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プロローグ(1)
帝国歴901年、春。
まさか、こんな日が来るなんてーーーー
皇太子が妃を迎え、帝都中がお祭り騒ぎだ。かたや私は引越しの準備に追われている。
「あいつもちょっとくらい手伝ってくれてもいいのに。」
私は口を尖らせ拗ねた声を出す。脳裏に愛すべき旦那の顔が浮かんだ。
私のやるべきことはもう終わった。
「今世は絶対のんびり過ごす!」
ひたすら頑張ってきた私に休憩を与えることを誓った。お祭り騒ぎしている大袈裟な奴らを窓から眺め、私は空を見上げた。雲ひとつない快晴だった。
ドアの向こうに人の気配。
「今世だけはのんびりしたいんだが.....」
ついさっき口に出してまで私に与えようとした休憩が、刺客ごときのせいで終わろうとしている。さすがに、殺されるほど私は弱くない。『 片付けを考えると出血死はダメだ。』死体の処理方法と殺し方を考えながら、重い足取りでドアに向かう。せめてもの気晴らしに両開きのドアに思いっきり体当たりした。ドアが開いた。
「え?」