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裸間ボッチ  作者: スカート保存委員会
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好きな本

今日までのことを振り返る。

少しずつだけどクラスでも話し相手ができた。前は一人だけだった。

隣の席によく笑う男で俺と同じスカート保存委員会に所属。

現在入院中でもはや灰色の学園生活。そんな俺がコロコロをきっかけに繋がりが。

有野さんとも仲良くなって今ではクラスのナンバーフォーと。

その有野さんだって人目がなければ睨みつけながらも話してくれる。

決して俺を無視してる訳ではないんだ。ただ扱いが雑なだけ。

多重人格の有野さんに振り回されてばかりの毎日とは言え悪くない。


ただ結局女子に落ち着く訳だ。寂しいことに男どもは全然相手してくれない。

いてもからかうだけ。決してあちらからは仲良くしようとはしない。

二学期にいきなり転校して来たからまだ壁があるんだろうな。

それでも前よりもよくなっているのは実感できる。

外ではうまく行ってる。後はクラスでの居場所を確保すること。


佐藤さんと最近読んだ本の話になる。

忘れやすいので十回ほどノートに書いてようやく名前を覚えた。

さすがにナンバーフォーでは言いにくいし伝わらないからな。

「そっちは? 」

俺だけ答えてそれで終わりはないよ。それでは話だって広がらない。

だから聞き出すまで粘る。おかしいな俺ってそんな奴だったっけ?

もっと従順で物分かりのいい奴だったはずだ。それは有野さんにだけなのか?


「私は…… スティーブンキング」

うお! これは凄いぜ。ホラーミステリーの大家。

まさか相当なマニアなのか? 俺殺されちまうのかな?

「凄いね。まさか原文? 」

「そんな訳ないよ。翻訳してあるのに決まってるでしょう」

そう言って大げさに笑ってくれるから助かる。


実際スティーブンキングの本は読んだことはない。ただ映画で何度か。

「ホラー好きなんだ? 誰を呪い殺したいの? 後ろの女子? 」

誤解だとよく分かっているがふざけて聞いてみる。

「もう一ノ瀬君たらもう! 」

もし本当でも言えないか。まさか有野さんじゃないよね?

こうして趣味の読書の話題で盛り上がる。


クラスではこれほど騒いだことを見たことない大人しめなタイプの女の子。

もうナンバースリーにはなってるのではと思えるほどの人気ぶり。

急上昇中の佐藤さん。本人にその自覚なし。まあ当然か。無邪気に笑ってる。


「おいそこ! 授業が始まってるぞ! 早く席につかんか! 」

まずい。いつの間にチャイムが鳴っていたんだ。

長く話し込んでいたらしい。もう俺もただのボッチじゃない。

次のステージに来てるんだろうな。


うん? 何だこの異様な視線は? 

男どもの妬みが始まったか? 当然そうだろうがあまりにも短絡的。

髪型を変え多少痩せて雰囲気を変えたナンバーフォーの人気は高まる一方。

俺は男女分け隔てなく話す。女子とだけ話すような軽薄でも軟派な男でもない。

でもそっちが相手にしてくれないじゃないか。

用がある時はからかうか囲むかする時でロクに相手にしないのに。

今更嫉妬されても困る。それとも調子に乗るなと釘を刺す意味だろうか?

でも話しかけたのはあっちで俺は通り過ぎようとしただけ。何の意図もない。

授業始まったので言い訳もできず誤解を解くこともできない。


何だかおかしな立ち位置。クラスでの俺の立ち位置が微妙に。

目立つなと言いたいのだろうが俺だってできれば目立ちたくない。

これ以上目立って注目されると有野さんとの関係に気づかれる恐れもある。

まあすぐ忘れるだろうさ。大丈夫。何の問題もない。


放課後いつものように帰ろうとすると引き留められる。

「お前最近調子に乗ってるだろ? 」

おっと来ましたね。でも大丈夫。相手は一人だ。怖くない。

囲まれたらまずいが奴らも正攻法で行くしかないからな。

「いやそんなこと…… 」

「あるんだよ! いいかこれ以上目立つ行動はやめとけ! 」

あれ? 因縁つける気だと思っていたら単なる忠告だけだった。


「でも…… 」

「でもじゃない! お前のことを思って言ってやってるんだ。

せめて教室では大人しくしてろ! 」

そう言うが俺は話しかけられたから答えただけ。無視する方がよっぽど酷い。

これ以上どうしろと言うんだ? できることとできないことがある。  

それにしてもこの男凶悪な面してるな。自然と敬語になってしまう。

うちのクラスにこんな奴いた? まあ俺は人を覚えるの苦手だからな。

 

「お前よくない噂が立ってるぞ。隣のクラスの女ともよろしくやってるって。

サッカー部の奴が見たんだとさ。それから先生にまで手をだしてるって」

どうやら別れたサッカー部のスーパーサブがよりを戻そうと接触したんだろう。

自分から振っておいてよくやるよ。そう言えば別れ話は屋上でだった。

最近一緒に食べてるところを見られたのかも。

それで嫉妬して根も葉も無い噂を広めたんだろうな。


「違うんだ! それはすべて誤解で…… 」

「まあいいや。そう言うことだからこれからは気をつけろよ。

ああそれと退院するって。お前に伝えろって言うから」

そうか。あの凶悪面は奴の退院を伝えに来たのね。何だこっちはついでかよ。

あーあ緊張したな。あの面とでかい声だと脅されてるようにしか思えない。

周りからしてもそうだからこれで一件落着? だったらいいんだけど。

そうだ。退院のお祝いついでに寄っていくか。奴の病院は確か……


                続く

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