08 不穏
待たせてしまってごめんなさーい!!
こんな感じで時々不定気になるので許してくださるとうれしいです……はい、すいませんでした~!!
目をあけると知らない天井が映る。まあ当然のことですが。現在の時刻は午前4時半くらい。
「んーっ……なかなかこの布団もいいですね…。なんの素材でできてるんでしょうか……もういちど寝たくなってきますよ、これ。」
TFOの舞台は魔法やファンタジー要素はありますが時代的には中世を元にしてるそうなので、文化や技術は今よりも拙いと思ってたんですけど……もしかしたらそうとは限らないかも。この布団をリアルに持って帰りたいくらいですし。いやほんとに。
「あっ、おきたかな?」
「あ、おはようございますサラさん。」
「うん、おはよう…じゃあ早速採りに出掛けましょ!
えーっと……これがユウのギルドカードと……はいっ、このコートも着てね。ほとんど太陽の光を防いでくれるよ。」
サラさんは鉛色をしたカードのようなものをくれた。地下墓地で見たものと同じですねー。どうやってぼく専用のギルドカードを作ったのでしょう…。
あ、サラさんの言葉に甘えてコートも着ます。まぁ、着ないと死ぬだけなんですが。
そういえば三人一緒にギルドにいくはずでしたけど…見た限りサラさんとぼくしかいないようです…。
「もう採集にでかけるんですか?…確か、まずはジャックさん逹と一緒にギルドに行ってから――でしたような……?」
「あっ!ちょっと、ね。今ギルドは大騒ぎしてて人が集まってるからさ。詳しいことは後で話すからとりあえず門に行きましょ」
ギルドが大騒ぎするって何が起きたんでしょうか……後で話すと言ってるので今は素直に従った方が良さそうですね。いまここでぼくの正体が露になれば余計に大騒ぎになりますし…。
しばらくサラさんについていくと入るときにもみたこの街の門が見えた。こうしてみるとこの街もなかなか大きい部類にはいるのかな。壁と門の造りが強固そうにみえますし。でも…何でこんなにもしっかりとした防衛なんでしょうか。
「うん、見えてきたね。で、ちょっとここでユウにはして貰いたいことがあるんだけど…いい?」
「はい。だいじょぶです。」
「ありがとっ。えーっと、まず私の採集仕事は一応ギルドを通して行ってるの。だから採集した何割かはギルド買い取るんだよね。そこまで高くないけど採取事態は難しくないし、おこづかい稼ぎには持ってこいなの!でも、絶対安全かと言われればそうでもないの。」
「だから子供逹もぼく逹と一緒に行動するということでしょうか?」
「そう!ただ、私一人じゃ面倒を見きるのは厳しいから信頼できる冒険者をギルド側が派遣するの。たぶんいつもの人だから問題ないとは思うけど……もしかしたらユウのことを訝しむ可能性もないわけではないの。だから、これからは私の親戚の子供っていう設定でいてほしいの」
んー…確かにその方が問題が起こりにくいとは思いますけど……なんとなーく、サラさんの子供好きな性格が見え隠れしてるんですよね…ん、もちろんその設定に従うんですけども。
「わかりました。」
「ふふ、もうちょっと子供っぽくてもいいんだけどなー。おっ、あそこで手を振ってる筋骨隆々な男がその人なんだけど、見えるかな?」
「はい。」
先程から見えていた門前にいる人達を再び視た。
とてもゴツい図体のおじさんが子供を引率してるという…ちょっと絵面が面白いことになってます。背中にしょってるのはたぶん大剣なのかな。鑑定したら解るとは思うけど…うん、やめときます。
子供は全部で丁度30人ですねー。年齢的にはぼくよりも低い子ばっかりでしょうか。
ちなみに今は空間把握を使用してます。その代わり目はとじてますが。
「おーい!!サラ嬢さんや!早くこっちに来てくれぇ!?こいつらは俺の手には余るんだぁ!頼むからよぉ!!」
「……どう?なかなかに面白いおじさんだと思わない?」
「そうですね。なんだかんだ言って面倒見の良さそうな人に見えます。」
「そうなのよ!だから、子供の引率係としてギルドだけじゃなく孤児院側からも信頼されてるのよねー!さて、いつまでも意地悪するのもかわいそうだし、そろそろ行きましょっか」
ちょっと駆け足で子供逹のところに向かうと、真っ先に子供逹がサラさんのところに飛び込んでいった。比喩じゃなくて文字通りにダイブしてるんですけど……着地だいじょぶなんでしょうか。
「おう、サラ嬢さんなら問題はないだろうよ!ほうらよく見てみな」
ん!……一人一人しっかり捕まえて、丁寧に地面に下ろしてあげてますね。それも一瞬の間に。やっぱりサラさんって身体能力高いみたいですねー。まあ種族的には納得なんですけども。
「相変わらずあの身体能力と動体視力はすげぇな……俺なんて歳のせいか徐々に衰えを感じはじめてるってのによ~…で、お前さんは何者なんだ?」
「ぼくはユウって言います。昨日からサラさんのところに泊まりに来てます。どのくらいの期間になるかはわかりませんがよろしくお願いします」
「お、おう。泊まりに来たってぇこたあサラ嬢さんの親戚の子かなんかか?」
「そうだね!この子とは久しぶりに会ったんだけど、特に変わりなし!」
「ハハッ、そりゃまあそうだろうな。エルフの血を引いてんだしよ。俺はベセミール、よろしくな」
「はい。よろしくお願いします。」
◇旧精霊の森
「――――といったわけでここは元々精霊が棲んでいたって言われてるんだよね。昔はほら、精霊信仰だったでしょ?でも今では神様信仰に変わったからね。そのせいで世界から精霊が消えたって言われてるんだ。でも私は今もいると思っ―――――」
門を出てから約20分程、ずっとサラさんは今いるこの森についての講釈を流してます。20分間も喋り続けるのはすごいと思いますが……何よりもすごいのは子供逹が全員この話を真剣に聞いていることだと思います。一応ぼくも聴いてますが。
後方にいるベセミールさんを伺うと周囲の警戒は怠ってないみたいですが、講釈は話半分に聴いているような気もします。すでに知ってたりするのかもですね。
話の邪魔になら無いように隠密忍び歩きをフル活用して後方のベセミールさんのもとに向かう。少し聞きたいことがあったんですよね。
「おう、お前さんか。どうした、なんかあったか?」
「はい。ひとつ質問いいでしょうか。」
「おういいぜ。俺が答えられるものならな」
ということで、今朝サラさんが言っていたギルドのわちゃわちゃについて尋ねてみます。
「あぁ~……あれなぁ…何があるかはわからんから一応サラ嬢さんの家族や俺以外には喋らんでな?」
「わかりました。」
そういえばサラさんも言い渋っていたような…。割りと大きな事件でも起きたんでしょうか。
「あー、まぁ簡単に言やぁ住民の大人数の死亡事件だな。と言っても自殺とかそういったもんじゃなくてな。あのサラ嬢さんが言うには何かによる毒殺だそうだ。どうやら自然的なものではないみたいだな」
「なるほど……それで、なんでギルドが大騒ぎするのでしょうか」
「ん?あぁ、領主様が直接依頼しに訪れたからだな。そのことに中にいたやつらが騒いでな、後はその騒ぎに野次馬が集っていったってかんじだ。」
なるほど。だから、人が多く集まってるって言ったんですか。それに領主さんに会うのはぼくにとって危険なことですし。
「依頼内容はこの事件の解決ってところだ。現状被害が増え続けているからな。領主様もこれはヤバい事態だって感じたんだろうよ。ただ、領主様が直接依頼したってことはほとんどのやつは知らないからな。そこだけはさっきも言ったように他言無用でな?」
領主さんが直接訪れたのにほとんどの人にばれてない……箝口令でもしかれているのですかねー?どうであろうと約束はしっかり守りますけど……厄介なことにならないと良いんですが。
「わかりました。教えてくれてありがとうございます。」
「おう、他にもなんか知りたいことがあれば来いよ。サラ嬢さんの頼みだ、教えられることはすべて教えてやるからな。」
…ん?何か引っ掛かるような気がしますが……とりあえずもいちどお礼を言って、前方に戻る。どうやらお話は終わってたようです。
「さて、そろそろ着くよー!みんな準備~!!」
「「はーい!!」」
これだけ歩いても元気で一杯なんですか……きっと子供の体力って無尽蔵なのでしょうねー。
視界が少し開けた場所には森で覆い隠されていた日光が当たり、多くの草花が咲いていた。
コートのおかげでダメージは最小限で済んでいます。
「よし、じゃあ~採取かいしー!!」
サラさんの合図と共に子供逹は草花を取り始める。その様子を見る限りひとつひとつ丁寧に採取してるようで、薬草採取に慣れていると分かる。
そんな感じで子供逹の採取姿を眺めていると、サラさんがこっちに近づいてきた。
「ごめんねっ!採取の仕方を教えるの忘れてた!……ほんとにごめんなさいね?代わりと言ってはあれだけど、この本をあげるね…」
謝りながら、そこそこ厚い『使える物!』とかかれた本を渡してきた。題名だけじゃ何についてかかれてるものかさっぱりわかんないですよね、これ。
「も、もしかして……読書、嫌いだったりする?」
「いえ、本を読むのは好きなのでうれしいです。早速読んでいてもいいですか?」
「やった!うん、もちろんいいよ!―――ふぅ、よかったぁ」
安堵の言葉を洩らしながら子供逹の方へ戻って行った。
背もたれに丁度良い木に寄りかかり、貰った本を開いてみた。最初ページには目次があり、どうやら薬効効果のある草や花の採集方法から薬の調合方法、さらには毒薬や身体に良い料理のレシピまで書いてあるみたいです。
注釈も丁寧についていて図鑑というよりかは豆知識本みたいな感じですらすらと読み進めることができますね、これ。うん、ぼくは好きかなこういう本。ただの図鑑だと、本当に自分の興味のあることについてでないと読み進めるのが辛くなりますよね。
でも、自分の好きな本に雑学っぽく入ってるとすらすらと頭に入ってきたり……そんなことありません?
自分の近くに生えている草花が載ってないかを探したり、実際に正しい取り方を試したりしていると、どこからかすすり泣くような声が聞こえた。
んー、何かさわったら幻覚を起こすような草花とかあったのかな。
〈―――――…〉
んー?……周りの子供逹も反応してないですし……ベセミールさんも特に気にしてない……
〈―――――…〉
一旦目を閉じて空間把握を少しずつ拡大させていく。徐々にすすり泣く声が近づいてく場所を探っていく。
ん、どうやら一番近く聞こえる場所がここから少し離れたところのある大きな湖の中心部みたいです。ただ大きいだけの普通な湖のように見えますが……とりあえずこれは鑑定してみますか。
[人工物(自然)]呪いの源泉
レア:Epic 品質:A 耐久:5000
精霊の宿る自然を媒体として呪いへと変貌させた人工的な呪物。媒体とするもの、呪いとする材料によって効果が異なる。
《???》
備考:???
「……ーい。おーい!起きろっ!」
「んっ、はい。起きました。」
「ほれ、もう終わりだ。帰るぞー。」
空間把握に集中しすぎて、本体の方が疎かになってたみたいです。目の前には筋骨隆々としたおじさんが屈んでました。一瞬驚いたのは内緒です。目を閉じていたので眠っていたと思われたんですかね。
「うん、みんないるね。よし、帰るぞー!」
「「はーい!!」」
行きと同じようにして、サラさんに従って森を歩いていく。
サラさんが、今度は今日採ったと思われる草花について話していた。
〈――たすけて…〉