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11.おのれキメラ

早く武器を、作ってほしい

初投稿です。

異世界転移20日目。

この日も森に来ていたが、いつもと違う点があった。

「生き物がいない……?」

森に入ってから30分は経つがゴブリンの一匹も見かけない。

いつもなら聞こえる鳥の鳴き声も時折聞こえる動物の足音も、そういった生物の気配が一切感じられなかった。


こういう状況は何度か経験したことがある。

生き物の数がぐっと減るときは……


「大抵強いのがいるんだよなあ……」

前回と比べて、聖剣もなく仲間もいない現状強い敵と戦うのは不安が残る。

もちろん生半可な相手なら勝てるのだが……


「通りすがりの強い人とかいないかな、いないだろうなぁ」

強い人はほとんど最前線にいるのだろう。強い魔物を相手にする方が稼げるし。

逆に言えばこの森に現在いるであろう強いのを相手にできるのは限られている。

ここで逃げた場合大きな被害が出ることは想像に難くない。


「ああ、うん。来たね」

考えているうちにバキバキと植物ををなぎ倒す音が聞こえてきた。そうして……


「「「「た、助けてくれー!!」」」」

何処か気の抜ける声とともに人が4人とモンスターが1匹。


4人には見覚えがあった。

「錬鉄の絆?」

武器防具できちんと身を固めているがナイフを持ってスライムを狩っていたあいつらである。


そして、後ろにいるモンスターにも見覚えがあった。

腕は8本、前足4本後ろ足3本、牙も3重に生えそろっているその魔物はかつて魔王軍にも存在していた。

「キメラかよ。しかも人喰ってるじゃん……」


キメラ

魔物の中で唯一といってよい「成長」する魔物

食った動物や魔物の特徴を自分に付与するとんでもないやつだ。

ほとんどの場合スライムに毛が生えた程度の強さで、ほかの魔物などに食われるのだがこうやって極稀に生き延びるやつがいる。


奴らは馬を食えば馬並みの速度で走り、オークを食えば武器を使えて、竜を食えば火を噴き、人を食えば……


「ニンゲン……クウ」


このように人並みの知能を得て、話すこともできる。

幸いにしてくらった人間の数は少ないのだろう。言葉が流暢でなく、人の手も1本(1対ではない)しか生えていない。

魔王軍にいたやつは10000人以上の人を食らって原理魔法すら自由自在に操るとんでもないやつだったがそこまでではないことに少しだけ安心する。


そうして4人と1体の塊はこちらにやってきた。錬鉄の4人は俺に気が付くと進路を変えようとしてくる。他人を巻き込むつもりはない、ということだろう。

その意思を踏みにじるようで申し訳ないがこちらから近づくことにする。彼らも驚いたようで口々に警告してくる。

「ケンジさん⁉」

「危ないです、逃げて!」


ある程度近づいたところで魔法を使う。背中に風を受け加速しながら一気に距離を詰め、


俺の剣はキメラの腕の2本を一気に切り落とした。




「いや、マジかぁ」


キメラは俺を優先して狙うことにしたらしい。他には目もくれず俺を攻撃してきた。

既にあれから30分ほど戦い続けている。いるのだが


「結構食ってたのかな?こいつ」

キメラは無傷で立っていた

いや、無傷というのは少し違う。正確には切った部分は全て再生していただけだ。


これはキメラ自体が持つ能力の一つで、食った分を体内に貯蔵して再生する能力である。

かつて魔王軍にいたやつは半分に両断したら二体に増え、そのまま戦いを続行してきたほど強力な力であるが、再生した分だけ弱くなる……らしい。はっきりとわかるほどではないが。


あの時はどうやって倒したのだったか。

傷口を焼いていたような気はするが……


キメラの攻撃をいなしながら倒し方を思い出そうとする。


オオカミの爪を避けオーガの指を切り飛ばし、距離をとって風の刃を投げつける。

風は前足の一本を切り裂いてキメラは体勢を崩した。同じ箇所にに炎の玉を投げつけてみる。炎は狙い通り傷口を焼いた。

そして再生が弱まった。弱まっただけで再生はしているようだが。


「そうすると、剣に炎をまとえれば良かったんだけど……」


生憎現在使っているのは氷の刃をまとうナイフである。若干相性が悪い。

それ以外だと、切り付けた直後に魔法を使う方法があるが……。

(使ったことないんだよなぁ)

前回の冒険では戦闘中に聖剣の制御と剣技で手一杯だった。今回も剣技に問題がありすぎて剣と魔法両方を使ったりしたことはなかった。


ぶっつけ本番で試すことになるが……


近づいて剣を振るう。その際、左手に雷を用意する

「あ、だめだこれ」

あっという間に魔法は霧散した。仕方ないのでそのまま剣で切り付ける。

浅かったようだ。キメラの右手が3本ほど襲ってくる。

(まずいな)


咄嗟に炎魔法を発動しようとして


……やめた


「うおおおおおおおお」


キメラは横合いから勢いよく振り下ろされた剣に反応できず、攻撃をまともにくらってひるんだ。


「今です。ケンジさん!」


剣を振り下ろした錬鉄の絆のリーダーらしき男がそういった。後ろでは同じく錬鉄の絆の女の一人が精霊魔法を用意している。水の精霊だろうか、水の塊のような何かが水球を膨らませており、さらにキメラの周りを残りの2人が囲んでいる。


とりあえず雷魔法を用意し、水魔法が放たれるのを見てこちらも発動する。

魔法自体の速度の関係で同時に着弾した魔法の効果で水濡れと同時に駆け巡る電気によってキメラの動きは完全に止まった。


「今だ!」

その声で魔法使い以外の3人と俺が一斉に接近する。

キメラは豊富にある腕で防御しようとするが痺れが残っているのかその動きは緩慢だ。

それでも何本かの腕は攻撃を遮る位置に着き、


「舐めるな!」

「僕らだって成長しているんですよ!」


錬鉄の絆のメンバー2人に振り払われる。

そうしてできた隙をリーダーの男が逃さずに


「くたばれえええええええええ!」


振り下ろした剣はキメラの首筋を切りつけた。


「チッ、浅いか!」


「いや、十分だ」

事前に用意する時間さえあれば魔法と剣の両立は可能だ。風で背中を押すのと何も変わらない。


こんな風に


「焼け死んでくれ」

首筋の傷を剣で開きながら左手の炎を押し当てる。

剣が形を崩していくが、研いでおいたミスリルの刃がなおも傷を広げていく。

やがて、焼けた首がゴトリと落ちた。


先ほどまで暴れていたとは思えない静かな終わりだが間違いなく、キメラは死んだ。


静まり返った森の中で

「「「「やったぞぉおおおおお!!」」」」

4人分の歓声が響いた。


しかし、そうか……


「成長、か……」


見つかった気がする。



武器に必要な要素が。


「あー!?剣が折れてる!?」

「「「ええええええええ!?」」」


ああ、うん。力任せにふるってたからね。それはそうだね。

魔物の成長について


魔物は基本的には成長しない。強い魔物は産まれた時から大体強い。

ゴブリンは産まれた時からゴブリンだし、ゴブリンキングは産まれた時からキングである。

例外は魔王とキメラ、そしてスライムぐらいである。

なお、当たり前だが魔物でない普通の動物は成長する。ドラゴンなどは普通の動物であるため、当然成長する。

極稀に条件を満たした死霊の類も進化するといわれているが確認はされていない。

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