中
別次元の地球を守ってくれと神に頼まれて向かった俺がロボットを倒したら、同じタイプのロボットが大量に現れて巨大怪獣に薙ぎ倒されている。
本当に何が起きているのか全く理解不能だった。
最初に現れたゴリラ怪獣の仲間らしい二匹の怪獣、女の子二人が変身したって事はゴリラも人間が変身したって事だよな?
パンダ仙人とか言っていたけれどよ……。
『ミラージュドラゴ襲来! ミラージュドラゴ襲来!』
一匹は二足歩行のドラゴンをカメレオン寄りにした紫の怪獣、飛び出した目をギョロギョロ動かし、身長より伸ばした舌が分厚い装甲を持つロボットを何体も同時に貫き、引き抜いた途端に爆発四散させた。
ロボット達は銃口を”ミラージュドラゴ”に向けて構えたがカメレオンに似ていると感じたのは当たっていたみたいだな、瞬時に姿を消してビルの隙間を潜り抜けて背後から攻撃している。
俺は五感が上昇しているから僅かな揺らぎとか空気の流れとかで何となく分かるが、ロボットはセンサーでも見えないらしいな。
銃口を手当たり次第に乱射するが……
『アトミックコング!』
あの金色ゴリラの腕に叩き潰されてペシャンコだ。
『撤退! 撤退セヨ!』
逃げる気かっ!
流石に唖然としていた俺だが、逃げるってんなら追い掛ける!
俺だってロボットと戦えるんだ!
足に力を込め、一気に接近しようとした時だ、地面が揺れて逃走するロボットの足場が崩れ落ちる。
現れたのは姿を見せるなり地面に潜った巨大なモグラ、メタリックな毛皮に長く鋭い爪、ロボットのエネルギー弾を近距離で弾き飛ばし、爪で易々と切り裂いた。
俺の出番は……無しか。
結局数十体程のロボット軍団は俺が一体倒すのに使った時間で全滅、街に被害は出ちゃいるが巨大ロボットが暴れた後なんだから軽いもんだろう。
んで、その後で俺は巨大怪獣に変身した連中に連れられて郊外のアパートの一室に連れて来られていた。
向こうからすりゃ巨大ロボットに生身で勝っちまう異常な存在だし、俺からしても巨大怪獣に変身する此奴達やロボット軍団の正体とか色々と謎が多いからな。
尚、ロボットに蹴り飛ばされてビルも貫通して結構傷を負ったってのに既に全快だ、上着がボロボロなのにズボンだけは無事なのは妙だが今更だしよ。
「ほら、お茶。んで、アンタも仙人に力を与えられた口?」
「仙人? ……って、あの雲に乗ってるイメージの?」
此処に来る途中、既に名乗るだけはしているが、肝心な話はこれから。
神に頼まれて送り込まれた分身だとか信じて貰うにはどうすれば良いんだって話だが、巨大怪獣に変身したり仙人がどうとか言ってる此奴達も似たようなもんか。
「……違うみたいね。被害者が他に居ないのを安堵すれば良いのか、他に似たようなのが居るのに不安になれば良いのか……」
ミラージュドラゴに変身していたミルクティー色の髪の森ガールは|篠原忍《しのはら しのぶ〉。
俺が仙人とか言われて困ったのを表情から察したのか複雑そうな表情だ。
こりゃ仙人……パンダ仙人とか言ってたが、絶対性格悪いだろ。
俺が思い浮かべる仙人の姿は先端がグルグルってなってる杖を手にし、白い髭を伸ばして雲に乗ってる、そんな感じだ。
「実はメタリック軍団の手先とかじゃないの~?」
「待て! 会ったばかりの相手に敵意を向けるべきじゃない」
当然といえば当然だが俺を疑ってくるのは巨大モグラに変身していた地原地子、怪獣名はグレートモール。
それを諫めたのはアトミックコングに変身していたゴリラっぽい男、只見た目と違って凄く紳士的。
名前は森野 賢治だ。
「……俺はロボットじゃねぇよ。ついでに言えばあの月にくっついてるのが何なのか、ロボット共が何者なのかも分からねぇ」
「はぁ!? あのロボット共が現れて何ヶ月経ったと思ってるのよ。悪いけれど信用出来な……」
「ふっふっふっふっ! その疑問の答えは僕が答えるよ、ブーちゃん、チおーちゃん、ケンちゃん」
忍の言葉を遮って聞こえた声は押し入れから響く。
その瞬間に三人揃って精神的に疲れた顔になり、押し入れの戸が自動的に開くと中から何かが飛び出す。
「……パンダ?」
そう、飛び出して来たのはパンダのヌイグルミ。
仙人風の髭を生やして割り箸が刺さった雲に乗り、杖の代わりにペロキャンを手にした其奴は俺の前までやって来ると止まる。
「やあやあ! 性格の悪い神にこの地球に送り込まれたガッツちゃん、略してガッちゃん。僕の名前はパンダ仙人アンノウン! 清廉潔白にして品行方正にして偉大なる普通のパンダさ」
「いや、アンタの何処が清廉潔白で品行方正なのよ」
「辞書を広げて調べれば~?」
「……いや、一応仙人が俺達に力をくれたからメタリック軍団と戦えているんだし、同感ではあるが……」
成る程、この三人とパンダの関係性が見えて来たぞ。
「てか、あの神の事を知っているのかよ。……お友達か?」
「酷いー! 僕も散々性格が悪いって言われるし、空気を読んだ上で空気を読まない行動をしたり、人の黒歴史を広めるのが大好きだけれど、彼奴と僕じゃ性格の悪さの次元が違うよ!」
「具体的には?」
「僕がスポーツ漫画の春大会の二回戦で主人公の高校が戦う東日本二強の一角なら、彼奴は夏大会の準決勝でもう片方の強豪に試合描写無しで負ける古豪だよ!」
「分かり辛い」
「うん! 僕だって言ってて分からない!」
あっ、駄目だこりゃ。
このパンダ、話が通じねぇ。
……所で思ったんだが、あの曇って割り箸が刺さってるし綿アメじゃねぇ?
「おい、なんで綿アメに乗ってるんだ?」
「いや、僕の大きさじゃ視線を合わせて話せないじゃんか。ガッちゃん、相手とは顔を付き合わせないで話したいタイプ? コミュニケーション能力が不足してるね。直しなよ、そんな所」
殴って良いか? なあ、殴って良いよな?
いや、でも腹が立ったからって出会ったばかりの、それもこの地球にとっての恩人……恩大熊猫を殴るのは人として間違って……。
俺が悩む中、パンダ仙人アンノウンは腰に手を当てて尻を左右に振る陽気なダンス、何故か見ていて腹が立つ中、不意に忍の手が伸びて髭を掴んで振り回し、投げ飛ばした先で地子が鍋でキャッチ、蓋をしてガムテープで雁字搦めの状態にして窓から投げ捨てた。
賢治? 見ない振りをしていたし、この三人は普段から振り回されているのが分かったよ。
……振り回すといえば忍が掴んだアンノウンの髭が畳の上に落ちている。
拾ってみれば髭じゃなかった。
「そうめん?」
「ゆで立てさ! 更に言うならあえてるよ」
声がした、腹立つパンダのあの声が……。
ん? 携帯に見知らぬ番号から着信があるぞ。
「僕、アンノウン! 今、君の頭の上に居るよ」
「やかましい!」