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2 『白き乙女』ステラの証言

前作のあらすじ的な内容です。前作をお読みいただいてる方は特に読まなくても大丈夫かと思われますが一応けじめとして(笑)

次話からようやく本作の内容に突入です。島に向かいます。

私の名はステラ。ステラ=ヴェルナーと言う。



生まれてすぐに産親(うぶおや)に捨てられ、ある親切なおばあさんに拾われた私は、このロクシエーヌ王国北部のヴェルナー領で幼馴染のアレンと暮らしていた。


貧民街(スラム)育ちと揶揄されつつも明るく懸命に生きてきた私だったが、10歳の時、買い物に出た街中でうっかり馬車にはねられ頭部に瀕死の重傷を負ってしまう。数日間生死の狭間をさまよった後、ある日突然目を覚ました私は、これまでの自分とは全く異なる別の人格の記憶を有していた。




渡瀬紗奈(わたせさな)




それがその人格の名前。

そしてこの女性が私の前身…過去の自分自身である事を直感的に理解した。


今いるこの世界とは全く異なる世界の、平凡な家庭に生まれたらしき女性《紗奈》。実らなかった初恋や空気のように扱われた学生時代、婚約者だった男性に全財産を奪われるなど多くの辛い経験をしながらも常に前を向き、どんな時でも自分に正直に生きた女性だったようだ。


そんな彼女の人生に幕が下りたのは30歳を目前にしたある日の事。




交通事故だった。




華やかではないが堅実に生きてきた彼女の一生。それは概ね充実したものだったと言えるだろう。

ただ一つ、死の間際に訪れた悔やんでも悔やみきれないあの出来事さえなければ…。



なぜあのタイミングで(ステラ)に記憶が蘇ったのかはわからない。



でもそれと共に手に入れた彼女(紗奈)の知識や教養は、学のなかった(ステラ)にとって、とてつもない財産だという事に往々にして気づかされた。それからの私は《紗奈》の記憶を生かし、この世界にはない新しい事業を考案、幼いながらも貧民街スラムの発展に尽力することになる。


やがて貧民街(スラム)を『王国の掃溜(はきだ)め』から『希望の町』と呼ばれる商業の中心地へと導いた私は、(くだん)の事故の当事者であるヴェルナ―男爵家に養女として迎えられ、新たな人生を歩むこととなった。


それが私の人生を大きく左右するきっかけになるとは夢にも思わず…。

そして迎えた15歳。

これを境に、私はとんでもない世界に足を踏み入れる事になった。



『白き乙女ステラ』



かのタイトルを有するゲームのヒロインとして。










◆◇◆








【白き乙女ステラ】


それは過去の私が高校生の頃に流行っていたスマホゲームのタイトルだった。

恋愛シュミレーションと呼ばれるジャンルのそのゲームは、強大な白魔力の持ち主である主人公ステラが、自らの魔力を覚醒させ王国を救うというありふれたストーリーに、対象者と呼ばれる男性キャラクターとの恋愛を絡めたいわゆる乙女ゲーム。

最終目標は対象者のいずれかと結ばれハッピーエンドを迎える事。それが叶わない場合、たどり着くのは自分の命を犠牲にして国を救うバットエンドのみ。



そんなゲームの主人公『ステラ』に君は転生したんだ、とアレンは言った。

あまりに荒唐無稽な話に、一瞬頭が真っ白になった。




この国には昔から『白き乙女』と呼ばれる少女の伝説が実在する。

自らの体内に治癒や再生に特化した『白魔力』を宿して生まれてくる少女たち。

無作為に選ばれた彼女たちの一生は、実に不運な末路ばかりだった。不思議な力を手に入れよう画策する者はを絶たず、力を搾取され続けた結果、皆一様に若くして命を落としたのだそうだ。

事の重大さを認識した当代の王が『乙女』の存在を最重要機密とし保護したことで、悲劇は終幕し、その存在はやがて『伝説』となった。


なんの因果か、その力を持って生まれてきた私。


魔力は徐々に覚醒し、やがて「あの方」と呼ばれる黒幕に命を狙われるようになった。そしてそれらすべてがゲームのシナリオなのだとアレンは言う。


自身を取り巻く状況をようやく理解した私は、持ち前の行動力を生かして動き出す。結果として、バッドエンドの案件だった『アルテイシアの呪い』を打ち払い、隠れ攻略対象者のアレンと婚約した私は、無事ゲームをハッピーエンドに導いた。




と。

ここで疑問が生じる。


「なぜアレンがこの世界とゲームの関係、そしてその詳細を知っていたのか」


ということ。

でもこの答えは至って簡単だ。



久我康介(くがこうすけ)



転生前、私の幼馴染だった男性。私が事故で死んだあの日、偶然居合わせ、巻き込まれ、共に命を落とすことになった不運な男性だ。その彼が、なぜか私同様この世界に転生し、再び私の幼馴染アレンとしてそのポジションを与えられるという奇跡。そして彼がゲーム「白き乙女ステラ」のヘビーユーザーだったという偶然が重なりこの結果が導き出された、というわけだ。



こうして私がヒロインだった日常は無事幕を下ろした。

これからは誰かが書いたシナリオに振り回されることなく、自分で考え、行動し、生きていくことができる。

そんなささやかな幸せを望んでいた私。




それなのに…。

まさかまた、あんな舞台に放り込まれることになるなんて。

この時の私はまだ、新たなゲームの幕が切って落とされたことを知る由もなかった。



本日も最後までお付き合い頂きありがとうございました。

次話もどうぞよろしくお願い致します。

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