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モブ

モブのプール

 

 夏と言えば、プール。

 モブである俺も、夏になれば夏の風物詩であるプールに顔を出すわけである。

 だが、一緒にばしゃばしゃと水をかけてはしゃぎ合うような友達はいない。

 別に友達が一人もいないわけではないが、教室でくっちゃべる程度の浅い人間関係しか築けていないモブの俺には、休みにまで一緒に行動するような友達はいないのだ。前にも同じ話をした気がする。

 なのでもちろん、水着姿の女子と一緒に遊ぶ、などというシチュエーションは夢のまた夢過ぎてもはや夢にも見ない。じゃあ現実か。それも違う。

 そんな俺がどうしてプールにいるのかというと、バイトである。プールのバイトと言えば監視員と思ったそこのあなた。甘い。

 モブには、監視員ができるほどの水泳技術は備わっていない。

 プールにおけるモブの正しい勤務地は、そう。売店の売り子である。

 日本全土が灼熱地獄に落とされたような暑さなので、かき氷が飛ぶように売れる、売れる。

 かき氷マシーンで氷を削り、色が違うだけのシロップをとろーんとかけるだけの簡単な作業である。家で食えば一杯十円くらいっすよ、お客さん。

 そんなコスパ最強商品を鼻歌交じりに売っていたら、突然、ぽひひん、という断末魔とともにかき氷マシーンが煙を上げて天に召された。

「うそだろ……」

 マシーン、逝ったんですけど。

 だが店の前には、かき氷を求めるゾンビのごとき行列。

「これ使って!」

 店長が持ってきたのは、くまさんの笑顔が眩しい手動のかき氷機。どこの家にも一台はあるやつだ。

 え? まさか、これで氷を削れと……?

「頼むよ、今日かき氷売れなかったら、何万円の損になるか分かんないよ!」

 店長に泣きつかれた。やるしかないではないか。

「うおー!!」

 俺は回した。青いハンドルを、ぐるぐるぐるぐると。何回も、何十回も、何百回も、何千回も。無間地獄に落とされた亡者のように。

 途中で自分が今何をしているのか分からなくなった。

 精神と時の部屋か。

 気付くと、閉園時間になっていた。

 終わった……のか?

 抜け殻になっていると、お客さんが一人並んだ。

「あ、すみません。今日はもう……」

「うん、知ってる。閉店でしょ?」

 そう言って微笑んでいるのは、クラス一の美少女の若松さんだった。

「もうバイト、終わりなんでしょ? 一緒に帰ろうよ」

 マジかよ、と思ったけど若松さんの水着姿はこの世のものとは思えないくらいに可愛かったので、かき氷機の回しすぎで俺も天に召されたのかもしれない。




時系列としては、「モブの体育祭」→「モブの夏祭り」→「モブのプール」→「モブの文化祭」→「モブの卒業式」となります。なんとどうでもいい情報。

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