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14.おのれグラム

小説書くと小説書くこと以外にできることが少なくなるため初投稿です。

「やあ」

「あ、ケンジさん」

「お疲れ様です」


俺は錬鉄の絆と会っていた。

今日は依頼を受ける日だが……、


「依頼を受ける前に話がしたいんだ」

「話、ですか?いいですけど」


場所を移す。ギルドに併設されている酒場の、何となく壁際の席に座る。



「ところで話とは何でしょうか」

ディアナがそう切り出した。


「その前に、剣は買えそう?」

「……まだですけど、もう少しです」


金については今日の依頼で必要な量集まる予定だったらしい。

まさにタッチの差である。剣が人数分あったら提案しないつもりだったし、金があったら提案を断られていた可能性が高い。


「剣について何だけどさ、これを使ってみる気はない?」


そう言って俺は1本の剣を取り出した。

装飾はなく、目を引くところのないその剣は先日作り上げることに成功したキメラを使った片手剣である。

呪われないか確かめるために試し切りをしたことで少しだけ強化されているが、ここ数回の依頼から十分に扱えるだろうと確信している。



「試しに使ってみてほしいんだ。お代はいらないし、何回かは様子を見るために依頼にも同行するからさ。どうだい?」

「いやいやいやいや、そんな。ただでさえ助けてもらった上に色々教えてもらってるんですから、いただけませんよ」


全員が首を横に振り、リーダーのオーソンが代表してそういった。

そういう反応になるのは読めていた。


「まあ、聞いてくれよ。俺は錬金術が使えるんだけどな?その練習のためにこの剣を作ったんだ。王都に来ればエンチャントの依頼もたくさんあるって聞いたんだけど、もともとこの街にいたわけじゃない俺に錬金術の依頼なんて来なかったからさ。使ってみて、効果を確かめて見てほしいんだ」


これは半分本当である。この剣は今までの錬金術で培うことができなかった『適量を探る』という行為のいい練習台になった。剣とは別で素材の種類を変えて何本かナイフを追加で作成したほどである。

また、剣を使ってみてどこまで効果があるか確かめてほしいというのも本当だ。魔王と並ぶぐらい強くなれば最高である。


「でも、そんな……、せめてお代だけでも!」

「試作品で金なんかとれないよ。その代わりその剣を使った感覚や感想について聞きたいんだ。何が起こるかわからないからね」


こちらとしても彼らと依頼を共にして信頼している。

その辺の奴を相手にして剣を持ち逃げされるのは困るのだ。


「最初の何回かは剣の機能を教えるのも含めて依頼に同行したい。それが終わるまではナイフと同じ貸与でいい。お代とかはお金がもう少したまって余裕ができてから考え直しなよ。今余裕ないだろ?」

「いや……でも……」

「その辺にしときなよリーダー」


なおも言いよどむオーソンにケイトが言った。


「あんまり無理に断るのも悪いよ。少なくともその剣を使うことでケンジさんが助かるんでしょ?だったら使っていいじゃん。難しいことじゃないよ?」

「まぁ……それはそうなんだけどさ」


シャロンとディアナもその言葉に続く。

「余裕ができればお金だって出せますし、何が起こるかわからないってことはその剣を使って問題が起きても僕たちの責任になるわけです。話を聞く限り僕たちは別に過剰な施しを受けているわけではありません」

「今は難しくてももっと強くなって出世してから恩を返すことだってできるんです。ワタシとしてはそっちの方が燃えますけどどうです?リーダー?」

「む、むぅ」


パーティーメンバーの言葉を聞いてなおも悩んでいたオーソンだったがやがて俺の方を向いて、こう尋ねた。


「一つだけ聞いていいですか?ケンジさん」

「構わないけど……?」

「錬金術で稼ぐ話は嘘ですよね?」

「……まいったね。その通りだ」

「あなたの強さなら魔王軍との戦いの最前線ですら英雄と呼ばれる程でしょう。稼ぐ手段なんていくらでもあるはずです。それなのに錬金術でわざわざ剣を作った理由、それが僕たちへの施しだというなら受け取ることはできません」


なるほど、と思った。彼はこの取引が実は公平でないという可能性を危惧しているのだろう。

ただ、この意見はこの剣に問題がないという前提がなければ成り立たない。自惚れでなければこれは俺の作った剣、ひいては俺自身を信頼している。ということでもあるはずだ。

信頼には正直に答えるべきだろう。


「俺だけが強くったってどうしようもない」

「え?」

「剣を作る理由だよ。俺が強くても守れる範囲は決まってて、仮にここで魔王が倒せても200年後の――いや、もしかすると10年後の平和すら守れるかわからない。そう思うんだ」


そうなると200年後にまた呼び出される。今度は誰もいないかもしれない。

――ああ、そうか。


「でもさ、その剣はたとえ俺がいなくなっても残るかもしれない。誰かに使われるかもしれない」

「もしかすると、勇者以外が魔王軍の討伐で活躍した。みたいな伝説として()()()()()()()()()()()()()語り継がれるかもしれない」


そうなれば、もしかすると次に召喚されたとしても彼らに……。


「そうなればさ、俺一人が活躍するよりずっといい結果になると、そう思うんだ」


始めはこんな世界にいたくないという理由だった。


だが、リンドウが生きていることがわかって、錬鉄の絆の彼らとともに戦ううちにその思いのせいで彼らとの関わりがなくなることの方が恐ろしく感じるようになった。


次にここに来たとしても通りすがりの吟遊詩人が彼らのことを覚えている。そうなったら何もないよりもずっと良いだろう。


「全部を語れたわけじゃないけど、俺が剣を作ったのはそんな理由があったからだ」


俺が話し終えるとほぼ同時に、彼は決断をしたらしい。


「ケンジさん」

「うん。どうするか決めたんだね?」

「はい。提案を受けることにします」


ただし、と彼は続けてこう言った。


「絶対に有名になってこの剣が語り継がれるようになります!!」

「うん、楽しみにしてる」

「ところで何ですけど」


唐突にシャロンが話を遮って言った。

「この剣には名前はあるんでしょうか?」

「あー。ないと話に上がらないよねぇ」


ケイトも続けてそういった。

名前か、

「大喰らいの魔剣……いや、ひねりがないな」


そういえば魔王軍のキメラは何という名前だったか。

名乗っていた気がする。確か……


「『グラトニー』、そのままだとなんかヤダし、『グラム』にしようか」

魔剣グラム(大喰らいの魔剣)ですか、いい名前ですね」


そんな感じで剣の名前は決まった。

その後依頼をこなしながら剣についての詳細な説明をしたところ


「えぇ……折れても治るの?」

「せ、成長?何をどうしたらそうなるんですか……」


ドン引きされてしまった。なんで?

魔剣グラム

有史以来最も歴史上で語られた魔剣。

刃が伸びる・増える・斬撃が飛ぶ・増えるなど様々な機能が語られ、それは聖剣の機能では?というものも存在する。属性を持っている場合などもありそれらは一定ではない

実際の機能は剣身の再生・成長・そして持ち主の死後は自らの魔力で結界のある人気のないランダムな場所に転移するというもの。

それは倉庫の中であったり、馬車の中の場合もある。

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