夢
僕には好きな人がいて、でも僕はその人に直接会ったことがないのです。その人を見たのは夢の中でした。月が水面を照らす夜中の浜辺で僕はその人と会いました。その人は色の白い女性で、闇の中だとその白さが輝いて見えました。その人は僕を見ると目を細めて笑うのです。僕はその人がさっと差し出した手を掴もうとして、目が覚めてしまいました。だから、その女性と一度しか会ったことがないのです。時が経ち、おぼろげな記憶をなんとか探り出して、僕はその人のことを思い胸を痛めます。僕は夢の中の人に恋をしてしまったのでした。それが虚しいとは思いません。なぜなら、ぼくは毎夜、あの人に会えるかもしれないと願って目を閉じるのですから。その瞬間は、とてつもなく幸福です。