01「家が無い」
この物語はフィクションであり人名、地名、組織名は実際とは一切関係ございません。
「プ〜ン、ピシャ」
耳に近づいてきた蚊のせいで眠気を覚まし、顔を叩いた右手で目が覚めた。コンクリートの床は冷たく、冷気が直に身体に染みわたる。
「段ボールでも拾ってくるか」
そんな事を考えながら雨が降らない事を祈ってる俺、松戸雄介は29歳の、ホームレスだ。
ホームレスの正しい定義は知らないが、とりあえず帰る家はなかった。
「つか、腹減った······」
とりあえずコンビニに行き、喫煙スペースでタバコを吸うオッサンに声をかける。
「一本いただけませんか?」
若いアンチャンはくれない事も多いが、年配のオッサンなら下手に出れば大概くれる。前なんか「ごめん、これが最後なんだ。」と逆に謝られたくらいだ。火まで点けてもらい、恐縮しながらタバコを燻らせているとコンビニの店員が廃棄の弁当を捨てに喫煙スペースの近くのプレハブに来た。無造作に廃棄弁当が入ったビニール袋をその中に投棄てドアを閉めた。
「すいませ〜ん」
客が声をかけると、店員が
「少々お待ちください」
と走って店内に戻っていく。
その時を見計らってプレハブの扉を開け、なかに廃棄 弁当の入ったビニール袋をサンタクロースよろしく担いで去っていく。
それをタバコを吸っていたオッサンがポカーンとした顔で見送っていた。
コンビニのゴミ袋の中には、ついさっきまで店頭で売られていた、弁当やおにぎり、パンが入っていた。それで空腹を満たしながら、飽食ニッポンについて考えていた。
「世も末だね〜」
今だ世界には飢えて死ぬ人間がいるってのに、この国は罰当たりじゃないだろか?そんな場違いなことを思いながら、公園の水道水で乾きを癒やし、手と顔を洗った。
「さて、とりあえず図書館でも行きますか」
図書館では新聞が読める、ホームレスとは言え現在の世界情勢は知っといて損は無いだろう。図書館に着くと新聞を読むのに順番待ちが出来ていた。
「新聞くらい家で読めよ!」
と思ったが
「ひょっとしてコイツらみんなホームレス?」
と自分の同類かと一瞬、脳裏に浮かんだ
「まさかなぁ〜」
やっとこさ自分の順番がきて新聞に目を通しながら、ここにいる人って一体なにをしてる人なんだろうと考えていた。高校を卒業して約10年、ずっと働いて職場と寮との往復以外ほとんど知らない俺にとっては
「平日に学校にも仕事にも行かないで、図書館にいる人々とはなんぞや?」と理解できずにいた。
「ニートかプー、ひきこもりなのか?いや、ひきこもりなら図書館には来ないか」
そんなくだらないことを考えていると、ふとある女と目があった。おかっぱで色白の市松人形みたいな女性だ。向こうも同じ事を考えてるのかと思うと思わず笑みがこぼれた。
(まだまだ、つづく…)
はじめまして
はじめて小説を書き始めた者です。
いろいろコメントあれば幸いです。