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罪悪感

両隣にはクラスでも人気のある女子が。

有野さんはナンバースリーだし五階さんに至っては常にナンバーワン候補。

あのサッカー部のスーパーサブと別れて人気が回復傾向にある。

そんな二人が俺に振り向いてくれるはずがない。

こんな当たり前のことになぜ気づかないのだろう?

息子を過大評価し過ぎだ。

そんなこと九十九パーセントあり得ない。

残りの一パーセントに賭ける奴はアホでしかない。

いつも教室で睨みつける有野さんを見て実感している。

話しかけることさえ恐れ多い。普通はあり得ない。そんなの常識だ。

それでも有野さんは特別。


「考え過ぎだよ。俺がそんなモテるはずがないだろう? 」

心配させないようにする。それが優しさ。これ以上迷惑は掛けられない。

ただ本当にそれでいいのか? モテない息子でいいのか?

俺は母さんの希望する方に合わせるよ。

「でも今日だって一緒に下校してたんでしょう? 」

疑いの目を向けてくる。見られていたか。それだと言い訳は難しいな。

まるで俺が嘘を吐いてるようになってるがそれは違う。

信用してもらうにはどうしたらいい?


「それは…… 同じ帰り道で偶然よく一緒になるだけ。

お隣さんだから俺にしろ彼女たちにしろ付き合いは大事だからさ。

仲がいいに越したことはない。喧嘩ばかりしてはギスギスするだけ。

それが男と女と言うだけの差。母さんたちだってそうだろう? 」


俺だって最近まで一緒に住んでいたんだ。

お隣さんが誰でどんな感じか両親から聞かされている。

俺はただ挨拶する程度の関係だからそれ以上はないが。

和葉は裏の爺さんにえらく気に入られていた。

俺は絶対に一人で遊びに行くなと注意したほど。

それも今にしてみればいい思い出。


「では一週間ほど試してもいいわね? 」

どうやら本気らしい。

「おいおい。我が息子を疑う気? 冗談でしょう? 」

暇なのかな? 他にやることはいくらでもあるはず。

趣味だって習いごとだってそれこそ町内会やご近所付き合いだって。

俺に構ってる暇も意味もないだろう?

「これも成り行き何だから仕方ないの。ほら言うことを聞きなさい!

たかが一週間だから我慢する! 」

うわ最悪だな。夜には何もできない。それどころかまずいのでは?

もう時間が迫っている。


夕食を済まして九時過ぎには例の格好になっている有野さん。

もしそれを見られたらお終いだ。気づかれる訳には行かない。

でもどうしたらいい? 警戒されてる中でやれば母さんだって気づく。

ここは急いで寝てもらうしかない。


モグモグ

モグモグ

「とにかく疲れたでしょう? もう早く寝たら。体に悪いよ」

らしくなく体を気遣う。やり過ぎたかな? でもこれも優しさだしな。

「ありがとう。あんたがそこまで考えてくれるなんてね」

多少罪悪感があるがこれは仕方ない。

俺はこの危機的状況を乗り越えてどうにか生還するんだ。


「俺も今日は疲れたからもう寝るわ」

俺は寝室に。母さんは客間に。

と言っても狭い家だから。襖一つ挟んで寝てる。

これで自由にできるがこれが一週間続くと思うと嫌になる。


どんどん密会の雰囲気になっていく。

これならいっそのこと有野さんに告白するべきではないか?

でも一つの地雷がある。お隣だから断り辛いと言う問題。隣人関係は複雑だ。

それにしてもここからだと有野さんの家は覗けない。

逆に五階さんだがそれはさすがに悪いよね。いやいや。裸でいるはずない。

だったらカーテンを開けて空気の入れ替えをするのは決して間違ってない。


さあここは有野さんを諦めて五階さんにしよう。

目があるかもしれないがそれがお隣さんだから。何の問題もないよな。

問題になるとしたらお隣との境界を侵して入って行くことだ。

不法侵入になってしまう。ちょっとぐらいなら五階さんは優しいから大丈夫。

さあ再び秘密の花園に出掛けてみよう。

そこには果たして一体何があるのかワクワクが止まらない。


カーテンを開き夜の挨拶に備える。

だがいくら待っても姿を見せることはない。

そうだよな。もう寝てるよな? それはそうだ。


「ちょっといい? 」

いきなり襖をあけて入って来る母さん。

「どうしたの母さん? 急にはまずいよ」

「カーテン開けてるんだ? あんたいつも外に興味ないと締め切ってるだろう?」

疑問を口にすると閃く。

「まさかまさか…… 」

「いや開けっ放しにしていたのをそのままにしてたんだ」

下手な言い訳でどうにか繕う。無理があるがどうにかなったかな?


「どうして? まるで人が変わったみたいじゃない? 」

何と言われようと知ったことではない。ここはあくまで意図せずに偶然だと。

「それは…… 実は運気が良くなるって言われたから」

事実なので言ってもいいよな? ただ危険が伴うのも事実。

騙されてはいない。壺だって買ってない。

水晶は三百円だからお手頃だけどそれも興味ない。

ああどうしようかな? 


「まあいいか。それで氷はある? 」

喉が渇いたと寝酒にはロックがいいと氷を要求する。

「ごめん。置いてないよ。夏じゃないんだから冷凍庫の製氷機の氷を使ってよ」

どうやら目が覚めて寝酒に走ったらしい。冷蔵庫になければないっての。

それにしても体に悪いのによく飲むな。あれってちっとも美味しくないんだぜ。

俺も一度舐めたことがある。でもまず過ぎてすぐにやめた。


                  続く

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