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20.おのれ貴族5

モ〇ハ〇、ポケモ〇、テ〇キ〇で忙しかったので初投稿です。

昔を思い出す。

仲間がいて、それを帳消しにするくらい多くの敵がいて、

聖剣があってなお、死を覚悟した戦場のことを。


「久々にヒリつくね。脚と考えを止めないで戦うなんて久しぶりだ。」


魔力が滾り、笑みがこぼれる。

こんな時ドノバンならどうしただろうか


「『勝算も策も無くてどうしようもないくらい困ったときは自分と相手を見ること。』だっけか。あ、後よく笑うこと」


新たに発生した2匹を攻撃しながら思い出す。勇者が現れるまで王国を守り続けた偉大な将軍の言葉を。


無限に出てくる魔物だが1体1体は対処できる強さである。当たり前だが一度に出てくる数も無制限ではない。


こちらに聖剣はない。だが、一番最初に作ったキメラを合成したナイフとミスリルでできた氷の刃を作るナイフがある。


キメラナイフは剣に魔力を流し込むことで刀身がスライムのように伸び縮みできるようになった。呪いも腕にまとわせた魔力と気合と勇者ボディと慣れで何とかできている。時折噴き出してくる瘴気には気を付ける必要があるが。攻撃力は十分にあるだろう。


ミスリルナイフの方は氷の刃自体は殺傷能力が低い。砕けやすいが作りやすい。


また、本体のミスリルの刃の方は今いる魔物相手でも十分に通用するだろう。ただその場合リーチが足りなくなるのだが……。


今いる魔物は計7体。ワイバーン、地竜、リッチー、オーガヒーロー、ファイアサーペント、スレイプニル、そしてヒドラ。

ヒドラだけ首が8つあるので普通の魔物2体分ぐらいの手数があり、強力な魔物ばかりだがそれでもオーガヒーローとファイアサーペント、スレイプニルは他の魔物と比べて若干格が落ちる。


産まれ方が可笑しいからか普通の魔物どもと挙動が違う。違和感のある動きがおおい。


「ひとまず蛇は最優先でやらないといけないな。森林火災は無いと思うけど燃え移ったら大惨事だ」


それ以上のことは戦いながら考えるべきだろう。

攻撃したことでこちらを認識して突進するスレイプニルと同時に向かってきた地竜を横っ飛びで避ける。そのままファイアサーペントに攻撃を……しようとしたが、ヒドラが首を縮めて溜めをするのを見て、咄嗟にキメラナイフを投げる。


ナイフは首の1本に刺さり、出損なったブレスを吐きながらヒドラは暴れだす。

ナイフの触れている周囲の肉が腐り落ち、得体のしれない液体とともにナイフが抜け落ちる。

投げ出されたナイフを亜空間に収納し、手元に戻し、そのまま地竜の尾を切り落とした。


「初めてだがうまくいったな」


亜空間が開けるようになってから今まで試したことはなかった。いや、こんな状況でなければ思いつくことも無かっただろう。


「自分を知る、か……。だいぶ疎かにしてたんだな。こうしてみると」


勇者だったころの戦い方を取り戻すだけでは足りないことはわかっていた。

ただ、勇者としての戦い方の延長線上に目標があると思っていたのだ。

この戦い方は勇者の物とは全く違う。聖剣を手に入れた後は、聖剣をとり落とすことはあっても投げつけたことはなかった。

まあ、剣から色々出るから投げる必要もなかったわけだが……。

これはどちらかといえば聖剣を手に入れる前の……


「当たり前か、聖剣はないんだもんな。きちんと認識できてなかったのか」


思えばキメラナイフの能力も聖剣に近づいているような気がする。

ナイフの成長は持ち手の俺の戦い方を反映したものはずだ。そうなるように作っているのだから間違いない。


「っと危ない。手も動かさないと」


こちらを締めようとしてくるファイアサーペントを跳んでよける。リッチーの魔法を氷の刃ではじいてそのままリッチーに向かって走る。

キメラナイフで切り付けると切り傷は浅いがリッチーは声にならないうめき声をあげながらもがき始める。


そのまま走り抜け、怒り狂う地竜を飛び越えて避け、後ろを向いたオーガヒーローの背中を浅く傷つける。

暴れだすオーガヒーローを無視して、空を飛び始めたワイバーンに氷の刃を投げつける

回転する刃は皮膜を傷つけ、ワイバーンは体勢を崩す。

墜落するワイバーンをそのままにして向かってくるファイアサーペントとスレイプニルを迎え撃つ。

スレイプニルはキメラナイフを伸ばして前脚を狩る。崩れ落ちてこちらに突っ込んでくるそいつを避けて後ろにいるファイアサーペントに突っ込む。 噛みつこうと牙を向けるファイアサーペントの首を氷の刃で切り付ける。振れれば火傷は免れないほど高温の血液が噴き出し、氷の刃が溶ける。

溶け続ける刃を一振りして露を払い、魔力を流して刀身を戻す。


のたうちながらだんだんと弱弱しくなっていくファイアサーペントを無視してヒドラに向かう。

オーガヒーローが立ちふさがるがキメラナイフで脚の腱を切りつける。若干引っかかりがあったが無理やり振りぬくと、切られたオーガヒーローは膝をついた。

地竜はスレイプニルとオーガヒーローが邪魔で突撃できない。


追撃できるやつはいなくなった。


「悪くない方法だ」


敵を半殺し、ないしは動くのに支障の出る部分を傷つけて足止めする。スレイプニルとオーガヒーローは少なくともしばらく動けないしその後の動きもしばらくの間は悪くなるだろう。ファイアサーペントはほぼ完全に無力化している。

全ての魔物を半殺しにして時間を稼ぐことができるなら、魔法も使用可能だろう。


できるならだが、


問題になりそうな魔物、ヒドラを睨む


膝をついたオーガヒーローのわきを駆け抜け、ヒドラに向かう。

切り落とした首は既に再生したようで8つの首全てで全方向から襲ってくる。


向かってくる8つの頭の一つを肥大化させた氷の……鈍器で殴りつけて軌道をそらす。

頭の一つがほかの頭とぶつかり合うことで絡まって隙間ができる。

隙間を通り過ぎて後ろに回り込んでキメラナイフで後ろ足を切り付ける。

切り付けた後ろ足は瘴気でグズグズになっていく……前に瘴気に侵された部分を押し出すように肉が再生し、何事もなかったように傷は塞がる。



「やっぱり問題になるのはこいつだな」



ヒドラはかつての魔王軍との戦いでも厄介な相手だった。

手数が多いが強いわけではない。もしそうなら放置せずに奇襲した段階で倒していた。

聖剣を手に入れてから何度か戦ったことがあったが、ブレスに気を付ければ比較的安全に戦える魔物だった。ブレスだって範囲が広く、巻き添えがあるから気を付ける必要があるのであって、一人だけなら今の俺であっても十分に戦える。


が、たとえ聖剣の一撃であってもものすごい速度で肉が再生し、首が落ちても多少時間がかかるが元に戻る。しかも生命力も高く、首を全部落としても即死せず、場合によっては再生が間に合って首が新たに生えてしまう場合すらある。


中途半端に半殺しにしようとすれば30秒もかからずに戦線に復帰するか、勢いあまって殺すかのどちらかだろう。

かなり上位に位置する魔物だったはずなので、次に出てくる奴らが攻撃的な魔物だった場合さばききれなくなる可能性がある。かと言って慎重に手加減ができる暇はない。


「まあ、種類が多いからな。そういうこともあるよな」


逆に言えば上位がこいつだったから助かっているところもある。戦い方を変えようとしているのだからこれだけいれば障害になるやつもいるだろう。


絡まったヒドラの首の一つを叩ききって落とす。

それによって絡まりが外れ、首が飛んでいく。


跳んでいった首を横目に残りの首を落としにかか……ろうとしたところで背後から気配を感じて飛びのく。


飛びのいた位置を雷をまとった角が通過する。先ほどまでいなかった魔物だが、その後ろで完全に動かなくなったファイアサーペントを見て納得する。


「サンダーライノス、また嫌な魔物が来たな」


そこにいたのはサイだった。

硬さ、強さは地竜以下だが、雷をまとうせいで金属製の武具を持っていると感電する危険がある厄介極まりない魔物だ。


リッチーとワイバーンが追いついてきて、魔法が飛んでくる。

横にずれて躱すとワイバーンが飛び掛かってきたので、氷の鈍器で頭を殴りつけて撃ち落とす。


鈍器は壊れたが気にせずキメラナイフでリッチーを切る。

苦悶の声を上げて倒れ伏すがまだ死んでない。


オーガヒーローとスレイプニルは相変わらず起き上がれてない。そこで気づく


「地竜はどこ行った」


どこかに言ってしまったのかと思ってあたりを見渡す。

森に消えていってしまった可能性が頭をよぎったが、地竜はさほど遠くない場所にいた。

ヒドラの首が遮蔽になって見えなくなっていたようだ。

こちらを向いていないので、慌てて向かおうとして地竜の顔が見えたところで違和感を覚えて立ち止まる。



「動かない?いや、何かに夢中なのか……?」


今までの戦闘で、こちらを注目しなくなった魔物は周囲を見渡したり、移動したりと落ち着きがなかった。それが微動だにしない

思ってもみなかった姿に困惑したが、更に近づく。


「喰ってる?何を……っ‼」


そうして気づいた。

地竜が喰っていたものに


「ヒドラの首……」


喰っていたのは亜空間にしまい忘れたヒドラの首だった。

全てがつながった気がした。


「ああ、そうだ。そういえばそうだったな」


そうだ。今まで死体は出来次第亜空間にしまっていたから気づかなかった。

魔物(こいつら)がさっきまで何を食っていたのか。

貴族(クズ)共はどうやってこいつらを動かすつもりだったのか。


「『人より魔物を優先して食らう性質を……』だったな」


それは恐らく……


「解決策が見えてきたな」


地竜は無視してヒドラに向き直る。

リッチーが魔法を打って来る。

オーガヒーローも脚が治ったのかこちらにつかみかかってくる。


それらを無視してまっすぐにヒドラに向かう。

サンダーライノスが突進してくるが氷の剣に無理やり魔力を流して地面に突き刺し、地面ごと固める。

そうしてできた氷の壁は一瞬で破られたが、一瞬で十分である。

ヒドラに詰め寄り、キメラナイフをふるう。首を2つ落としてそのまま後ろに回り込む。

他のモンスターはヒドラが邪魔になって近づけない。そのまま残った首を順番に切り落とす。

最後に残った1本の首を残し、胴体を滅多切りにする。


血が噴き出し、ヒドラの動きが目に見えて弱弱しくなる。

そのまま胴体に刀身を伸ばしたキメラナイフを突きさし、根元まで刺さったところで一気に引き抜く。


ヒドラは完全に沈黙し、横倒しに倒れる。が、まだ死んでいない。

だが、そのままにして後ろに飛びのく。

ミスリルの剣を回収したところで……


「GYAAAAAAAAAAAA!!!!!!!」

「KIAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!」



魔物たちが襲い掛かってくる。ヒドラに向かって(・・・・・・・・)


「やっぱりか……」


思えば最初に人間を襲ったのはヒドラだった。

首が多い分他の魔物を食らう速度が早かったからなのか、詳細は不明だが、こいつだけが魔物として『完成』していたのだろう。


ほかの魔物が今までこいつに手を出さなかったのは俺が必死に注意を引いていたせいか、もしくは今いる魔物の中で一番強力なのがこいつで、手が出せなかっただけか。


何にせよ、『未完成』の魔物どもはヒドラに殺到した。

全ての魔物がヒドラの肉を食い漁るが、それでもヒドラは死なない。


「で、こちらも完成だ」


時間稼ぎに成功した俺は魔法を発動する。

結界が俺を囲み、体感時間が加速する。


そのまま加速した時間の中で魔法を構築する。


実際の時間では1秒に満たない間で、魔物を囲う形で結界が発動する。


そのまま亜空間を開き、魔石を取り出して砕く。


吸収しきれない魔力が結界内に充満するが、逆に魔力を放出して結界内部の魔力となじませる。


そのまま充満した魔力を無理やり自分のものとして魔法を発動する。



「燃えろ」


結界内は地獄になった。

ヒドラ


巨体であるが故の耐久力、首の本数だけ種類があるブレス、そしてキメラ以上のとんでもない再生力を持つ最上級の魔物の一体。強力な部分が多い反面、防御性能はそこまででもないため、単体としての脅威度は低い。ただし、乱戦になると気づいたら無傷で復活している、ブレスが止められないなどその厄介さは跳ね上がり、かつての勇者も苦しめられたという。

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