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裸間ボッチ  作者: スカート保存委員会
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尾行

翌日。鐘が鳴ると一斉に終わったと叫ぶ。

そう中間テストはこれで終わりだ。

手応えはまったくない。得意の英語も散々だった。

数学は零点ではないろうが適当に計算したからな。

もう少しきちんと勉強してればよかった。後悔しても遅いがやはり消しゴムがな。

どうしてもあれのせいで集中力が落ちてしまう。いつものことだが毎回だと。


お疲れの一人歩き。

高校は駅から三十分のところにあり歩く奴もたまにいるがほとんどがバスだ。

だから一緒に帰ってくれる奴はいない。

俺の家からは通えなくはないがそれなりにあるので今一人で暮らしている。

寮生活はそもそも部活に入ってないし大勢の人と共同生活を送るのが大の苦手。

俺の好きにしていいなら別だが合わなければ俺が孤立してしまう。

前の高校ではそれでもどうにかうまくやっていた気がする。

気がするだけで決して本当にうまくやっていたかは不明。


そろそろ帰るか。おっと帰る前にまずは本屋に。

ショッピングモールの大きな本屋では立ち読みでなく座り読みができる。

ガヤガヤうるさいので集中しては読めない。ただ雑誌をパラパラ眺めてるだけ。

おっと…… 違う違う。今回はのんびりしてられないんだった。

まずは医学書と。目の違和感。何か最近おかしいんだよな。

うーん。ダメだ。よく分からないや。

専門書は今の俺では無理。そもそも理系じゃないし。


あれ…… 有野さん? まあそんな訳ないよな。

隣の席に座って来たのは間違いなくうちの学校の生徒だ。

だって俺の持ってるのと同じ制服だもんな。

もちろん趣味で集めてるなんて言えない。ははは……

実際は妹の先輩に頼みこんで妹が貰って来たんだけどね。

その人は今年までこの学校にいて必要なくなったとか。

卒業したとかではなくどうやら自主退学したらしい。


本を元の場所に戻し一旦離れてから有野さんらしき人物の様子を窺う。

尾行対象は一時間ほど粘ってから本屋から移動。

その後服屋を数軒回ってからモールを後にする。

どうしようか? これ以上後をつけるのはまずいよな。変態だと思われる。

でも唯一の理解者だし。このチャンスを逃す訳にはいかない。

ただ本当に有野さんかは不明。ここは自然に振る舞おう。


そう言えば有野さんってどこに住んでるんだろう?

へへへ…… ダメだ。これは危険な兆候。

彼女がどこに住んでいようと構わない。

ただ彼女も徒歩通学あるいは自転車通学してるんだろうな。

駅にはバスがほとんどだしここに寄るのは俺みたいに帰り道になってる者。

断定はできないが意外と近くに住んでるのかもしれないぞ。


うん? 何だあの怪しい男は? 追い抜いたおじさんがスピードを緩めピッタリ。

後頭部が禿げ上がっていてそればかり目が行ってしまう。

うん…… 信号待ち…… 

ついにおじさんが有野さんを追い越した…… あれ怪しいか?


振り向いたおじさんはズボンのチャックを降ろして路上放尿の暴挙に出る。

震える有野さん。さあ守らなければ。

その時笑い声が聞こえた。拍手さえしていたような…… 

慌てたおじさんは夕闇に消える。


「おいどうした? 何かされたのか? 」

まずい。つい妹のように対応してしまう。心配してのとっさの行動。

「どちら様ですか? 」

どうやらあの笑い声も拍手も聞き間違いだったらしい。

まるで演技をしているかのようなオーバーに震える有野さん。

つい抱きしめたくなる。ついなだけで実際はそんな行動を取らない。


「いや…… その…… 」

ダメだ。有野さんは俺のことを認識さえしてない。そんなバカな。

学校であれだけ一緒の時間を過ごしたのに彼女からはその思いが伝わらない。

覚えてないだと? あれほど強烈な印象を植え付けたはずなのに。

消しゴムコロコロでは足りなかったか?

「とにかくありがとうございます。ではそれでは」

あれ…… あまりに不自然だ。素っ気ない。

俺が誰か分からなくても同じ高校だってことぐらい制服を見れば一発で。

それなのに知らない振り。これは俺も舐められたものだ。


「ちょっと待てよ! 」

「いやああ! 」

つい格好をつけて真似してみただけなのに勘違いされてしまった。

まあでも俺も見知らぬ通行人だからな。どうでもいいか。

「せめてお名前だけでも…… 」

あれおかしいな? これって俺のセリフじゃないんだけど。

「ごめんなさい。失礼します! 」

「いや違うんだ…… ただ帰る方角が一緒なだけで…… 」

思いっきりアホな言い訳を繰り返し逆に怪しまれてしまう。


危険なのは俺じゃなくて路上放尿してる方。

ただ男なんて見てなければこんなもの。特におじさんはそう。

監視が行き届いてないと何をするか分からない生物。

大げさに言えばそんな奴が二人に一人以上歩いていることになる。

特に暗くなった帰り道ではそれは顕著。彼女を守ってあげなければな。


「方角が一緒? 」

「そうなんだ。偶然なんだ。ただの偶然なんだ! 」

つけて来たのを悟られないように言い訳をする。

白々しいとしても何としてもこの場を切り抜けないと。

まだ気づかれてないが同一人物と分かれば有野さんから嫌われてしまう。

変質者のレッテルを貼られる。それだけは絶対に避けなければならない。


「偶然じゃないでしょう? 」

疑いの言葉を掛ける有野さん。

「偶然で…… 失礼しました! 」

急いで姿を消す。これ以上怖い思いをさせてはいけない。

トラウマにでもなったらどうする?

きっと怖くて悲鳴も上げられずにおかしくなって笑っていたんだろう。

俺はそんなんことも理解せずに余計なことばかり。

もうこれ以上はダメだ。


でも…… やっぱり心配だな。もう少しだけでも後をつけるか。

尾行を続行する。


                 続く

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