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裸間ボッチ  作者: スカート保存委員会
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五階さん

有野さんに言われるまま通り道にあるショッピングモールへと向かう。

俺も一週間の半分は利用している。大体が本屋で立ち読みと言うか座り読み。

それとフードコートで軽食。


「だから誤解される…… 」

「誤解なのかな? 私は楽しいよ」

ダメだ。話にならない。この人多重人格過ぎるよ。男は大変だな。

まずは本屋でじっくり楽しむ。

「ダイエットですか? スタイルいいのに」

雑誌とダイエット本を漁り満足そう。


「これ付き合ってくれたお礼」

そう言って持ってきたのは高校生には相応しくない雑誌。

「いやいらないって。頼みますよ有野さん。俺はそんな趣味ありませんって」

「ほら恥ずかしがらない! 遠慮もしない! コレクションにどうぞ」

それならありがたく…… 店員の目が無茶苦茶気になる。

ここを見られたらまた呼び出しを喰らうぞ。


「ありがとうございます」

結局断り切れずにお礼を受け取ってしまう。

こいつは中学生のガキかよ? どんどん幻想が崩れていく気がする。

俺としては何も知らない純粋無垢な女神像を描いていた。

これではまるっきりの反対。あからさまと言うかおおらかと言うか。

とにかく有野さんは大胆なんだよね。普段の学校での振る舞いとまるっきり違う。

弾けてどうにかなってしまったかのよう。


「もしかして兄弟がいるとか? 」

これならどうにか理解できる。彼女のしつこさも少々理解できる。

ウザ過ぎるもんな。恐らく兄ちゃんだな。しかもかなり近めの。

「ううん。お姉ちゃんと二人っきり」

「へええ…… それはきれいなお姉さんなんですね」

「うん。次会ったらやらせてあげるか聞いてみるね」

何を言ってるんだろうこの子は? おかしくなっちまったか?

理想像とはどんどんかけ離れていく。


「遠慮します! 」

「もう遠慮しないでよ。でもその代わり妹さんも連れてきてね」

「あれ? 妹の話しましたっけ? 」

確かに俺には一個下の妹がいる。

俺を尊敬してる気配はなくしかもお兄ちゃんと呼ばれたことは数える程度。

いつも常にあきらだからな。それでも俺たちは仲がいい方だ。

中学までは一緒によく遊んだ。そのせいか男どもがあまり寄り付かない。

そのまま孤立していき高校に入ると余計に孤立しコロコロ事件が発生。

そして現在に至ると言う訳だ。


「お母様から」

「そう言えば母さんは何で有野さんのことを隠していたんだろう? 」

「知ったら勉強が疎かになるからでしょう」

また適当なことを言う。俺が有野さんが隣だと知ったところで大して変わらない。

ちょっと眠れなくなる程度だろう。

「まあいいや。そう言うことで。でも何だか秘密を握られてるようで嫌だな」

「秘密…… 一ノ瀬君も人には知られたくない秘密があるの? 」

この時だけは真剣になるんだよね。一体どれだけの秘密があると言うんだろう。

得体が知れない。でも俺も男だから有野さんの隠された秘密を暴いてみたい。

そんな気分。彼女は秘密を知られた時どんな顔をするのだろうか?


「さあ帰ろうか」

手を無理やり繋ごうとするので振りほどく。

「俺たちまだ付き合ってない! 」

「何を言ってるの? お友だちでしょう? 」

「でも…… 」

「だったらお隣同士。それでいいでしょう? 」

彼女がそれでいいなら拒む理由はない。

どうして有野さんはこうも積極的なのか?

まずいな。こんなところを学校の奴に見られでもしたら……


「あれ? マナ! マナじゃない! 偶然だねえ? 彼氏? 」

突然の登場。どうやら有野さんのお友だちらしい。

俺のことを知らないならクラスメイトではないのだろう。

「ううん。ほら例の隣の子」

あることないこと吹きこんでいそう。俺は彼氏でいいでしょう?

やはり学校の子がうろついていた。本屋なんて一番来そうで一番目立つところ。

密会場所としては相応しくない。まあ有野さんから誘ったので余裕はあるが。

それでもまずいことに変わりない。俺はどうしたらいいんだ? どうしたら……


「じゃあね! 」

五分もしないで帰っていく。

あれ? 彼女に見覚えがあるような…… 

スーパーサブと別れて泣いていたからティッシュを渡したんだよな。

隣のクラスだったはず。隣でもトップクラスにきれいな女の子。

有野さんと並べばそれはまるで美人姉妹のよう。


「彼女は確か…… 隣のクラスの…… 」

「知ってるの一ノ瀬君? 」

「いや。ただ偶然見かけただけで…… 名前も知らない」

危ない危ない。名前ぐらいは知ってるんだよね。

でも有野さんが嫉妬しかねないから黙ってる。それが男と言うものさ。


「彼女は五階さん。調って名前。チョウだからパピヨンって呼んでる」

パピヨンか? 微妙なあだ名だな。さすがに親しくなっても真似できない。

「振られていたところを偶然見かけまして」

「へえ。一ノ瀬君の言う通り隣のクラス。よく遊ぶんだ。今度一緒にどう? 」

誘ってくれるのは凄くありがたい。でも何だか嫌な予感がする。

「うん。いつか三人で楽しめたらいいですね」

こうして断らずに大人の対応をする。


五階さんか。うん悪くない。俺の彼女候補にはもってこいだ。

ただあのスーパーサブを選ぶ見た目の無さを考えると慎重にならざるを得ない。

もちろん俺は有野さん一筋だけどね。クラスで輝いている有野さんが理想。

今の彼女も悪くはないんだけど凄く積極的で若干引いてしまう。

贅沢なことだと自覚はしてるがどうにもならない。


                   続く

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