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裸間ボッチ  作者: スカート保存委員会
20/62

タンクトップ

「あれまあ二人でお帰りかい? 」

水撒き中の大家さん。

いつも通りジャンプするように仕向ける。

危ない婆さんだな? 濡れたらどうするんだよ?

仕方なくいつもの失敗ジャンプを披露。

うわ…… 冷たい。

満足したのか笑顔の大家さん。俺はどんな扱いだよ?


「お帰り。今日はどうだった? また先生に叱られたかい?

もう今度は変なことするんじゃないよ。いいね? 」

まるで俺の学校での評判を知っているかのような物言い。当然分かるはずがない。

母さんだって自分の息子を悪く言うはずがない。自慢の息子だからな。

恐らく…… いや絶対に見た目で判断している。

「ははは…… 俺はそんな人間じゃありませんよ」

有野さんと一緒だと何かとやり辛い。何と言ってもその被害者だからな。

でも本当に何で知ってるんだろう? つまらない噂話を真に受けないでくれよ。


「ほら…… 」

あれ肘打ちされてるぞ? まさか大家さんに今言えと。

でもなぜ俺が? 歓迎会って俺の為でしょう? 普通本人からは言わないよ。

だから有野さんが。または五階さんでもいい。

でも肘打ちを続けるものだから振り返ると危うくエルボーを喰らうところだった。

俺何かしましたか? それは確かに酷いこともいっぱい。

有野さんは怒ってなかったけど他の子とお喋りだって。

まあ怒るのも無理ないけど。わざと肘を入れるのはなしで。暴力的でいけない。


仕方なく自分の歓迎会に誘うことに。

何でも自分でやりたいしやらなければとは思うけどこれはさすがに違うよね?

「ああいいよ。今週だね? だったら問題ない」

大家さんは楽しそうだと張り切っている。でもここは断るのが大人の礼儀では?

誘うのはあくまで社交辞令だろう? 若い者だけでおやりと促すのが役目のはず。

違うのか? まったくそんなことにも考えが及ばないのか?


「じゃあまた」

隣の有野さんとはまだ付き合ってない。友だちかと言われたらそうでもない。

ご近所のクラスメイト。あっちだってきっとそう思ってるに違いない。

今は出会ったばかりで浮かれてるだけ。落ち着けばきっと俺なんか……

でもご近所は大切だからな。ご近所トラブルなど御免。


そのお隣さんは戻っていくが意外にも遠いよう。

俺はこの幅跳びゾーンからしか家に入れない。

もちろん裏口もあるにはあるが道路にはつながっていない。

それは有野さんも似たようなものだと言う。有野さんの出入り口も一つ。

この通りを曲がったところで大きな荷物で塞がっていて通れないそう。

だからもう一つ先の通りを曲がって少し戻る。

手間の掛かる特に真夏や真冬はやってられないそう。

ただそこまで行き来するほどでない限り問題ないが。

それは逆隣りも似たようなものだそう。

うーん。安さに釣られてとんでもないところに来てしまったか?

まあいいさ。どうせ俺は一人ぼっちなのだから。悩むことはない。

おひとり様生活をエンジョイしようじゃないか。


金曜日。母さんからの電話。歓迎会には行けそうにないと。

父さんと久しぶりに旅行することを忘れていたらしい。

誰も誘ってないと言うが有野さんからだそう。

息子の歓迎会に来る親がどこにいる? 

さすがに母さんが参加すると何かとやり辛い。いろいろあるだろうから。

もちろんそこまで期待してないが。


「本当に大丈夫? 女の子だけで? 」

うわ…… 何を言ってるんだよ? 息子を信じないでどうする?

俺はそんな人間じゃない。息子の息子が暴走でもしない限り安全だ。

ただ最近暴走気味だから困ってるんだよな。

「心配しなくていい。大家さんも招待してるから」

「そう。だったら安心。それから来月には和葉がお邪魔するって。また掛けます」

そう言って勝手に切ってしまった。

まったく息子を全然信用してないんだから。


ピンポーン! ピンポーン!

こんな夜中に非常識なことをするのは大家さん?

「有野さん? そんな格好でどうしたんですか? 」

タンクトップにショートパンツ。

丸っきり夏の格好じゃないか? つい凝視してしまう。目の毒だ。

「ごめんなさい。実は料理が爆発しちゃって。それで部屋がぐちゃぐちゃに。

だから悪いんだけど一ノ瀬君の部屋を使わせてくれない? 」

どうやら五階さんに張り合おうと無理をしたらしい。もう困った人だな。

ははは…… 有野さんにはそう言うおっちょこちょいなところがあるよね。

真夜中にこうまでされたら俺も断れない。悪いと思っていたんだ。

部屋ぐらい自由に使わせてあげよう。何と言っても俺の為。

こうして歓迎会の場所が俺の部屋に変更された。

母さんが片づけてくれたのでまだ今のところ悪化はしてない。

だから一時間もあればきれいさっぱり。


土曜日。

部屋を明け渡して頼まれていた買い物を済ましショッピングモールをうろつく。

時間の関係もあって歓迎会は昼から夜へと変更になった。

だからって何かが変わると言うこともない。至って普通だ。


「そこの人…… おいそこのあんた! 」

トボトボ歩いてると引き留められる。

「俺? 俺ですか? 」

おかしな勧誘にでも引っ掛ったかな?

「そうだ。どうもあんたにはよくない気が」

そう言って脅すどうしようもない人間。一体何だと言うのだろう?

迷惑でしかない。


「私は高名な占い師。あんたにはよくないものがついている」

どうやらただの詐欺師ではなく占い師のようだ。

そう言えば女難の相があるか気になっていたんだよね。とりあえず聞いてみるか。

どうも無料で占ってくれるらしい。これは何か買わせるつもりだな。

気をつけなければいけない。

でも俺なんかより騙しやす奴はいくらでも転がっているのにな。

もしかして本当の本当なのか?


「気がついてるようだがお主には女難の相が見える。

しかも相当だぞ。今すぐに別れるのじゃ! 分かったな? 」

心配性の無料占い師のお節介。とりあえず詳しい話だけでも聞く。


                続く

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