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裸間ボッチ  作者: スカート保存委員会
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疑い

翌日。

目の前には脅迫者の姿があった。

ただ笑っているのに優しく微笑んでるだけなの俺にはそう見えるから不思議だ。

それは昨晩のことは知ってるぞと言う警告の笑みなのか。

気にしなくていいと言う余裕の笑みなのか。

ちょっとの違いで俺の立場が危うくなっていく。


「どうしたの? ほら汗かいてるみたいだよ」

有野さんはいつもと変わらない。朝は優しく気遣い世話を焼くお姉さんタイプへ。

これは起きた時にはもうそうなのかそれとも家を出た瞬間に切り替わるのか。

まあ実際どっちでも構わないのだが昨日と今日ではまったく違う。全然違う。

おかしなものだ。俺に余裕がないからな。


どうやら一昨日のことは五階さんから聞いて機嫌を直したのだろう。

だとするとまだ気づいてない? 昨晩のことは見えなかった?

てっきりわざとかとも思ったがあり得ないか。

そんなことする人間はいない。女神様なら別だが。


「ほら遅刻するよ」

そう言って先に行ってしまう。

俺が難しい顔をしてるから遠慮したのだろう。

だが考えてることは一つしかない。今日はどんなものを穿いてるのかな?

もうそれしか頭にはない。


「ねえ有野さんのは何色…… 好き? 」

まずいまずい。おかしなことを聞こうとしてしまった。

俺は自分がどうかなったんじゃないかと思っている。

「ふふふ…… 何それ? 行こう」


相変わらず教室では言葉を交わすことはない。

俺たちの関係が知れ渡たれば有野さんが困るからな。


うわあ! またやってしまった。

つい消しゴムをコロコロさせてしまう。どうしてこういつも落とすかな?

自分が凄く情けなく思えてくる。案の定有野さんの横に転がしてしまう。

わざとではない。そんなコミュニケーションの取り方してどうする?

俺たちはそんなことしなくても繋がってるんだぞ。

ただ俺たちの関係が分かりにくくなっているのも事実。

そうなったのは何も俺だけのせいではない。


五階さんも含めて奇妙な隣人関係が続いている。

解放されるには引っ越すぐらいしか手がない。

でもお互い依存し合ってるからな。そうも行かないだろう。

と勝手に思ってる。


「おいおいまた一ノ瀬がわざと転がしてるぜ。懲りねえなあいつはよ! 」

「ははは…… 放っておけって。なあそうだろう? 」

「もう病気だから相手にしてやるな」

ヒソヒソ話で俺のことを馬鹿にする後ろの男三人組。

別にわざとではないんだけどな。たまたま偶然と言うだけ。

どうしてこうも僻むんだ。俺が積極的なだけだろう? 

言ってやりたいが無視だ。無駄なことはしない主義なのさ。


それにしてもやっぱりこのままにはしておけないよな。どうしよう?

教師は現在後ろを向いて黒板に集中している。

真面目に授業を受けてる奴もこちらに気を取られることはない。

要するに俺の動きをいちいち観察してるのは集中力のない落ちこぼれと言う訳だ。

まあ人のことは言えないが。


有野さんを見つめる。彼女も真面目だからきちんと前を向いている。

少しは俺のことを気にしてるのか反応があった。

しかし気づいたはずなのに無視。まるで俺は存在しないかのよう。

それはないよ。早く目の前の消しゴムを取ってくれないと。

こっちは集中できないだろう? どうであれ今の有野さんは当てにならない。


ここは授業が終わるまで我慢するか。そういつまでも同じ失敗を繰り返すものか。

うんそうだよな。ここで動けばまた同じ過ちを繰り返すことになる。

俺は成長する人間さ。舐めてもらっては困る。

でもただ待ってるのも芸がない。


「先生! トイレに! 」

立ち上がると急いで廊下の方へ。まっすぐに有野さんの席に行き落とし物を拾う。

無言で周りに確認。当然誰も落としてない。だから俺が自然に手に入れる。

「おい一ノ瀬! ノロノロするな! 」

ゆっくりしてるので急かされる。

「いやそんなに急かされると漏れますって」

ははは…… 

ハプニングで皆が大笑い。

教師は弛んでると説教を開始する。

俺はその隙にトイレへ。


別に本当にトイレに行きたいのではない。

ただ消しゴムを拾うのに言い訳が必要だったからな。

セーフ! どうにか怪しまれずに消しゴムを回収。

あーあ本当だったら有野さんに取ってもらいたかったな。


休み時間。トイレに行くと怪しまれてしまう。

「あれ…… お前さっき抜け出してトイレ行ってたよな? またって本気かよ?」

疑いの目をむけられてしまう。

「あの時は本当に我慢できなくて…… 」

下手な言い訳をする。こいつら一体どう言うつもりだ?

例の頭の悪い三人組が絡んでくる。


「お前やっぱり有野に気があるんだろう? 今だって無理やり消しゴムを投げて」

「そうそう。はっきり言って迷惑なんだよね」

最近一人ぼっちになることはあまりなくなった。無視されることも少なくなった。

「悪いとは思ってる。でもすべて不可抗力なんだ。許して欲しい」

ただ消しゴムのことしか考えていない。

他のことは本当にどうでもいいと。

「ダメだね! 俺たちはクラスの代表としてお前に文句を言ってるんだ。

今度やったらタダじゃ置かないからな? 今日はこれくらいで勘弁してやる。

よし行こうぜお前ら! 」

暴力は振るわれずに忠告だけ。まあこれくらいどうと言うことはないか。

やっぱりこいつら警戒してるんだろうな。あるいは嫉妬してるのか?

どうであれ有野さんはお前らみたいなのには関心を示さないさ。


さあ二度目のトイレと行きましょうか。我慢してると何度も行きたくなる。

おかしな現象もあるものだ。

警戒しなくちゃな。

今回のことにしても些細なこととせず気を引き締める必要がある。


                    続く

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