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醜い家鴨の子

作者: 川里隼生

 僕は経理の仕事に憧れていた。思いっきり裏方の職業に憧れるなんて変だ、と思うかもしれない。でも、僕は大量の資料を扱う経理の人を尊敬していた。経理の仕事を目指して、僕は大学に入った。


 就労支援の先生からは営業マンに向いていると言われたが、僕はどうしてもそういった仕事に魅力を見出せなかった。結果として、僕は東京のある企業に採用され、そこの経理部の一員となることができた。


 だが、せっかく入ることができた場所で、僕はミスばかり起こした。それも同じようなミスを連発した。上司は殴るでも叱るでもなく、『改善していけよ』と優しく言ってくれるのだが、その優しさすら辛かった。


 今日の帰り道、趣味の週刊誌を買うために寄った書店で、ある本のタイトルが目に入った。『醜い家鴨の子』。家の鴨と書いて何と読むのだろう。興味を惹かれてページをめくると、その答えがアヒルであることがわかった。


 家鴨の群れで生まれた白鳥の子が最初はいじめられるも、最後は美しい白鳥となって羽ばたいていく。立ち読みした情報ではおおよそこういった内容だった。アンデルセンの原作に多少の脚色を加えているようで、疲れた大人向けの童話という副題がおもしろい。


 最後のページに、白鳥の独白があった。

「育ててくれたお母さん。僕は家鴨にはなれなかったけど、これからは白鳥として生きていきます」

 白鳥は家鴨として生きたかったのではないだろうか。僕にはバッドエンドに感じられた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 短く読みやすく、それでいて社会人の悲哀がちゃんと描かれていて切ない気分にさせられました。 少し違いますが漫画版キカイダーのラストを思い出しました。
[良い点] > 白鳥は家鴨として生きたかったのではないだろうか。 という視点が好きです。
2020/09/21 08:19 退会済み
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