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消しゴムコロコロ事件

俺は一ノ瀬晶。

どこにでもいる高校生さ。違いがあるとしたらいつも一人と言うだけ。

まあ一人は嫌だけど慣れればどうってことはない。居心地は最悪だけど我慢だ。


今は英語の時間。

間もなく中間テストとあって皆いつものようにバカ騒ぎはしない。

黙々とノートを取っている。

本来これが正しい高校生の在り方だ。


おっと…… 消しゴムが落ちた。

コロコロとどこにでも行ってしまうから苦労する。

大体毎日何かしらは机から落としている。

そう整理整頓ができないのだ。集中力もないからテストだって決して良くない。

一人大人しく真面目に聞いてるのにそれでもテストでは普通。

良くも悪くもない。至って普通と言う結果に落ち着く。


一番になってクラスの奴らを見返したい。ただその能力もない。

それと同様に勉強してるのでやってない奴らのように低い点も取れない。

恥ずかしくても取って目立てば少しは俺に注目してくれると本気で信じてる。


「一ノ瀬! 一ノ瀬! 聞いてるのか? 」

先生ぐらいなものだ。俺を認識しているのは。

笑われることさえない。存在感がないとかそう言うことでもない。


今年の二学期からこの学校でお世話になっている。

前の学校ではいろいろあって転校した。

だからなのかどうしても接するのが難しい。おかしな壁を感じてしまう。

それは一か月たった今もそうだ。改善することはないように感じる。


「先生! 一ノ瀬君がまた独り言を…… 」

ついブツブツと自分でも何を言ってるのか覚えてない。

女子からは気持ち悪がられ男子からは無視をされる。こんな毎日だ。

どんどん誰からも相手にされなくなる実感がある。

そうすると空気のような存在となり喋りかけようと聞いちゃくれない。


そんな俺にも一人だけ話すようになった奴がいた。

隣の席の男。俺が転校してきたばかりの頃によくしてもらった。

奴は何かと笑ってくれてそうだねと返してくれる。

だが奴も長期の休みに入っている。

いつも腹を空かせていた奴が大怪我をし学校に来なくなった。

入院中だが退院の時期は来月らしくどうも遅くなるような話を先生がしていた。

だから隣の席は空いたまま。自分勝手は承知だができれば早く戻って来て欲しい。

そうしないと俺の話し相手がいなくなってしまう。

そうするとさっきのように女子から気持ち悪がられる。


早く誤解を解かないと高校生活が灰色になってしまう。

灰色…… 何だか最近目が霞むと言うか変なんだよな。

一度医者に見せた方がいいのかな?


コロコロ

コロコロ

再び消しゴムが転がってしまう。いつもいつも俺を悩ます落とし物。

無軌道と言うこともなく大体いつも同じところ。たまに変化するがそれも稀だ。


コロコロ床を転がっていくブツはついに回転を止める。

まずい。おかしなところに行ってしまった。これは危険だ。

このまま放っておくか? でもあれお気に入りなんだよな。

そもそも名前が書いてあるから落とし主が分かってしまう。

ここは一つ救出に向かいますか。


先生が黒板にかかりっきりの今が救出のチャンス。

まずは顔を伏せて屈んでから足元にある消しゴムに。

「おい何してるんだよお前! 」

俺の行動を観察していただろう目つきの悪いサッカー部の野郎に咎められる。

それだけでなく背中を蹴る暴挙にまで出る。

見たら分かると思うが。ただの消しゴム拾いだろう?


「きゃああ! 変態! 近寄らないで! 」

消しゴムを取り損ねてつい足に手が伸びてしまう。

不可抗力だと言うのに彼女は騒ぎ続ける。


「一ノ瀬! またお前か? 」

これで三度目。お騒がせするが女子からは嫌われ気持ち悪がられいいとこなし。

男子からもドンマイの一言もかけてもらえずに冷たい視線を浴びる。

間抜けなのは自覚してる。でもそれでも信じてくれたっていいじゃないか?



ふと前の学校を思い出す。

あれも俺が机にあるものを落としてしまって女子の足元に。

今回とまったく同じシチュエーション。

だがあの時は邪魔をされることはなく騒がれることもなかった。

そしてブツの回収に成功して気の緩んだ隙に頭をガンとぶつけてしまう。

肝心の最後の締めができてないと痛い目を見る。いい教訓だ。

少々気が緩んだんだろうな。たまにはこんなミスもする。


「きゃああ! 覗かないでよ一ノ瀬君! 」

その相手がクラス一の人気者だったから大騒ぎ。

翌日親が呼び出され彼女に謝罪する羽目になった。

もちろん前日も驚かせてごめんと謝った。謝罪は丁寧に角度は四十五度。

でも今回は嫌らしいことしてごめん。または覗いてごめんだった。

親の前で滅茶苦茶恥ずかしい思いをした。

あれは俺が悪いんじゃない。不可抗力だった。


クラス一の人気者だったので男子からも女子からも相手にされなくなった。

そして六月に再び同様の事件を起こし完全に信用を失う。

相手の女子は決してきれいな子じゃなかった。どちらかと言えば……

それでも泣いてしまったから俺が責任を取る形に。

退学も停学も免れたが居場所などどこにもなくなっていた。


結局期末テストを終えて転校すること。

先生も周りの生徒のこともあり庇いきれずにあっちでもがんばれとそれだけ。

薄情と言うか腫物扱いするからこっちも嫌になった。

だから転校したのは後悔してない。でもこの学校でも繰り返す羽目になるとは。


まずい。これはまた転校するのか? 母さんに何て言おう。


                 続く

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