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裸間ボッチ  作者: スカート保存委員会
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特別な存在

えへへへ…… やっぱり緑先生はかわいいよな。

憧れると言うか付き合いたいなと思っている。

でもその感情を表に出せば嫌われること間違いなし。

それではバカな男どもと変わらない。俺も男だけど奴らからの扱いは酷いからな。

あいつらとは一緒にされたくない。


緑先生が去り一人ぼうっとしてると五階さんが姿を見せる。

ヘラヘラしていると睨んで来た。

いや違いますよ。俺はただ美味い弁当に満足してたんですよ。

緑先生に現を抜かしていたのでは決してない。


「どうだった? 」

すぐに怒りは消え恥ずかしそうに下を向く。

「うん。やっぱり五階さんは上手だね。俺では無理だわ」

感想聞かれたので凄く美味しいと答える。事実なので仕方がない。

もう少しまずければお世辞に取れるけど彼女の作ったものは最高。外れがない。

歓迎会でもその実力を遺憾なく発揮した。大げさかな?


「そう…… だったら明日からも作ってあげようか」

五階さんは世話を焼きたがる。一回きりかと思われたが継続OKらしい。

あのスーパーサブと別れてから元気がなかったがもう大丈夫。完全復活。

「悪いよ五階さん…… 」

もちろん本気じゃない。できるなら作ってもらいたいのが本音。

でもあまりにも図々しいので言えない。言える訳がない。

間違って想いまで伝えかねない勢い。危ない危ない。俺は有野さん一筋だ。

学校ではね。でも本当のところよく分からない。


「ついでだから気にしないで。それにこれから迷惑を掛けることになるだろうし」

自分はこれくらいしかできないと付け加える。

おかしいな。迷惑掛けるのは俺のはず。思いっきり掛ける自信がある。

あの優秀な五階さんが? 何を言ってるんだ? あり得ない。

多重人格気味の有野さんならいざ知らず五階さんがそんなはずない。


「ありがとう五階さん。俺としても助かるよ。へへへ…… 昼が待ち遠しいな」

こうは言うが食費とかがあるからな。ずっとと言う訳にはいかない。

今年いっぱいぐらいがベストかな。

「ふふふ…… でも絶対にマナには言わないでよ。怒られるのはたぶん私だから」

笑って返すがどうやら本気らしい。もちろん心得てる。その可能性も若干あるさ。

でも有野さんがそんなタイプでもなければ俺なんかに嫉妬するはずがない。

彼女はクラスで三番手なのだから。格好いい男をいくらだって釣り放題。

あのルックスなら大丈夫でしょう。ただ多重人格なのが気になるが。

今は新鮮で物珍しいから俺に構ってるが時が経てばもう……


「あのさ…… 」

知り合って半年以上の関係。絶対有野さんの秘密を知っているはず。

ただのかわいらしい女の子でもないだろう?

「ああマナのあれね。でも気にしない方がいい。

女は人によって態度も性格もがらりと変えるもの。

一ノ瀬君も知ってるでしょう? 私だって付き合ってた頃には変えてたから」

うーん。それを言われると納得するしかない。


「でも…… 有野さんの場合はそれと違う気がする。とても心配になるレベル」

つい自分でも我慢しきれなくなる。どうしたんだろうか?

踏み越えてはいけないプライベート。それなのに俺は土足で踏み入ろうとする。

「ふふふ…… 私だって朝は弱いから機嫌悪いよ。目つきだって悪いんだから」

お嬢様が何をおっしゃいますか。麗しき令嬢にしか見えませんよ。

こんな風に言えば本気にしそう。


「そうかな? 有野さんは特別な気がする。何て言うか特別…… 」

「特別な存在? 一ノ瀬君にとってマナは特別なの? 」

笑っているところを見ると本気ではないらしい。

でもそう言われれば俺は有野さんに惹かれている気がする。

もちろん五階さんだって魅力的。二番手でキープしておきたいが偽らざる気持ち。

だが言えば…… どうなるんだろう? 最低とビンタを喰らい弁当もダメに。


「どうなの一ノ瀬君? 」

どうして女子はそんな恋愛の話ばかりするんだ? 持って行き方が強引。

俺が誰を好きだろうと構わないじゃないか。

それを伝えれば有野さんだけでなく五階さんにまで軽蔑されるだろうな。

「分かりません」

魔法の言葉で逃げる。

うんこの言葉を多用すると不快に思われるが一回だけ大事な場面だと有効らしい。

「そうだね。でもまだ二人の仲に付け入る隙があるみたい」

五階さんはまたふざける。


彼女の言葉を真に受ければ俺に気があることになる。まさかそんな単純なものか。

恐らくからかいたくて仕方ないのだろう。それこそ有野さんだってそう。

俺は確かに有野さんには特別な感情がある。

だからと言って付き合いたいとか一緒に帰りたいとか。

お部屋を覗いてみたいとか一緒に旅行がしたいとかそんな不純な男じゃない。

古臭くて昔ながらで悪いが軟派でなく硬派なのだ。

だから本来女子と校内で口を利くことなどあり得ない。

それどころかクラスメイトとさえロクに口を利かない。

それが俺と言う人間だ。軽蔑してもらって構わないんだぜ。

孤独な一人ぼっちの転校生。それが一ノ瀬晶。

自分を自分で客観視するのは無理だがそれでも分かった気にはなる。


「戻ろうか? これ以上一緒にいると怪しまれる」

誰にと言えばクラスメイト。

具体的に言えば有野さんだがもうそろそろ飽きた頃だろう。

ただお隣と言うだけで俺とは本当の意味で友だちになった訳ではない。

こうなれば彼女の気持ちが離れる前に俺が決着つけるしかない。

このままずるずると関係を引き延ばしても互いに辛いだけ。

たぶんあっちは何とも思ってない。これは恐らくそう言うパターン。



                 続く

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