表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
裸間ボッチ  作者: スカート保存委員会
24/80

歓迎会スタート

歓迎会はスタートからつまずく。

大家さんが口にしたサトルの件により一瞬で凍り付く。

三人とも触れて欲しくないらしい。


「そうだ。あんたのところに忘れ物はないかい?

急なことで大慌てで引っ越したから。そのままにしているから何かあれば言いな」

どうやら大家さんは納得が行ってないらしい。まだ拘っている。

「もう大家さんってば」

余計なことを言うなと注意を受ける。

有野さんよりも五階さんの方が慌てている様子。

これだと原因は五階さんの方にあるのかな?

それとも単に変な噂を立てられたくないから? 

政治家の娘だからな。その辺のことは警戒してるのだろうか?

後で有野さんから聞けば意外と話してくれるかもな。

もちろんタイミングが重要だが。


気を取り直して一品目へ。

「ほらビーフシチューができましたよ」

料理上手の五階さんの一品。

ヨーロッパの有名なブランドのお皿を使う。贅沢な一品だ。

まずはお皿からと言って雰囲気は出てる。

「どう? 昨夜から煮込んだのを持って来たんだけど? 」

味を聞いてるらしいのだがどうも一般的なものとは随分違うな。

何か忘れてないか? 決定的に何か違う。それが気になる。

だからうまいともまずいとも言えない。


「ビーフシチュー? 」

聞き返す。一番やってはいけないこと。素直に美味しいと褒めればいいんだが。

これでは無神経な大家さんが指摘した時にまずい展開になってしまう。

「ビーフシチューでしょう? 」

「でも何か違うんだよな…… 何だろう? 」

「ああごめん。ビーフが高かったからブタにしてみた。

これもアレンジ。それからワインは高いからぶどうジュースで代用」

政治家の娘で金持ちなのに節約志向の庶民感覚が植え付けられている。

立派だが本当にこれでいいのか?


パンは食パンを使用。フランスパンでいいだろう?

これで口当たりが少しはよくなるそう。

クラッカーにイクラやチーズを乗せたカナッペも立食パーティーっぽくていい。

サラダはイカとタコを使ったシーフードサラダ。貝が少しだけ。


続いて二品目は鳥の丸焼き。これは有野さんが用意したもの。

「うん! うまいよ! 凄く柔らかい」

「そうかい。どうしてもこの鳥の食感が苦手で。ほら私の分もやるよ」

そう言いながら焦げ目のついた皮のところを食ってしまう。

大家さんは美味しいところだけ食べ残りを寄越すと言う禁じ手に出たのだった。

「遠慮します」


続いてウナギの登場。

うわ豪勢。

「うん? これってナス? 鶏? 」

予算の関係ででウナギのかば焼きは諦めてナスと鶏を使ったウナギのかば焼き風。

これでごはんにタレを掛ければうな丼? 

何だか涙が出そうだ。もしかして五階さんのお嬢様は噂に過ぎないのでは?

せっかくの歓迎会が偽物と代用品では残念に思える。俺ってそんなもの?

まさか軽く扱われているのか?


「ねえ有野さん」

こっそり聞いてみる。よく考えれば有野さんからの情報。

間違ってる恐れも充分にあるのだ。

「ちょっと一ノ瀬君。疑っちゃ可哀想だよ。パピヨンはお嬢様だって。ねえ? 」

有野さんは馬鹿正直に聞いてしまう。これではコソコソしていた意味がない。

ここからも有野さんが隠しごとが苦手なのが分かる。

うん。やっぱりかわいいな。


「もう一ノ瀬君ってば私のこと疑ってるの? 」

一瞬豪勢な料理が代用品だからそう思うのは当然だろう? でもそうは言えない。

「もちろんその気品と美しさは疑いようがありませんが」

一応はフォローしておく。そうすると有野さんが睨みつける。

「もちろん有野さんの方が…… ごめん三番手だった」

「ちょっと一ノ瀬君! 」

「済みません有野さん。冗談ですから」

「もう! 」

「若い人はいいねえ。うんうん。美味いね。これこそがウナギだよ」

どうやら大家さんはウナギのかば焼き風で満足してるようだ。

「もっとどうぞ」

「俺のもやるよ! 」

「まったく贅沢だね。これは本物のかば焼きさ」

どうやらこの手の創作料理には懐かしさを感じるらしい。

このまま昔話が始まるのかな?


「そうだ。歓迎会だし意味あることをしようじゃないか」

積極的な大家さん。

「よしお前の名前何だったっけ? 」

歓迎会の主役の名前を忘れないで欲しいな。

「一ノ瀬ですよ。忘れたんですか? 」

「違う! 下の名前だろうが! 」

「ああ。晶です。一ノ瀬晶です」

改めて自己紹介をする。

すると拍手が起こる。悪くない。


「だったら晶でいいかい? それとも他に候補は? 」

「はーい。一ノ瀬君は一人なので一さんではどうでしょうか? 」

有野さんがふざける。

「いや晶でいいっすよ。どうぞ晶って呼んでください」

せっかくなので二人の呼び方も決めることに。

「マナはマナでいいんじゃない? 」

「はあではマナさんで」

さすがに呼び捨てはやりにくい。たぶん有野さんのままだろうが。


「だったら五階さんはパピヨンで統一と」

有野さんが勝手に。

「ええっ? パピヨンはあまりにも直接的過ぎるよ」

却下される。

「だったらシラベエでいいんじゃない? 」

「ふざけないで! チョウにしてってば! 」

どうやらそのままチョウがいいらしい。

チョウではなく調なんだけど分かりやすくチョウにしている。

「だったらチョウちゃんでいいね? 

大家さんが勝手に決める。文句は特にない。

最後に大家さんだがそのまま大家さんで決定。それが一番呼びやすいから。

大体年上のお婆さんにあだ名はまずいよな。


「よしそろそろメインディッシュに行こうかね」

なぜか仕切り始める大家さん。

最後はそろそろシーズンになる頃。鍋だ。本来ならこれだけで充分のはず。

ただ鍋パーティーだけでは物足りないと。だから趣向を凝らすことに。


さあそろそろメインイベントを開始しましょうか。


                   続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ