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4.おのれスライム

書き溜めがないので初投稿です。

現在、ギルドで紹介された宿屋で一息ついている最中である。

多くはないが金はあるため、グレードの高い(といっても駆け出し冒険者にしては、だが)宿屋を選び、泊まることにした。

「何とかなったな…。」

一日を無事に終えられたことに安堵しつつ、明日以降の予定を考えることにした。

「まずは魔物討伐、それも軽いやつを相手にするべきだろうな。」

何せ1年以上ブランクがあるのだ。おまけに最後に戦った時とは体の大きさが違うときている。魔法は十分に使えるとはいえまずは弱めの相手に試して見るべきだろう。

「スライム狩りから順番に難易度を上げていく感じでいいかな。」

前回から超進化を遂げていないなら、スライムはほとんど攻撃してこないし、死亡例もほとんど上から降ってきたものに窒息したか、まれにいるデカいのに潰されたぐらいのものでそこいらの動物を相手にするよりよっぽど安全に試せるはずだ。

打撃なんかに耐性があるせいで魔法使い以外にはおいしくない魔物扱いされる(安物のナイフなんかでスライムを切ると刀身が酸性の体液ですぐにボロボロになるからだ。)が魔法が使えればよく動く的扱いだった。金銭的にも練習相手としてもちょうどいいだろう。

「後は武器屋には行っておきたいな。」

しばらくの間使う武器が欲しいのはもちろん、鍛冶のやり方や金属の入荷先について知っておきたい。もちろん大量に購入するのはもっと稼げるようになってからだが、練習用にナイフ1本分くらいの鉄塊は確保しておきたいのである。

「防具は、多分亜空間にあるだろ。」

防具も最後につけていたものはないが、予備の物はある。召喚初日から使っていたものでボロボロだが使う分に問題はないだろう。

なお、聖剣がチート過ぎて武器は亜空間内には無い。手入れの必要もなかったし、必要なら勝手に手元に戻ってきたし、範囲攻撃も間合いの変更も自由自在だった。聖剣を手に入れる際に持っていた剣を折ってしまったのもあり、聖剣を手に入れてからは武器を買わなかった。

解体や料理に使っていたナイフぐらいはあるがさすがにそれだけで町の外に出ようとしたら、(何せ登録後2日目の初心者である。)いろんな人に止められかねない。できれば聖剣と同じくらいの長さの片手剣。最低でも大ぶりのナイフが欲しい。

「このくらいかな。」

明日の予定については「依頼を受けてモンスター(スライム)と戦う。」「武器屋で武器を買いつつ鍛冶について知る。」の2つに決まった。



考えることがなくなって頭に浮かぶのはやはりというべきかかつての仲間のことだった。

だが、追い出された後のような「もう会えない」という後ろ向きな考えではない。ほとんどが死んでしまっただろうが、エルフなんかはまだ生きているかもしれない。生きているなら死んでいった仲間が何処で死んだかぐらい、覚えているだろう。

「墓参りぐらいは行きたいからな」

まさかこの年で墓のありがたみを知るとは思わなかった。

いつになるかはわからないが、元の世界に帰るまでに一度はみんなの墓に寄っておきたい。

世界を救った英雄たちだし、墓ぐらいはさすがにあるだろう。何を持っていけばよいだろうか。

そんなことを考えながら気づけば眠りについていた。




翌日、防具(予備だったもの)をつけて朝早くに宿屋を出て宿屋の従業員に聞いておいた武器屋を見てまわることにした。

とりあえず何件か回って武器を見てみようと思ったのであるが

「片手剣ください」

といったところどの武器屋でもうんざりしたように

「売り切れたよ」

といわれてしまいあっという間に最後の1件になってしまった。

最後の武器屋は職人のいる区画の奥まったところにあり、宿屋の店員曰く

「腕は確かなんだが性格に難がある」

とのことであった。

入って見るとこじんまりとした店だった。所狭しと並んでいる武器の奥に店主と思われる小柄な男がいた。

「すいません、片手剣が欲しいのですが?」

「アァ?坊主も聖剣にあこがれた口か?悪りぃがごっこ遊びなら他所でやってくれ」

その一言で午前中に抱いていたモヤモヤにけりが付いた。武器を持ってない素人の若造が聖剣の勇者にあこがれて聖剣と同じ片手剣を買いに来たと思われていたのだろう。

疑問は解決したのでとりあえず勘違いを解くことにする。

「実は、冒険者として登録したばかりでして、武器がほしいんです。片手剣が使えるので安めのものを買いたいと思うのですが」

「登録したばかりってンならナイフで十分だろ、そこにあるから好きなの持ってけ。銀貨1枚だ」

「え、いえ、その」

「何だ不満か?研いであるからスライムぐらいなら一発で切れるぞ?」

「いえ、ナイフは解体用のがあるので間に合ってるんですが」

「ならそれ使えばいいだろ。剣は金たまってボロい中古品じゃなくて新品の防具揃えてからにしとけ」

おかしい、何か常識の違いがある気がする。

「それともコーティングが剝げてンのか?スライムの皮でよけりゃ研ぎと合わせて銅貨1枚だ。ウチじゃスライム以外できねぇが」

「……コーティング?」

「何だ坊主、コーティングも見たことねぇんじゃあ、おめえのいた村の鍛冶屋は相当なヘボだったんだな」

そういって小柄な店主(山のほうにいるドワーフに似ているがただの人である。)はおもむろに棚にあったナイフを1本手に取り、こちらに見せてきた。

「コーティングってのはスライムの皮何かを煮詰めて溶かした液体にナイフなんかを漬け込むことでできるんだ。血の脂だのも弾いてくれる手間いらずよ。ほら、よォく見てみろただの鉄とは輝きが違うだろ」

そういって店主はナイフの横に鉄の端材らしきものを並べた。確かによく見ると反射した光の色が違って見える。ナイフのほうが緑っぽい。

「刀身が長くなると漬け込むのも大変になるし研ぎ直ししてる内にムラができやすくてやらねぇとこがほとんどだからなァ、スライム切る用ならこのナイフで十分だろ。スライム相手なら研ぎ直しもほとんどねぇし皮持ってくりゃコーティングのかけなおしはタダにしといてやる」

なるほど店主の言う通り、ナイフがボロくならないならスライムは駆け出し御用達といってもよいぐらいくみしやすい相手だ。


嫌な予感がする。

「もしかして、ですけど…スライムの皮ってそこまで高値で取引されてないんです?」

「ンなのおめぇ、当たり前だろうが」

俺は自分で建てたプランが粉々になる音を聞いた。

スライム

魔物の生態系において最下位に位置する。体は透明で丸く雑食で有機物なら大体何でも分解できるが、魔力が多い物質(植物をのぞく大体の生物)や一部の無機物は分解できない。

その表皮には様々な用途があり、食用、代用ガラス、梱包材、鎧の間に挟む緩衝材、さらには水で煮込んで溶かした液体で金属をコーティングすると油脂や汚れを弾く。多分2000年後ぐらいに車の表面に塗られる。

魔石を持たないため、魔物ではないのではないかと思われがちだが、表皮が魔石の役割を果たしており、立派な魔物である。

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