンタッチャブル案件? 


「一ノ瀬君気をつけて。日本語通じないみたいだから」

うわ…… 思いっきり馬鹿にしてる。どう見ても日本人だろう。

失礼なこと言わない。外人だって悪い人とは限らないんだし。

それに俺の名は伏せてくれ。せめて仮名を使ってよ。それが無理ならあだ名でも。

確か学校でのあだ名は三番手…… ああこれは有野さんだったけ。

俺は確か消しゴムマン? これだけ聞くと勉強できるインテリ系に思える。


「どうした? ナンバースリー? 」

いつものあだ名でと言うか学校で二人の関係がバレるとまずいから。

本名を言うのは危険過ぎる。せめて下の名前なら。


「あの…… お客様どうしました? 」

ヘロヘロの店員が止めに入るが無駄なのは百も承知。

「黙れ! 」

一言で店員は二歩ほど下がる。これ以上は無理と白旗を上げる。

うーん。困ったぞ。大トラブル発生。


恐らくきれいでかわいい有野さんにちょっかいを出したのはこのゲス野郎だ。

警察を呼んでもいいんだぞ? でも俺たちも秘密の勉強会に来てるからな。

やっぱり警察沙汰はまずいか。


                 続く

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