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昔々あるところにお爺さんとお婆さんとお姉さんが……

目覚め。

目の前にはムチを手にしてない慌てた様子の有野さん。

心配で頬を叩いたりつねったりしたらしい。

どうりで夢は覚めない訳だ。


ムチ百発はあり得ないがどうにか耐え忍んだ。

それなのに夢だったなんて信じられない。

俺の頑張りは何だったのだろう?

せめてご褒美のキスぐらいないとやってられない。

でも今それを言えばきっとご褒美のムチを与えるだろうな。


「ははは…… 心配かけたね有野さん。さあ一緒に寝ようか」

「ふざけないで! いやらしい! 」

あれ昨日と言うか今朝は手を繋いで寝たはず。

しかも夢では抱いてくれと迫ったじゃないか。

なぜ今になって恥ずかしがる? ちっとも理解できない。

それでもなぜか頑なに拒絶するから渋々従うことに。

今はそう言う気分じゃないんだろうな。

これも多重人格が影響してる?


「それで有野さんは何をしてるんですか? 」

コソコソと荷物を漁っている。

ロープを取り出して縄跳びを始める。

あまりにもシュールな…… 夢の方が現実感あるよ。

そうか。合宿だもんな。弱点克服ぐらいするか。


「縄跳びって体育にありましたっけ? 」

中学まではあっただろうが高校はさすがにないよな。

「これは…… 体育で…… 」

どうやらロープの結び目らしい。もう訳が分からない。

遭難訓練の時に使用したと意味不明なことを言う。

九月に転校してきた俺は知らないだろうと自慢気。


昔この学校の生徒に悲劇が起きたらしい。

詳しい話を聞きたいが今は合宿中。

そう言うのは学校で調べればいいこと。


「あれは十五年近く前の話。村に一人の少女が…… 」

充分だと言うのに語り始める。

「うん? 何の話? 村ってここは町だと思うんだけど? 」

「お爺さんとお婆さんとお姉さんが…… 」

昔話を語って見せる有野さん。確か遭難事件の話だったような。

お爺さんお婆さんって…… お姉さんは斬新だけど。


「ごめん。間違えた」

照れたので本当のようだ。その顔もまたかわいらしい。

俺たちが呪いに掛かってなければお互いもっと素直になれたんだろうな。

多重人格に思春期症候群のコンビだから。


改めて語ってくれるらしい。本当はどうでもいいんだけど。

このロープの件をどうにかごまかすためによくやるよ。

どこまで即興劇に付き合わせる気だ?


「あれは今から十五年前のお話。

合宿帰りの女子ゲーム部はバスの故障で遭難。突如外部との連絡を絶つ。

最初は皆合宿の続きだとかまだ楽しめると喜んでいた。

しかし三日もすれば表情は薄れ疲れと絶望からおかしくなっていく。

そして食糧も尽きついには禁断の実に手を出してしまう。

それは顧問の先生が死に物狂いで蛇を追いかけた時のことだった。

蛇は急いで木へ避難。その木こそがゴールデンアップル。

生命のリンゴと言われるもの。

蛇を捕まえてリンゴの実をちぎるとそこから大量のウジが湧き出る。

おかしいと思ったが食糧が尽きた極限状況では打つ手はなくそのまま生徒の元へ。

気をつけて食べるように注意するも誰も気にする様子はない。

そして何事もなく一週間が過ぎ十日が過ぎた頃ようやく人の住む村へと到着。

これで生徒たちは生還できるはずだった。しかし村の者は拒絶。

なぜなら皮膚から大量のウジが湧いていたから。

伝染病の類を疑った村民に取り囲まれ牢屋に。

そうして隔離したことで村は救われたように思われたが違った。

恐ろしい生命力のウジが村を呑み込もうとしていた。

お前たちかわいいな? どこから来た? 

穢れを持ち込んだ愚かなよそ者はそこで責め苦を受けて果てる。

だがそれでも終わらずウジは男どもにまで張り付く。

そうして一月が過ぎ村はウジに浸食された人間に支配される。

もはやその頃には人間はいないと言っていい。

異常を察知した隣村の有志が村全体を焼き払いすべてを無に帰す。

こうしてようやく一応の解決を見た。

一人ウジの支配から逃れた少女がそのすべてを書き記した。

膨大な二月近くに及ぶ資料と言うか日記。

文書として今でも学校の図書館にあるそう。

なぜ彼女だけが助かったのか?

それは彼女だけはゴールデンアップルを食べなかったから。

村で捕まりそうになった時も混乱に乗じて逃れ隣村を目指す。

賢明だったのはそこで引き返したこと。

体を洗い清潔さを保っでいたのが功を奏す。

隣村もよそ者を嫌ってはいた。

しかし害をもたらさない観光客に手を出すほど乱暴ではなかった。

そこで遠く遠く離れたところから様子を見守る。

ウジに支配されればもう元には戻れない。

脳がやられ全身が腐っていく。それは一か月も持たないそう。

地獄の苦しみに苛まれながら最後を迎える。

ただ結局のところあのまま遭難していても助かりはしなかっただろう。

これは一種の賭け。それに負けたのが今回の犠牲者。お終い」


「以上が我が校に伝わる十五年前の悲劇」

「はあ…… それはそれは恐ろしくて何だか夢に出て来そうですね」

「昔だから…… 十五年も前の話。本当かどうかも分からないよ。

学校の図書館にはその関連書籍がすべて置いてあるの。

興味があったら読んでみてね。私は一冊だけ。それ以上はもう無理だった」

「いえ…… 結構ですから」

「そんな…… 面白いし読解力も上がるよ」

「いいですってそんなこと。それよりロープは? 」

天国と地獄。その遭難場所がどこか知らないがこことでは天と地の差がある。


                 続く

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