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裸間ボッチ ~隣人美少女たちの密かな企み~  作者: スカート保存委員会
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隠しごと

日暮先生が命名した思春期症候群。

何だかよく分からないけど格好いいのは確か。俺もすぐに気に入った。

その思春期症候群を誰に相談すればいいのかをずっと迷っていた。


唯一の話相手だった親友は現在入院中。とても俺の症状を相談できる状態にない。

さすがに心配かけられない。俺の方が話を聞いてやって勇気づけるべきだろう。

そうなったらほぼボッチの俺には相談相手がいなくなる。


うーん。それでは一体どうすれば…… 

母さんに言えば泣かれてしまう。妹に相談したら面白そうと他人事。

大家さんでも…… 年の功に頼るのも悪くないがやっぱり言えない。

言えば追い出される。うちの子たちに何をするとホウキを振り回してきそう。

冗談じゃなく住むところを失うことに。

実家に戻ればいいがそうすると有野さんたちとの関係が途絶えてしまう。

症状は劇的に改善されるだろうがそれでは意味がない。


それ以外だと五階さんぐらいだがいつ有野さんに伝わるか。

そもそも女性にするような話じゃない。いつ被害者になるとも限らない。

決して相談してはいけない相手。


ならば有野さん…… それはただの自白。まさか許してくれるはずもなく。

でも一度その話をしてみたが気にしてなかった。

取り込み中でそっちに集中していた。

だからって次もまた許すとは限らない。


「ありがとうございます。何だか肩の荷が降りた気がします」

大きく深呼吸をして新しい空気を取り入れる。

あー何て清々しい気分なんだろう。


「では具体的に。夜に隣人宅を覗くと全裸の死体があったと? 」

とんでもないことを言い出したぞ。次の患者と混ぜないでくれよ。

でっかく書いてあるだろう? 混ぜるな危険って。

俺はただの覗きの常習犯なだけで殺人鬼ではない。至って普通の高校生さ。

夜な夜な枕元に立たれるようなこともない。

ただおかしな夢を見るようになったがそれだって決して悪夢ではない。


「違います! 初めから違ってる。そんな話はしてませんって!

夜お隣の部屋を何気なしに見ると裸のビーナスが。つい見惚れてしまい……

いや違った。夜着替えてるところをたまたま目にしたんです。

かわいらしいお尻が見えた瞬間に稲妻のようなものが走った。

そうして胸もお尻も大事なところも見えなくなってしまったんです」


詳しく言えば言うほど己の異常ぶりが見てとれてしまう。

まさか誤解されてないよな? 

自分でもおかしかなこと言ってる自覚はある。だからって直そうとは思わないが。

「うーんそこのところがよく分からないんですよ。着替えを覗いた。

その上で本来見えるべきところが見えない。でもずっとその状態? 」

俺が隠し通した真実に気付きつつある。

決して誰にも言ってはならないタブー。それに切り込もうとする。

なぜそこまで拘る? 俺の説明でなぜ納得しない?

なぜ次に行かない? 俺はこれ以上言いたくない。これ以上……

言えば有野さんを傷つけることになる。


「分かりました。今日はこれまでにしましょう。

どうやらあなたはまだ隠しているようだ。

私を完全に信頼されていない。それはとても悲しいことです。

もちろんこのように心を開かない方も実際いらっしゃいます。

ほとんどの患者さんがそう。だからそれ自体異常でも何でもありません。

ただ私を信じて欲しい。次回はその秘密まで教えてもらえると改善されるかと」

手厳しい。さすがの先生も怒ったのかな?

だからって無理なものは無理。そもそも言えるはずがないんだ。

有野さんが多重人格だなんて言えない。

 

「では一ノ瀬さんも心配でしょうから結論から行きますね」

どうやら今までの症状を総括してくれるらしい。果たして結果は?

「はっきりお願いします! 俺はどうなんですか? 」

「はい。あなた思春期症候群です。突然見えなくなったことには訳があります。

恐らく見たいという欲求と見てはいけないと言う理性が対立。

一時的に脳が混乱状態に陥ったのでしょう。

復活した時に危険と判断した脳が勝手に見えなくした。

ジレンマに陥った時に激しいストレスにさらされこのような症状を引き起こした。

それが真実ではないでしょうか。

よくあるのは芸能人など見られる職業の方です。

オフでも好奇の目にさらされ続けて見られるのを拒絶。

その結果誰からも認識されなくなることがあります。

これも思春期症候群の一つです。そこには観測理論が深く関係してまして…… 」

難しい話をするものだからもうついて行けない。

決して頭の良くない俺では一度で理解するのは不可能。


「ははは…… 大丈夫です。今のは例を挙げたに過ぎません。

あなたはあなただ。この症例は初めてと言うことですね。

論文や学会からの情報を収集するつもりですがまだ何一つ把握できていない」

どうやら医者自ら謎の解明に乗り出したらしい。


「では今日はこれくらいで。次回は一週間後となりますのでお忘れなく」

こうして診察を終える。

ずっと抱えていたことだから思い切って相談して良かったと思う。

症状の改善にはまだまだ時間がかかりそうだがまずは一歩だな。


ブツブツ

ブツブツ

最後の患者とすれ違う。

おかしな呪文を唱えてるように思ったがどうやら謝罪の言葉を述べてるらしい。

一体何が彼にあったのだろう? 俺と違って呑気な話じゃないんだろう。  

謝らなければならいないようなことをした。そうに違いない。

可哀想に。いつの間にか親近感が湧く。

俺にしろ彼にしろ真実から目を背けてはいけない。


                   続く

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