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裸間ボッチ  作者: スカート保存委員会
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思春期症候群

大きな総合病院で新しい先生の診察を受ける。

こうして精神内科医の力を借り俺の身に起きた謎の奇病に迫ることに。


「あなたに感覚がないのは当たり前です。いい加減にしてください! 」

「嘘? 嘘だ。俺が悪いのか? 」

確かにまったく身に覚えもなく途中から合わせにいったと思う。

でもカルテを間違えて診察を始めたのはそっち。俺は悪くない。

悪くないに違いない。違いない! 違いない!


「ほら落ち着いて。そうですか。とりあえず紅茶でもいかがですか? 」

仕切り直しと言うことらしい。

でも何だかこの紅茶飲んでると眠くなるような気がする。危険な感覚。

お持ち帰りもできるそうだが本当かな?


一杯飲み干して落ち着いたところでもう一度。

「それで一ノ瀬さん。今日は例の件ですよね? 」

どうやら引き継ぎがきちんとできてるらしい。

でもカルテを間違えるぐらいだからどこかでミスをしてそう。

信用しようにもふざけてる感じがするしな。大丈夫かな?

心配になってくる。


「俺はどうしたらいいのでしょう? 自分が分からないんです」

「そうですね。うーん。具体的に言っていただかないと助けることはできません」

厳しく指摘される。それは分かっていたつもり。でも詳しく語れば……

「しかし…… 」

「一ノ瀬さん! 私を信用してください! 」

そう力強く言われると不思議と信じたくなる。

でもカルテの取り違いは確かにあった訳で…… 

ただそれも俺が焦って勝手に入ったことも原因の一つ。

まあこの人なら問題ないか。覗きがバレても退学にはならないさ。

仕方なくありのままを語ることに。


隣人との奇妙な関係も告白。どうして覗く形になったのかも思い切って。

語ってる間もうんうんと頷く。きちんと聞いてくれる。

「そうですか…… そんなことがあったんですね」

「先生俺…… 」

「顔を上げてください。罪悪感にに苛まれる必要などないんです。

ただ覗きは犯罪です。できるなら控えてください」

そんな真剣に言われなくても分かっている。でも止められない時がある。

衝動をどうしても抑えられない。どうしてこんなに俺は愚かなのか?

若気の至りでは済まされない。自覚はあるんだ。我慢だって多少してる。


「私は医者ですからあなたの行為が決して許されるものではないと言います。

ただ一個人としては羨ましいとさえ思える。よく話してくれました」

嘘だろう? 悩んでるのに羨ましい? あり得ない。


「先生! 俺おかしいの? 」

「大丈夫ですよ。あなたは狂っていません! 普通です」

「そんな風に言ってくれるのは先生だけです! 誰にも相談できなくて…… 」

「辛かったんでしょう。苦しかったんでしょう。分かりますよ。

そうですね。今のすべてを受け入れ認めてあげるのが第一歩です。

私もです。その上であなたの症状を語ってみますね」

「どう言うこと? 」

「難しく考えないでください。ただ病名を発表すると言うだけです」


自信満々の先生。まさかこんなおかしな症状に病名があるのか?

信じられない思い。でもこれで一歩前進か?

苦しんで来た訳で。その病名が分かるなら改善の余地もあるだろう。

ネガティブにばかり考えていたがもっとポジティブに前向きに行こう。


「若年性及び思春期における性並びに視覚における異常。

或いは心の発達阻害因子不明予備軍」

難しい用語が並びもう理解する気にもなれない。

これは学校と同じ様に聞き流すしかない。または消しゴムでも転がすか?

右から左へと抜けていく感覚。


「どのような意味でしょうか? 」

「いえ症状を表すとこんな感じになるよと言うだけです。

ただこれでは些か長すぎる上に覚えられませんよね?

ですからもっとすっきりさせましょう。

実は私前任の鴨志田先生の論文を支持しておりまして」

「はあそう言えば前回も似たような症状を言ってた気もします」

あの時はメモにおかしな症状を記していたな。


「これなどいかがですか? 」

【中二病】

「いえ高一です」

「ならば高一病でも構いませんよ」

どうも本気らしい。誰がそんな症状を言えるってんだ?

親に何て言えばいいんだよ? どうせ言うつもりはないけど。

できるなら言い訳が立つような病名であって欲しい。

そう願いたいもの。でも無理なんだろうな。

悪ふざけが過ぎる。酷い。あまりにも酷過ぎる。


「では思春期症候群と言うのはいかがでしょう? 」

突然飛び出してきた耳慣れないワード。

いかがと言われてもどう答えていいか迷う。

いいとは思うけど若干恥ずかしい気もする。

それだけでなく何かを侵害してるような…… 思い込みかな?


「悪くはないんですがどこかで聞いたような。量子力学ですか? 」

「いえいえそのような高尚なものではなくあくまで名称と言うだけ。

格好よくありませんか? 」

そう言われたら確かに何だか格好いい病名な気もする。

「ハイ先生」

「では思春期症候群を具体的に診て行きましょうね」


ようやくだ。ようやく俺を信じてくれる人が現れた。

何て素晴らしいんだろう? 俺のことを色眼鏡なしで見てくれる。

それだけで幸せな気分だ。大体この症状はどこかおかしいんだよな。

と言うかいくら訴えかけたところで真面目には受け取ってくれない。

何度緑先生に相談しようかと考えたことか。

でも先生だって女性。そんなこと話したら嫌に決まってる。

だから言いかけたけど言わなかった。他に相談する相手もいない。

思いきって病院に行って正解だったな。


                  続く

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