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裸間ボッチ  作者: スカート保存委員会
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魔性の女

放課後の有野さんはウザいほどしつこく絡んでくる。

俺への想いを隠そうとしない不器用なところが何ともかわいいところ。

ついその場で抱きしめたくなるが他人の目があるからな。強引に行けない。


有野さんに買い物に誘われる。当然誘われて断るはずがない。

「仮に何かあっても無視して行きますよ」

適当なことを言うがどうせ何もないさ…… そうだったっけ?

何か忘れてるような…… 五階さんと買物。妹のプレゼントを一緒に見る予定。

でも来週だったような…… あれ違ったかな? まあいいか。


「本当に大丈夫? たとえばデートとか? 」

こっちの反応を窺うが動じないぞ。

「ははは…… 何を言い出すんですか? 俺は一人ですよ。いつでも一人」

情けないことを堂々と宣言する。しかも帰り道だから当然人もいる訳で。

恥ずかし過ぎるよな。どんだけ一人が染みついてるんだろう俺って? 

「そう。だったら決まり! もう変更しないよ」

笑顔でいたずらっぽく。そこがかわいい。もちろん分かってやってるのだろう。

うん。だってかわいいもん。


期待値を大幅に超え積極的な午後の有野さん。

俺なんかと休日を一緒に過ごしてくれるとはどれだけ優しいのだろう?

こっちは隠してることが山ほどあるのにな。俺を完全に信用しきっている。

こうして楽しく帰り道を歩く。


「ははは…… 」

「もう一ノ瀬君ったら」

他愛のない話で笑い合う。うん。悪くない関係だ。

「そうだ二つほど確認。何を買いに行くんですか? 」

まあ一応は聞いておくよな。それが礼儀だろう。準備もあるし。

「下着。それから靴下も。あとそれから…… 」

何てことを言うんだ? あまりにも無防備すぎる。爆弾発言なんてものじゃない。

危ない危ない。脳がイカレルところだった。


「あああ…… 有野さん? 」

「どうしたの? 」

「好きな色は? 」

「もうそればっかり…… ピンクがかわいいよね」

笑われたが怪しまれることはない。


「もう一つ。休日はどんな感じ? 」

「心配しないで。人の目がないからいつも通り」

派手ではないそう。と言いながら当日はどうか分からない。

それだけが心配だった。まあこれなら問題ないさ。


「じゃあね」

こうしてお隣へと帰って行った。

さあどうしようかな? 昨日の今日だからな。危険は冒せない。

約束の日までは大人しくしてよう。

こうして有野さんの秘密に探る壮大なプロジェクトは一時中断となった。


有野さん…… 多重人格なのは間違いない。それは本人だって自覚してるはずだ。

俺はどうすればいいだろうか? 変わらずに接しろと言うのか?

問題は人格ごとに記憶があるかないかだろう。

会話する限りありそう。覚えてるんだよな。でもそれってどう言うこと?

優しくしたい。助けてあげたいとそう思うけど実行は難しい。

学校ではほぼ無視されてる。それが帰り頃になると人が変わったように。

誰に相談すればいいんだ? もちろん俺の問題じゃないんだけど。 

でも有野さんと今後本格的にお付き合いするとなったらネックになる。

冗談じゃ済まされない有野さんの欠点。個性とも言えるがやはり無理がある。

俺たちが結婚まで行くのに立ちはだかるもの。


彼女はどう考えてるんだろう? 辛いとか? 苦しいとか?

どうも妹の和葉と重なる部分がある。もちろん和葉はそうではないが。

いつもこきを使って兄をまったく尊敬しない妹。

そんな和葉が時たま一か月に一回の頻度で優しくなる。

いい子になるのとは少し違う。逆にちょっと悪い子になる。

その時だけは俺を兄と言うよりは一人の男として見てくれる。


ううん? 和葉の話はこの際置いておくとして問題は有野さんだよな。

やっぱり相談してみるか。でも一体誰に? 大家さんはさすがにまずいよな。

でも五階さんでは違う気がする。ここはまったく別の人に話を聞くのがいい。

そう言う訳で翌日にショッピングモールの一角にある怪しげな占いハウスへ。


「ああいらっしゃい。また来たのかいあんた? 除霊希望なら今すぐは無理だよ。

予約がいるんだからね」

ガミガミとうるさい占いのお婆さん。それくらい注意書きに書いてあるっての。

「実は俺じゃなくて。この子なんです」

有野さんから直接だと疑われるので五階さんに話を通して借りて来た。

と言ってもただ欲しいと嘘を。事実欲しいので完全な嘘ではないが。


「ううんこれかい? 隠し撮りは犯罪だよ? 法律により…… 」

長々とどうでもいい忠告を受けるが俺は違う。そんな人間じゃない。

「いいから見てくださいよ! 」

「ああ憑りつかれてるね。それでこの子の除霊をしたいなら専門家を紹介するよ」

どうやら本気で何かに憑りつかれてるらしい。でもどうせ嘘だろう? 

金儲けはそれくらいにしてもらってさあ。


「何だ相談かい。それでこの子がどうしたって? 」

「お尻が…… 」

「はああ? お尻? 」

「違った。この子は恐らく多重人格なんです。

それで俺はどうすればいいか悩んでいて…… 」

「だったらきれいさっぱり忘れるんだね。傷は浅いうちがいい」

どうも勘違いしてる。忘れてどうする? でも多重人格はほぼ確定だからな。


「そうではなくこの子とどう接すればいいか教えてください」

「うーん。そう言われてもね。忘れるのが一番さ」

親身になってくれるのはいいがちっとも前に話が進まない。

どうして分かってくれないんだろう? 

「クラスメイトなんです。どうにかしたあげたくて」

「関わらない方がいいよ。男を騙す魔性の女だからね」

そのへんは大体予想通り。信じていいのやら悪いのやら?


「しかもお隣さんなんです」

情報をできる限り沢山与えて判断してもらう。

「お隣さんかい? それは難儀だね。でもできるだけ関わらない方がいいよ。

あんたの大切な者まで巻き込まれることになる」

そう言われては警戒するしかない。


「だからこの子が俺にとって大切な人なんですよ! 」

「もうダメのようだね。お前はもうダメだ! 」

悪口を言われてもう我慢の限界。

占い師は外れだったらしい。やっぱり先生にでも相談するかな。

担任なら適任だろう。

ただ俺の話を真面目に聞くかどうか。

しかもこれはプライベートなこと。

有野さん本人の許可がいるよな。うーんどうしよう?


                 続く

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