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8.おのれオーク

遅刻したので初投稿です。


それは突然のことだった。どうすれば良かったのか考える間もなく、流されるままに動いた結果


「やってしまった……どうしよう」

俺の後ろには冒険者が4人いて、


俺の前にはオークの死体があった。




「南の草原にオーク、ですか?」

受付の……リンダさんは信じられないといった顔でこちらを見た。

こちらとしても遺憾である。東の森の深い場所にしかいないと聞いていたのだが。


「いえ、縄張り争いに負けたり、餌が足りない場合はぐれ個体が森を抜けることはありますが……それも問題ですがそうではなくてですね、誰が討伐したんですか」


リンダさんは真剣な眼差しでこちらを見つめた。その目は「嘘は許しません」と語っている。

そこで俺は


「……弱っていたので勝手に死にm「「「「この人が倒したんです!」」」」

俺は余計なことを話始めたやつらを軽くにらんだ。

助けた冒険者の男2人女2人の4人組である。年は俺とそう変わらないだろう4人はこちらがにらんでいることにも気づかずに興奮した様子で話始めた。


「オークの振るう棍棒を余裕でよけてたんだ!」

「しかも氷をまとわせた木剣を振って挑発しながら僕たちから引き離すように移動していました!」

と男2人が語る。

しかしそうか。こっちは紙一重のつもりでよけていたが余裕があったらしい。後剣を振ったのは挑発ではない。当てるつもりだった。

「オークが疲労したところを雷の魔法でひるませて氷の刃で心臓を打ちぬいて倒していました。見事なものでした」

「精霊はよく見えなかったけど、2種族の精霊と契約してしかも何も言葉を交わさないであんなに繊細に魔法が使えるなんて、精霊とお互いのことを分かり合って経験を積まないとできないです!」

こちらは女2人。

残念ながらこちらは精霊と言葉すら交わせないし、君が見ようとした精霊は幻なんだが。


「こう言っていますが、彼らの話は本当ですか?」

最後にリンダさんがこちらを見つめてくる。


「……はい、私がやりました」

俺は観念した。


「……ひとまず1ランク昇格で、この後査定を行いますがとりあえず。貴方は今日から銅級です」


「「「「ど、銅級!?」」」」

その言葉に驚いたのは俺ではなく4人組のほうだった。


「なあお前って「オークの売却結果はどうなりましたか?」

絡まれたくないので無視して話を進める。


「え?そ、そうですね皮はここまでの状態の物は珍しいので銀貨2枚、肉もほぼ残っていますが、内臓等販売できないものもあるので銀貨1枚、魔石は銅貨50枚で全部で銀貨3枚と銅貨50枚となります」


あのオークもそこまで大きく無かった気がするがなかなかの値段になったと思う。

金を受け取った後、呼び止める声を無視してそのまま宿屋へ逃げ帰った。


ここまでが、3日目のことである。

そうして

「銅ランクでオークを倒したっていう新人はあんたか?俺たちと組まないか?」

「いやいや、ウチらとどうだい?報酬は等分で」

「はぁ!?ケチなてめぇがそんなに払うわけないだろ!?悪いことは言わねぇから俺らのパーティに来なよ坊主!」

「いやいや俺たちが」

「いやいやうちにも」


4日目、ギルドで知らない奴らに絡まれた俺は全力で逃げ出した。


「申し訳ございません、余計な目に合わせてしまって」

昼頃までスライムとたわむれた後、昼食後の早い時間にギルドに戻りリンダさんに報告したところ、謝罪された。


「それにしても、災難でしたね」


「全くです」

理由は何となくわかる。昨日の4人組の声がデカすぎて注目を集めたせいで俺が銅ランクなのに一人でオークを倒したことがばれたのだろう。


まあつまり、俺のランクを4人組に話した目の前のこの人にも責任の一端があるからこのようにして謝罪されたのだが、これについても原因はわかっている。


「ですが、冒険者ギルドとしてはパーティでの任務遂行を奨励しています。先日の4人組、『錬鉄の絆』という名前で登録されていますが、彼らについても素行は極めてよく実力ももう少しでスライム狩りから脱することができる程度で銅級の昇格も決定していました。私個人としても彼らと組むメリットは大きいと考えています。少なくともこの街の青銅級の中ではもっともよい面々であるといってよいでしょう」


こういうことである。彼らについては確かに助けた際にお礼を言われたし、オークの死体も全部持って行って良いといわれた。

興奮しながらしゃべっていた内容だって俺が活躍していたという内容だけで、別に悪意があって大声であったわけではない。むしろ普通の冒険者なら活躍の喧伝をされるというのは悪いことではない、俺の場合活躍ではない部分が多かったが。


何にせよ彼らから離れたのは俺の都合であることは間違いない。



こっちは数年で元の世界に帰るのだ。そうしてきっと二度と会えなくなるのだろう。そんな中でおいそれと関係を深めることはできないし、したくない。


そういう点ではリンダさんの名前を聞いたのも失敗だったと思っている。


「……とりあえず誰かと組むことは考えていません」


「そうですか、わかりました。こちらとしても無理強いはしません。今後強引な勧誘などについては伝えていただければ対処いたします」


この日はスライムの納品をして帰った。

魔物の肉

魔物の肉は食える。もちろん毒を持っているやつもいるが、スライムの皮も(味はしないが)食べられるし、ゴブリンだろうが魔王だろうが食べようと思えば食べられる。

特に動物的な特徴を持つ魔物は肉質もその動物に近くなるため、オークならイノシシ肉に近い味がする。そのため、動物系の魔物は肉の買い取りも行われる。主人公も200年前の人のいない魔王軍領域のサバイバルで魔物の肉を死ぬほど食ったため慣れている。

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