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裸間ボッチ  作者: スカート保存委員会
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お誘い

中間テストに突入。

俺にとっては初めてのテストだから皆以上に緊張する。

もちろん前の学校で試験を受けていたのでそこは問題ない。

ただ妙に緊張してしまう。それには別の理由もある。


「一ノ瀬君また落としたよ」

休み時間まで待ったかいがあった。有野さんは笑顔だ。

テストの時は人が変わったように気遣いのできる有野さん。

やはりいつもは聞こえなかっただけ。

音楽を聴き過ぎて耳が悪くなったんだろう。

俺もたまにそう言うことがあるから気をつけている。

でもどちらかと言うと目だよな。視力がどうも最近よくない。

どうもピントが合わないと言うかぼやける。これ以上悪化しないといいが。

自然治癒すれば最高だけどやっぱり医者行くかな。

目の不調が悩みの種の一つでもある。でも一番はやはりクラスに馴染めないこと。

それを救ってくれたのが有野さん。そして俺たちはいつか……


有野さんも罪な人だよな。

耳がよくないなら遠慮せずに言ってくれればいいのに。

若年性難聴を発症する前に医者に行くことをお勧めする。

そう妄想。きっと彼女も素直に従ってくれるはず。


「ちょっとありちゃんが拾ってあげたんだから感謝の一言ぐらい言ったら? 」

余計なのが二人の邪魔をする。でも逆にアシストしてるのか?

「ありがとう有野さん。いつも悪い。それで…… 」

「はいはい! 邪魔だから行って! 」

邪険に扱われる。そして鋭い目で睨みつける。

突然態度が変わった有野さん。やはり他の子がいる前では仕方ないのか。

でもちょと待ってくれよ。

俺はただ感謝の言葉を述べただけでそれ以上でもそれ以下でもない。


「いいからあんた早く自分の席に戻りなさいよ! 」

不機嫌な女子はクラスの雰囲気に呑まれたと言うよりただうっとうしいから。

だったらまだどうにかなる。クラスで孤立せずに済む。

これ以上よそのクラスへの移動も転校も嫌だ。ここでどうにかしたい。

母さんにも悪いしな。このままだとかわいい妹にまで迷惑が掛かる。

それからたぶん大家さんにも。

せっかく安くしてもらえたのに引っ越したら大損だ。

大人しく言うことを聞くことに。


それからのテストでは気分もよく消しゴムを落とすことはなかった。

当然それでテストがよくなったり悪くなったりすることはないが。

テスト期間中は何だか楽でいいな。

うるさいのが騒がないし一人で静かにしていても問題ないから本当に楽でいい。

ずっとテストだったらいいんだけどなと本気で思うことも。

俺ってやっぱりどこかおかしいのかな?


明日で中間テストも終わり。

得意の英語で点数を伸ばして苦手の数学を補えればな。

そうすると合計点が平均よりちょっと上に躍り出るはずだ。

得意科目があると何かとやり易い。

ただ俺にとって一番の問題は集中力だと思う。

消しゴムや机の上のものを気にするあまりどうしたって集中できない。

そうなると時間がなくなり適当に答案用紙を埋めることになる。

大体いつもこのパターン。実力の七割が発揮できれれば成功かな。


何だかんだやっぱりテストは苦手だよな。緊張して汗もかくしね。

そもそも授業でも聞いてはいるが集中できてない。と言うより入って来ない。

きちんと先生の話を聞いてノートを取って復習すればいいんだけど。

それが面倒臭いから得意の英語でさえ怪しい。

その他の科目になればつまらなくて寝てしまうことも。特に午後の授業。

当然注意を受けるが一向に改善されない。こんな時だけは目立つんだよな。


「ねえ一緒に帰ろうか」

有野さんの席の前まで行くと何とお誘いがある。

まさかの幻聴? いやそんなはずはない。俺は誘われたんだ。

嫌われてなかったんだ。当然嫌われるようなことをした覚えはない。

ちょっと消しゴムを転がして迷惑を掛けただけ。実際よくあること。

とは言えこの変わりようは少々おかしい。警戒した方がいい?

いやもっとポジティブに考えよう。ようやく自分を理解してくれた。

何てことだろう? テストが終わった解放感から抵抗意識が薄れた?

それはそれは素晴らしいこと。

テストはまだあと一日あるけどいいよね?


「俺…… 」

情けないことにそこで止まってしまう。

もちろん嬉しいし誘いに応じたい。でもこれが限界。

応じないにしても謝罪ぐらいすればいいのに止まってしまう。

緊張で胸のドキドキが止まらない。


「どうしたの? 一緒にさあ? 」

積極的過ぎる有野さん。ああこの瞬間をどれだけ思い描いたか?

分からないだろう? 分かるはずがないんだ。

おっと…… あまりの嬉しさにおかしくなるところだった。


「有野さん俺…… 」

「分かった。付き合うよ」

うん? うん?

一体何が起きた? どうして皆自然なんだ?

有野さんは行ってしまった。いつもの仲間と?

そうか。てっきり俺を誘ったものだと思ったが違ったらしい。

そう言えば有野さんはこっちを見てなかった。

ただ友だちを誘っていただけ。危ない危ない。危うく返事するところだった。

俺が冷静に判断したから回避できたが恥を掻くところだった。

それどころか先生からまた叱られる。

くそ…… やっぱり俺は寂しく一人で帰るしかないのか?

それが俺の運命なら受け入れるとしよう。


翌日。

「終わった! 」

鐘が鳴ると一斉に終わったと叫ぶ者。

果たしてどっちの意味で終わったなのだろうか?

俺は今回は散々だったので本当に終わった。

どうであれ中間テストはこれで終了。

またいつもの日常に戻る。


               続く

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