最初は『デビュタント』
小説を読んでいて色々とモノ申したいことは多々あれど、一番呆れるのが『デビュタントする』という言葉です。意味を解って使っておられるのでしょうか?
もし仮にわかっていて使っておいでなのだとしたら、翻訳の基本をご存じない。
翻訳の基本とは、外国語の単語に日本語訳を当て嵌めて違和感がないこと。
では、デピュタントの意味とは?
男性形『debutant』・女性形『 debutante』:初舞台を踏む俳優、社交界初出の人。つまりdebutする人という意味なのです。これを前出の翻訳の基本に当てはめると『デビューする人する』になって違和感しかありません。
デビューの意味は初社交界と訳されていますが、要は『〇〇界に初めてのお披露目』と考えればよいと思います。
そもそも語尾の -ant・-entは名詞に付いて人を表す接尾辞なので(形容詞に付く場合もありますがそちらは性質を表す意味になります。debutは名詞なので人)『デビュタントする』という風に動詞に使ったりはしません。デビュタントである、とか、デビュタントになる、とかそんな感じで使いますよね。
考えてもみてください。『彼は今年プロ野球選手としてデビュタンした』とか『新人歌手としてデビュタントする』とか言いますか? するのは『デビュー』ですよね。
男性形、女性形があるのでわかる通り、『デビュー』は元々フランス語ですが英語でもデビューで使われています。make one's debut で「デビューする」になります。
ちなみに同様の接尾語を使ったものは、クライアント(依頼人)、サーヴァント(使用人)、プレジデント(大統領)などがあります。
余談ですが。
デビュタントと聞くとウィーンオペラ座のデビュー舞踏会が浮かびます。
パリのオペラボールのデビュタント達は色とりどりのドレスを身に纏って華やかな雰囲気ですが、ウィーンはね ハァ。それはそれは何と言いましょうか。格調高い? 古き良き貴族社会の雰囲気? 女の子の憧れそのもの。的な?
ウィーンオペラボールのデビュタントになるためには、まず世界中から集まったカップルの中から試験を受けて選抜されなくてはなりません。百と少々のカップルだけが選ばれる狭き門なのです。デビュタント(男性はデビュタンである必要はなかったと思います)のカップルに選ばれると猛特訓が始まります。
世界中から集められたので精鋭だろう!って? その通りでございます。選抜試験に勝ち抜くため何年も専属のダンス教師に教わるお嬢さんも多いとか。でも、ウィーンは別!
ともあれ、数々の試練を乗り越えていよいよ舞踏会の当日。オペラ座のボールルーム(舞踏室)に集った紳士淑女の前に、付き添いの貴婦人に先導されて二列に並んだデビュタントたちが現れます。黒のスワローテイル(燕尾服)に身を包んだパートナーに手を預け、真白のドレス(白無垢指定、個人持ち)を身に纏い、お揃いのティアラ(記念品でもらえる ウラヤマ)を着けて静々と大階段を降りてきます。
そして始まる舞踏会。最初に踊るのは今年のデビュタント達のみ。最初の一曲は左回りのワルツ(←ここ! ココですココ!!)
ウィーンオペラボールのデビュタントによって踊られるワルツは逆回転。それ故に猛特訓しないとパートナーと足が交錯して転倒してしまうのです。ラストダンスは右回りと左回りが一緒に踊られるんじゃなかったかな?
いやぁ ほんっとうに映画っていいですねぇ! ィァ リアルだし。 でもまぁ映画のワンシーンみたいにステキでした。
今は昔のお話です。
何かの折に廃止になったと聞いた気がします。