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裸間ボッチ  作者: スカート保存委員会
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真夜中のダンスショー

夜遅く。

いつもの激しいショーが始まる。

と言っても眠れないほどうるさい訳ではない。

多少音漏れはするが騒音で眠れないと言うより目が冴えてしまうのだ。

そのせいでなかなか寝つけずに最近寝不足気味。

もはや習慣になってしまっている。


隣の家で服を脱ぎ始めた有野さん。

服も下着も一斉に脱ぎ捨てて準備完了。

光に照らされた有野さんのあられもない姿に絶句。

いつものこととは言え俺は一体何を見ているのだろう?

見せられているのだろう? 


これは現実か? それとも非現実か?

ただの俺の妄想に過ぎないはずなのになぜか違う。

あまりに現実離れしているがそれでも目の前の出来事は疑いようのない現実。

俺は今あり得ない世界に身を置いている。まるで異空間。


笑顔を振りまくダンサーがゆっくりと近づいて来る。

絶対にこちらの存在に気づいてるはずなのにまるっきり無視。

あのうるさい音楽に合わせて踊る恐怖の瞬間。

ありのままの姿を見せられては正直面を喰らう。

どう表現すればいいのか? ただ美しいと褒め称えればいいのか?

俺には分からない。どうしようもない。

本当に見ていられない明らかにおかしな光景。


誰が狂っているのか? 俺か? 彼女か?

見せつけるように踊る彼女は常軌を逸してる。

ただ俺はこの時まだ彼女の本当の狙いに気づいてなかった。

多重人格の有野さんの夜はそれは大胆で派手。艶やかだ。


残念だがはっきりとは見えない。

俺が思春期症候群を患っていなければ全身隅々まで見えてるのだろうな。

すべてが目の前に現れる。それをどれほど夢見たか。

でもその夢もきっと叶わないだろう。

きっとこのダンスを見続けておかしくなるだろうから。

想像で補うなんて実に残念だ。俺はずっと見ていたかったよ。


こうして真夜中のダンスショーは俺がカーテンを閉めるまで続いた。

有野さんは絶対に気づいてるはずなのになぜか何も言わない。

今夜もひっそりと宴を終える。

こんなことを医者に言って信じてもらえるのか?

どうすればいいんだ? もう頭が痛いよ。悩みは尽きない。

医者にまだここまで言えてない。さすがにね。見せるように近づくのだから。


医者だってきっと着替えを覗いてるだけだと思ってるだろうな。

だが実態はまったく違う。まるで存在をアピールするかのように大胆に踊る。

俺が嫌がってもお構いなし。基本嫌がることはないが。

それに最悪カーテンを閉めればいいだけ。ただそれができない。

まるで金縛りにあったかのように固まってしまう。

どうにかしようとしても無理なものは無理。諦めて見守ることに。


翌朝。

いつも優しい朝の有野さんが俺の服を整えてくれる。

いいと言うのに寝癖も直してくれる。

昨夜とは全くの別人だ。多重人格だからな。これが通常。

おかしいのではない。おかしいとしたら俺だろう。


「ねえ有野さんは寝る前とかどうしてるの? 」

またこの変な質問を繰り返すことになる。

さあどう答えるかな? 答え方次第で有野さんの本音が分かる。

「また? もう一ノ瀬君もしつこい! ほら急ごう。学校に遅れるよ」

そう言って強引に手を引っ張っていく。

上手いごまかし方だ。感心するがそれで逃げ切れるものか。

さあどうしよう? ここは思い切って踏み込んだ方がいいのかな?

それが有野さんのためになる?


「おはよう。二人とも朝から仲がいいね。羨ましい」

そう言ってらしくない欠伸の五階さん。徹夜でもしたか?

そろそろ期末も近づいてるから勉強してた?

俺もそろそろ真面目にやらないと留年させられるかも。

何と言っても消しゴムコロコロ事件を起こした訳で。その辺は不透明だ。


透明? ああ今日は何色かな? まずいまずい。おかしな感情が生まれる。

もう裸が見れない以上その手の考えに行くしかない。

うーん俺の家ではとても勉強に身が入らない。

それどころか釘付けで夜更かし決定。最悪の環境だ。


「ほらマナ。一ノ瀬君がまた変な妄想してるよ? 放っておいていいの? 」

どうも最近俺はからかわれている。おもちゃにされている。

おいおいおもちゃにするのはこっちの役目なんだが。


五階さんはふざけてるが意外にも的確。

だから反論もできずにいる。する気もないが。

「いや違くて…… どうも試験勉強に身が入らなくて苦労してるんだ」

相談してみる。なぜそうなのかは言えない。言ってはまずい。

それくらい弁えている。俺はそこまでバカじゃないぞ。


「有野さんの下着に興味がある訳ではないんです」

うわ…… 言ってしまった。

つい気持ちよくなって。整理せずに口からつい出てしまう。

反省したいがもう遅い。後悔先に立たずだ。

「もう正直なんだから。ねえ教えてあげれば? 」

五階さんがまたふざける。もう本当に苦労するぜ。

「知らない! 」

怒って行ってしまった。


「うわどうしよう? 俺が怒らせた? まずい…… 」

「大丈夫だって。ほらこれ」

いつものお弁当。五階さんのお弁当は美味いと言うか癖になるんだよね。

「ありがとう。でも…… 」

「だから気にしない。マナは一ノ瀬君の変態さ加減に幻滅したんじゃない。

興味がないと言われたことが我慢ならなかったんでしょう」

本当かよ? でも下着の色に興味ないと言うのは当然の防御策だろう?

俺は変態じゃないよ。


「大丈夫。明日には忘れてるから。それより…… 」

五階さんがおかしな提案をする。

うーん。どうしよう。困ったな。


「おいそこ! ぼうっとしてるな! 」

それでも腑抜けたようにしているとやる気がないと注意される。

一限目からずっとこれだ。

全然授業に身が入らない。どうしてくれるんだよ五階さん。



                   続く

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