コタツに入ろう
夜。
「有野さん…… それに五階さんまで…… 」
素っ裸で入って来る異常行動。せめて下着ぐらい穿いてくれないか。
そうすれば少しは直視できるのに今はキラキラ眩しいだけ。
どうやら光が反射してる? まったくおかしな症状。
「堅苦しいよアキラ」
「そうそうもっと弾けなくちゃ」
今までは有野さん一人だったのがいつの間にか二人に増えてより大胆に。
「だったらパンツぐらい穿いてください。これではまともに見れない」
心からの願い。きっと聞いてくれないんだろうな。
待てよ。俺は本気でそんなこと思ってるのか?
思春期症候群が改善されても言えるのか?
本当にいいのと? と言われたら首を振る気がする。
通常時にできないことを今見えないからと聖人のように振る舞っていいものか?
俺はもう自分がどんな人間だったのか分からなくなっている。
「それより寒くありませんか? 」
もう真冬で外は今にも雪が降りそうな冷え切った世界。
そんなところを一瞬とは言え通過するお隣さん。
温かい部屋から寒いところを経由して再び温かい部屋へ。
どれだけ体に負担がかかるか。下手するとヒートショックを起こすぞ。
そんな彼女たちの為にコタツを温めている。
だからできるなら入って欲しい。それが出迎える者への礼儀だろう。
そうすれば俺はもう恥ずかしがる必要はなくなる。
きっと視界が開けるはずだ。
「うん。ちょっとだけ。温めてくれる? 」
有野さんが誘惑する。
「アキラがいいなら私だって…… 」
五階さんまでふざけて収拾がつかない状態。
ああこのままでは俺は廃人になってしまう。いやもう廃人さ。
とにかく室内はエアコンが入ってるから寒くはないはずだ。
後はコタツに入ればじっくり話せるのに頑なに断る。
本当に厄介な裸族の方たちだな。隣人とは言え世話が焼けるよ。
これが朝になると世話焼きお姉さんになるとかあり得るのか?
単なる幻覚なんじゃないのか? そんな風に思えてならない。
夜の彼女たちからは想像がつかない。
百八十度違う世界を俺一人だけが生きている。
彼女たちにすれば俺は朝も昼も晩も変わってないのだから。
「それで緑先生は? 」
どうしても気になる。丁重に扱うように要求したがそれでも不安は消えない。
大体もう俺には大家さんが分からない。ただのお節介なお婆さんとは違うらしい。
だからこそ緑先生の安否が気になって仕方ない。
「ふふふ…… あの女のどこがいいの? 地味で人気もないじゃない」
豹変中の五階さんは言葉を選ばない。
二人とも学校でのポジションに悩んでいるのか解放されると弾けてしまう。
このままでは俺一人で彼女たちの世話をすることになる。
それはとても光栄なことだけど耐えられるかと言えばそうではない。
「俺の相談相手。いい先生だよ」
「ははは! そうだよね。一緒にホテルに行ったんだもんね」
そう言ってからかう五階さん。
どうやら一部始終を大家さんから聞いたらしい。
有野さんだけには知られたくなかった。でも夜の有野さんならギリギリセーフか。
「アキラ! 」
ダメだ。思いっきり怒ってる。強引に服を掴まれてしまう。
「違うんです有野さん。あれは先生が誘ったから…… 最初は近くのカフェで」
どうにか言い繕う。それでも緑先生と二人で入った事実は変わらない。
俺には二人に秘密にしてることが。それはある意味自分を守ることにもなる。
そのことがバレるとまずいことに。最悪信用を失い嫌われることも。
覚悟がいる。だが覚悟と勢いづいたところでプレッシャーのやられては意味ない。
「アキラ! 」
「ラブホテルと言っても女子会だってあって…… 」
「はいはい」
「本当ですよ。政治家も使うんですよね五階さん? 」
「はあ? 初めて聞く。嘘つきアキラ! 」
「そんな五階さん…… 有野さんも」
「だからアキラ! 名前で呼びなさい! 」
細かいな有野さんも。下の名前って言い慣れてないので忘れてしまう。
確かマナだったよな。
「これ以上近づかないでくれマナ! そんな格好で迫られたら理性を失う。
そうなったら大惨事に。どうなっても知らないからな」
脅迫と言うか忠告。これで大人しくなるようなら苦労ないがどうかな。
理想のヒロイン像とはどんどんかけ離れている。
どうしてこうなったのか? 後悔するばかり。
こうして宴はゆっくりと過ぎていく。
明後日に迫ったイベント。和葉を呼んでの盛大なクリスマスパーティー。
何度も言ってるが俺としてはクリスマス当日でも全然問題ない。
その方が何かとやり易いのも事実。
予定が狂う前に決めておくものは決めておこう。
「まずは落ち着いて。明後日のことを少しは考えましょうよ」
コタツに誘導するが不発に終わる。
プライドがあるのか絶対に入ってくれない。
まさかとは思うが明後日も我がまま言わないよな?
和葉が来る。こんな格好でうろつかれたらとてもじゃないがやってられない。
俺が嫌われるだけで済まない。実家に入れてもらえない可能性が大。
とんでもなく恐ろしいことだがあり得ないことじゃない。
まあどうせ誰も信じないから俺が損害を被ることになる。
ああ憂鬱だな。言うことをまったく聞いてくれないから困ってしまう。
妹か…… 和葉の奴成長したかな?
胸は大きい方だがスタイル抜群の有野さんにも五階さんに勝てるはずがない。
そうすると落ち込むだろうな。そうなったら俺が慰めてやるか。
ふふふ…… 実物を見たら驚くんだろうな。
パッと見の感覚と目の前に現れる実物のギャップに驚愕するはずだ。
当然そうなる前に止めるのが俺の役目だが。それができるのか?
現実問題無理な気がする。
済まない和葉。情けないお兄ちゃんでごめんよ。
ほぼ田舎の中学生だから。身長にしろ体重など成長期には伸びる。
だから無理してダイエットさせないぞ。
続く




