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裸間ボッチ  作者: スカート保存委員会
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修羅場

週末。約束当日の朝。

まずいことに気づく。金がないのだ。まあそれでもどうにかなる。

金銭的なことはどうにかなるだろうさ。でもそれとは別の問題が発生。

有野さんに買物につき合ってと言われ安請け合いしてしまった。

だがよく考えれば五階さんとプレゼントを買いに行く約束してたんだった。

プレゼントと言っても妹の和葉へだから五階さんと何かある訳ではない。

ただ有野さんが嫉妬するだろうからと秘密にしている。

その日が重なった。ダブルブッキングだ。


有野さんと約束した時確認もせず適当に返事したのが大きな間違いだった。

でもせっかくのお誘いを断れるはずがない。

もちろん有野さんだけでなく誘われたら基本的には断らない主義。

当然今までそのような経験は皆無だった訳だけれど。

とにかくどうにかしないとな。


どうすれば? 有野さんを優先したいが五階さんとの約束は俺が言い出したこと。

当然お隣さんだから一緒に出掛けることになる。

どっちかを断ればよかったのにそれができずにずるずる来てしまった。

順番から行けば当然有野さんの方を断るのがスジ。でもそれは嫌。

自分の主義にも反する。

結局どうすることもできずに当日を迎えることに。

嬉しいはずが緊張と言うか言い訳をどうするか考えている。


「ああ一ノ瀬君。今日は楽しみだね」

五階さんは笑顔だ。妹のためにプレゼントを選んでくれるとっても良い人。

もし有野さんがいなかったらきっと彼女を……

あー俺は何を? バカなのか? 今が危機的状況だと分かってるはずなのに。

呑気に一体何をやってるんだろう?


「おはようございます五階さん。さあ急ぎましょう! 売り切れますよ」

急かす。どうにか気づかれないように。ここから一刻も早く立ち去りたい。

有野さんには悪いけど買物は一人で行ってもらいましょう。もうそれしかない。


「待ってよ一ノ瀬君! 急ぎ過ぎだって」

笑っているが多少困惑している様子。あまりに不自然だからな。

でもこちらには急がないといけない差し迫った事情がある。


「ああ二人ともお出かけかい? 若い人はいいね」

大家さんに捕まってしまう。何と運の悪い。

まずい。五階さんの足が止まる。長いお喋りタイムにつき合う羽目に。

おいおいこんなところで立ち話されては困る。

もう有野さんがいつ現れてもおかしくない。

とにかく俺はジャンプするかな。

「ファール! おっと…… 邪魔したね。楽しんでくるんだよ? 」

こうしてどうにか解放された。その時後ろで気配がする。


「有野さん…… 」

まずい。あれだけうるさければ気づかれる。ただ約束はまだのはずだが。

どうにかまだ言い訳できるさ。通用するかは別として。

「一ノ瀬君? 待った? 」

うわ…… 終わった。二人同時に嫌われるのか。それも運命だな。

女難の相はまだ続いていたらしい。仕方ない諦めよう。ここは正直に……


「ちょっとパピヨン! 」

「マナ…… 」

バレたかは別として隠れる。五階さんのミニスカートの後ろに隠れる。

「何をやってるの一ノ瀬君? またいつもの癖? 」

有野さんに失望されてしまう。

「ちょっと何触ってるの! 離れて! きゃあ! きゃあ! 」

五階さんが冷静さを失っている。らしくないな。


「あんたらうるさいよ。通りで騒ぐんじゃないよみっともない! 

痴話喧嘩はよそでやってきな! 」

大家さんに怒鳴られる失態。これはもうどうしようもないな。

決してわざとではないが。


「もう! どうして隠れたりしたの? 」

有野さんから追及を受ける。五階さんも恥ずかしそうに服を直す。

俺が悪いのか? 当然そうだけどさ。でも時と場合があるだろう?

「済みませんでした。デートの約束をすっぽかすつもりでした」

もう正直に言おう。何でも言ってしまえ。

土下座は道端では難しいので頭を下げるに留める。常識はあるのさ。


「デートって誰と? 」

笑いを堪える有野さん。何か様子がおかしい。どう言うことだろう?

「有野さんと俺…… じゃないの? 」

「ええっ? 私? 」

「だから困ってたんでしょう? 五階さんとプレゼントを買いに行こうと…… 」

正直に告白することに。もはやこの手しかない。潔く認めよう。

修羅場は早く終わらせるのがいい。


「プレゼント? 一体誰の? 」

嫉妬に狂った有野さんが服を掴む。何て怖いのだろうか?

もう寒そうな格好だとかかわいいなとか思ってる余裕はない。

「妹のプレゼントと五階さんに日頃の感謝を込めて…… 」

「うわああ…… それは内緒でしょう? 」

なぜか慌てる五階さん。言うなと説得されていたっけ。

「ちょっとなんでパピヨンと一ノ瀬君がプレゼントを渡す仲な訳? 」

始まりは静かだった修羅場も徐々にヒートアップ。

俺はこのままでは殺される。何とかしなければ。


「ごめんマナ。内緒でお昼のお世話してた。マナはそう言うの苦手でしょう? 」

実際は最初に言ってる。ただまだ継続中なだけ。

「そうだけどさ…… 言ってくれてもいいのに」

「ごめんごめん。さあ行こうか」

どうにか修羅場は過ぎ去ったかな? では俺もそろそろお邪魔して。


「おーい一ノ瀬君! どこに行くのかな? 」

「今日は運が悪そうなのでお留守番しようかなと」

「いいから行くの! もしかして一ノ瀬君にきちんと伝えなかったの? 」

「それはマナの方でしょう? どうして素直に三人って伝えなかった訳? 」

うわ喧嘩寸前。不穏な空気。俺ではとても止められそうにない。


「待ってくれ五階さん! 初めから三人で? 」

「そう。マナに話したら自分も行くって。それなのに隠してたのよこの子は」

「いいでしょう? 言いそびれただけ。もう行こう。遅れる」

こうして三人でショッピングを楽しむことに…… 楽しめるか!

つい心の声が漏れてしまう。独り言を言うのが癖になってるんだよな。

よく妹からも指摘されてたっけ。

どうにか誤解は解けたらしい。でも本当に危なかった。修羅場ってあるんだな。


                 続く

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