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裸間ボッチ  作者: スカート保存委員会
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言い間違い

昼休み。

有野さんの親友で隣人の五階さんとお話し中。

「一ノ瀬君にはちょっとだけ」

そう言うと耳打ちする。

ああ何て気持ちいのだろう? つい感じてしまう。

だがもちろんそんな変態だとは思われたくないので大人しくしてる。


「いやいやだからあり得ないって! 気に入ってるのはご近所で都合がいいから。

俺みたいな人間に興味を持つわけないだろう? 」

充分と言うほど分かっている。俺が女に興味を持たれる訳ない。

ましてや好きとか嫌いとかの対象になることもない。ただ存在するだけ。

いたの? と思われるだけの存在。それが俺なのだ。自覚はあるんだ。


大体有野さんってば教室では常に睨んでるからな。嫌いなんじゃない?

まあ大概のクラスの女子は睨みまではしないが話しかけても反応しない。

消しゴムコロコロ事件を起こし警戒されてる面もある。

例外もなくはないが目立ちはしない。


結局は一人ぼっちなのさ。存在を認められることはない。

それが俺と言う人間。

これ以上俺を惑わすのはやめて欲しい。ただそれを五階さんに言ってもな。

いくら同じお隣さんでも事情が違うからな。どうも伝えづらい。


「有野さんとは親友なんだよね? 」

つい上から言ってしまう。でも本来そんな立場にない。

それでも真面目だから答えてくれる。

「ええ私たちは仲間かな。悪仲間と言ってもいい」

大胆発言をする五階さん。まさか冗談だろう。

一体どんな悪さをしてると言うんだ? 想像もできないししたくもない。

男を手玉にとってポイと捨てるとか? やってそうだが偏見だろう?

まさか次のターゲットは俺ってことはないよね?


「もう行かないと」

「そう。最後にこれだけは伝えておくね。君がどう思おうとマナはマナ。

ただ人が変わることがある。それは私も認めてるところ。

でも私だって朝は弱いし夜だって全然違う顔を持ってる。

それが知りたくなったらいつでも来てね」

どうやらお誘いのようだがやっぱりこれもただ俺をからかってるだけ。

そう見えるし実際そうとしか思えないのが彼女たち。


ははは…… 人間がそう簡単に変わるはずがないだろう。

だからって恐れてる訳ではない。俺は情けないがチキン野郎ではない。

危険だからって逃げるつもりはない。

もしこれが正式な招待であるならば俺は受けようと思う。

でもその時は五階さんではなく有野さんから招待を受けたいな。

贅沢な願いだがそれでも譲れないものがある。


モヤモヤした中での帰り道。

午後の授業は五階さんの話で頭が一杯で何をしたかまったく覚えてない。

フォゲット…… ああそうだ英語だったな。それから何だったけ?

ちっとも思い出せない。


「一ノ瀬君。帰ろう! 」

どこからとも現れる放課後の彼女。

「ああ…… 五階さん…… のお友だちの有野さん」

まずい。間違いた上に酷い扱いをしてしまったような気がする。 

「そうなんだ…… 」

見る見るうちに笑顔が消え落ち込んでしまう有野さん。

おいおいこれくらいでどうしてそうなる?

俺なんか学校では無視されて嫌われて笑われてるんだぞ?

主に自分に問題がある場合がほとんどだけど。


「ごめん。つい五階さんのことが気になって」

違う。正確には五階さんが言ったことが気になってるだけ。

決して好きとか恋煩いではない。

「知らない! 一ノ瀬君なんか知らない! 」

うわ…… いつも学校で言われる悪口よりも破壊力がある。凄くショックだ。


「有野さん? 」

「もうクラスで孤立しても助けてあげないんだから! 」

「いや待ってくれ! それだけは頼みます。頼れるのは有野さんだけ。

俺の女神様はいつだって有野さんだけなんだ! 」

どさくさで何を言ってるんだろう? これではまるで愛の告白。

もう有野さんを直視できない。


「訂正させて! 五階さんはもちろん誤解。それでいて女神様発言も撤回するよ。

そこまで本気で思ってないから」

おかしな言い訳に終始する。いやでも誤解を解いておかないとな。

嫌われたらお終い。学校生活もご近所付き合いも最悪なものに。

二か月前ならそれでも良かった。でも今はそれは拷問に近い。

再び大家さんとのやり取りで日々を消費していくことになる。

大家さんが悪いとかでは決してない。でも元にはやっぱりもう戻りたくない。


それに大家さんってばどこか変だし。

深い闇のようなものを感じる。まさか俺狙われてるのか?

特に歓迎会が終わってからどうも様子が変だ。

何だかんだ理由をつけて俺の部屋に上がり込もうとするし。

まあ俺が有野さんにかまけて相手にしない部分も多少あったのかな?

それだったら悪い気もする。だって俺のせいだし。


「面白いね一ノ瀬君も。大丈夫これくらいで怒ったりしないから」

そう言って手を繋ごうとする多重人格の有野さん。

「ねえ嬉しい? 」

「はい! 凄く嬉しいです! 」

「もう一ノ瀬君は正直だから。お隣の子がちょっかい出したでいいのかな? 」

笑顔でふざけてるようにしか見えないがきっと怒ってる。物凄く傷ついている。

五階さんとの友情にまで亀裂が入る事態に。

俺のせいでそうなっては居たたまれないし申し訳ない。


「ねえどこに行こうか? 」

まっすぐ帰ることを許さない有野さん。俺は言われるままに付いて行く。

何だか凄く情けない気がする。でも待てよ。彼女は俺を気に入ってくれてる。

二人っきりでデートのようなことをしている。

だったら今こそ恋人っぽいことをしてもいいのでは?


「どう美味しい? 」

どこにでもある熱々のたこ焼きを一緒に摘まむ。

うん美味いし幸せだ。こんな日が続けばどれだけいいか。

たぶんそれは不可能なのだろうけど。


間もなく俺の株価は暴落するだろう。いや元々底をついていた気もする。


                 続く

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