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07 団欒


「もう一度聞くよジャック。この子は一体なにさね?」

「い、いや。なにと言われても……身寄りのない子供だ!」

「……はぁ、いつからここは託児所になったんだい。さっさともとの場所にかえしてきな。」

「だ、だが…」

「あたしはねぇ、こんな怪しいやつを家に入れる気はないさね。こちとら商売をやってる身さ。信用問題に関わることはしたかないよ」


 んー、この一週間何をどうしたらここまで嫌われるのかな…。たしかに他の人たちが悪いことをしたかもしれないけど…さすがにちょっとかなしい。

 まぁ、他のプレイヤーたちは既に別の街に行ってるみたいだから第二陣が来るまではこの街も静かにできるのが救いですねー。

 これが原因で家族関係が悪化することになるのも嫌ですし。うん、やっぱり出ていこう。


「だがな、こいつは他のやつらとは違うんだ。」

「そりゃあ違うだろうねぇ……そこな子は人の理を外れているからねぇ」

「えっ……何でわかったんですか?」

「あんたももってる《鑑定》のスキルさね。」


 ん、さすがにここまでばれたらほんとに出てかないと………てか、吸血鬼が街にいる状況って客観的に見たら大変なことだよね…。


「うん、ここまで迷惑をかけてごめんなさい。ジャックさん、お世話になりました。あ、その人たちのギルドカードをお願いします」


 んー、次はどこに行きましょうか。ん、地下墓地でしばらくレベル上げをするって言うのもいいかも。あそこなら初手は自由にできますし。ただ……最初だけ攻撃当てても倒せるのでしょうか……進化したとは言えレベルは0な訳ですし…。こうもステータスの数値が見られないことが辛いとは思わなかったですよー…。


「待ちな」


 そんなことを考えてたら急に呼び止められた。


「えっ、あ、はい。どうかしましたか?」

「どうかしたもなにも、あんたはどこに行こうとしてるのさ」

「えっ?んーっと、もとの場所に返すから……地下墓地ですかね?」

「!……やっぱり俺が何とかして」

「あんたらはあたしの言葉をしっかりと聞いてなかったのかい?怪しいやつは入れたくないだけさね。そこな子や、自分の格好を見てほんとに怪しくないと言えるのかい?」


 はっ!?たしかに顔も見せず真っ黒な影をまとってたらそりゃ怪しさ満点です。でもな……これ解除したらはだかが……んー、どうしよう。


「ジャック。奥のタンスから私の服をとってきな。この子ならちっちゃいから着れるだろうさね。」

「奥の部屋だな。わかった」


 ジャックさんが奥の部屋へと入っていった。


「さて…実はすでに、ここに何着か服はあるのさ。だから早くその影を解除しな。」

「んっ?…わかりました」

「ほう――――なるほどねぇ……さぁ、早くこの服を着んな」

「ありがとうございます。」


 うわ~……はだか見られましたぁ…はずかしいです。ま、気を取り直して、服がもらえましたー!グレーのシャツに黒っぽい青の短めのローブ、ズボンは……デニムみたいな素材でできたハーフパンツです。全体的に動きやすい服装ですね。でもこの服をどっから取り出したんでしょうか……明らかになにもないところから出てきたんですけど。

 まぁ、感謝ですね!この……そういえば名前きいてませんでした。


「うん、よく似合ってるさ。」

「ありがとうございます。あの、名前聞いてもいいですか?」

「ん?鑑定で見なかったのかい?」

「はい。さすがに失礼かなって思いまして……(ジャックさんは見ちゃいましたが)」

「ほう、それは正解さね。勘がいいやつだとこっちの鑑定に気がつくこともあるのさ。」

「お、おい母さん!奥のほうに服なんてなかったぞ!」

「そりゃそうだよ。あんたをこの部屋から出ていかせるための方便さ」

「お、そうだったのか。なら最初からそういってくれよ!まぁ、いいけどよぉ。…おっ、だいぶ似合ってんな。てか素顔そんなだったのか。なかなか綺麗顔立ちしてるんだな。しっかしちっちゃいなー!ほんとに。俺と50cm以上差があるんじゃねえかこれ。ちゃんと食ってんのか?」


 んーっ、素直にこう褒められるとはずかしいったらないです!まぁ、見られても問題のない顔ってことで。それにしてもちっさいって言うなちっさいって……割とコンプレックスでもあるんですから、そこ。


「とりあえず晩飯の用意するから準備を手伝いな。あとあたしのことは"ヴィン"とでも呼びな。」

「わかりました。あと何から何までありがとうございます」

「気にしなくていいさね。ただし、何かしらのことは手伝ってもらうよ。あと、自分が異邦人かつ吸血鬼ってことは黙ってな。くれぐれも協会とギルド、ないとは思うけど領主館にはいかないようにするんだね」

「はい。」











「ごちそうさまでした。」

「いつも通りうまいんだよな~。料理人としてやっていけんじゃねえかこれ。」

「はぁ……今日は嫁さんは帰ってこないのかい?」

「んー?そろそろじゃないか?」


 現在はご飯を食べ終わってゆっくりしているところです。晩ごはんはぼくはログアウトすれば必要ないから大丈夫ですってことを伝えたら、これもコミュニケーションの一つだから遠慮しなさんなって言われたんですよ。この家は暖かいですね。


 

 皿洗い&片付けを手伝っていたら、玄関からドアの開く音につづいて

「ただいま~」っていう女性の声が聞こえた。


 あ、ちなみに今は空間把握を切ってます。せっかく耳も目も正常に戻ったんですし。相変わらず目を開けた状態だと、空間把握は頭がいたくて使えたもんじゃないんですよね。ただ、耳はなぜか空間把握してるほうの音が優先されるようになってまして、切り替えができるようになってました。これ目でもできないんですかねー?


「おう、おかえり!今日はどうだった?」

「相変わらず売れ過ぎて、供給が追い付いてないです!もうっ」


 あれ?思ったよりも若い人だけど…ほんとに奥さん?


「あっ!こんにちは~。ねぇジャック?あの子はどちらさまなの?」

「あぁ、ちょっといろいろあってな。拾ってきたんだ。」

「はい。ユウといいます。しばらくの間お世話になります、よろしくお願いします。」

「へぇ、ずいぶんと礼儀正しいのね~!んー、かわいいっ!」


 ぐへぇっ……どうやったら一瞬で机を飛び越えつつ着地と同時に抱きつけるんでしょうか…さりげなく着地音もほとんど聞こえなかったですし…。見た目20前半の女性でやせ形の体型なのに…。というか背骨がミシミシ言ってるような……あれ?この人ほんとに人間ですか?……ん、意識がなくなって……


「まてまてぇっ!ストップ、ストォッープ!!」

「はっ!…ごめんなさいね。ついつい可愛らしくて」

「ったくよぉ…お前が子供好きなのは知ってるが初対面の人にいきなりこんなことするか普通。」

「んふふ、ちょっとね。」

 ((たぶんあれくらいし) (ないと線引きしちゃう) (のよあの子))


「びっくりしましたけど、もう大丈夫です」

「本当にごめんね?私はサラ。よろしくね」


 さっき抱きつかれたとき、この人からすごい草の匂いがしたんですよね。一体何の店をやってるのでしょうか?ここは雑貨屋だって言ってましたけど。


「いつもなんでそんなに元気なんだいサラ嬢や。見てるこっちが疲れるよ。」

「それが私のとりえですもの!」

「はぁ……この子は異邦人さね。吸血鬼の。」

「あ、やっぱりそうかー。って吸血鬼ぃ!?……それ、他の人には言わない方がいいでしょ?」

「そうさね。なるべく秘密にしておいてくれると助かるよ」


 その後少しぼくのことをきにしつつも、今日の事を話して盛り上がる、静かで暖かな四人での団欒が始まった。

 

 どうやらサラさんは薬屋を経営してるみたいで、材料採取から作成まで自分の手で行っているそう。そのぶん売る数は少ないみたい。ただこの街では信頼されている店のひとつなのだとか。

 他にも何でサラさんは若く見えるのかとか、ジャックさんとの馴れ初め話とかもあったけど省略しておきます。



「よし、じゃあ明日は休みだから…と、明後日用の仕込みをやらないといけないからそろそろ部屋に行くね。」

「あぁ。てことは明日は採取か?」

「かな。といってもこの時期にとれるものは多くないからすぐに終わると思うよ。」

「たしかに今の時期じゃ少ないだろうねぇ。比例して魔物の危険も少ないから安全ではあるさね」

「……そうだ!どうせならこの子も連れていってもいいかな?私と一緒なら問題なくギルドカードも作れるでしょうし」

「そうだな。俺もギルドに用事があるから明日一緒に行くとするか」

「そうだねぇ……なんならこの子に簡単な薬の作り方を教えてみたらどうだい?」

「えー。それならおばあ様が教えてあげればいいんじゃないの?私よりか上手だしさ。」

「あたしは人にものを教えるのが苦手なのさ。それにちょっとずるして作ってるからね。真似できるやつがいたら見てみたいよ」

「んー、わかった。とりあえず教えるかどうかは置いといて、明日の早朝に取りに行こう」


 ん!早朝かぁ……起きれるかな?


「わかりました。じゃあ今日はもうログアウトします」

「ログアウト?…ふむ、さっきも言ってたやつだね。わかったよ、それじゃあ体は運んでおくからさっさと帰んな。」

「ありがとうございます。それではおやすみなさい」

「おう。お疲れさん」

「おやすみ~」









「ふわぁぁ……んっ、なんでゲーム用のチェアがこんなにも心地いいのかなぁ…あ、そういえば晩ごはん食べてないや…」


 なんとか睡眠へと誘う魔の椅子から抜け出せた。

 あ、チトセは晩ごはん食べたのかな?いや、でも料理できないはずだから……やっぱりね。


 案の定、チトセの部屋に入るとまだTFOをしてた。遅れた6日間を取り戻すためにぶっ続けでやってるんだろうなとは思ってたけども。

 エナジードリンクの"怪物"の空き缶が3缶ほど置いてありますし。


「うん、なにか作りますかー」


 


 んー、とりあえずみそ汁の残りを温めて…ご飯は冷凍したのがまだ残ってるはずですし、鮭ってまだあったかな?……ん、丁度二尾ある。朝御飯と似たかんじになるのは許してください。後はおかずをもう1品か2品作ればいいよね。

 改めてヴィンさんのごはんおいしかったなぁ。本当にゲームのクオリティを越えてますよね、あれ。




 うん、できた。

 

「おー!晩飯だー!」

「タイミング良すぎだよね?」

「これこそが血のつながりの力ってものだよー!」


 そんな限定的な血のつながりの力はいらないかなー?というか

何でそんな例えを引っ張ってきたんでしょうね。ボケたかったのかな。まぁ、いいんですけども。


「ん、そうだった。この前聞き忘れてたんだけど、今種族がゾンビから吸血鬼になったんだよね。」

「ふんふん、ゾンビから吸血鬼ってことは特殊進化だ………あれ?ゾンビの特殊進化先ってヴァンパイアだよねっ?!えっ!なんで?」

「あ、やっぱりそうなんだ。たぶん称号の無病息災が関係してると思うんだけど……この情報って掲示板とかにのせた方がいいのかなー?」

「ダメダメダメっ!ぜーったいだめだからね!」

「えー?でも有用な情報って掲示板とかに載せるものじゃないの?」


 ぼくだってモンスターの分布とかスキル効果とかを掲示板で確認したりしてますし。そういった情報が増えることっていいことですよね?


「うんうん、だいたい考えてることはわかるよー?血の繋がりのちからでねっ!だけどね、そういった情報を載せるのは検証したりするプレイヤーとか自己顕示欲を満たしたいプレイヤーだけで充分!!わざわざ自分の手をさらすなんてことはしないほうがいいにきまってるよ!」


 なるほど……でもそういった人たちのお陰で助かってるわけですし、恩返し的な意味でも少しくらいのせたほうが「それでも、だよ」

「んー、そこまで言うならわかったよ。うん、やめておく」

「まぁ、ユウのそれはのせても無駄って事もあるんだけどねっ?」

「ん、どういうこと?」

「いや~、ビックリしたよ!まさか四字熟語の称号を持ってるとはっ!さすがだねっ」

「四文字熟語の称号っていいことあるの?」

「もちろん!その称号にはわかってるだけで3つの特徴があって、1つは一人しか獲得できないってことでもう1つが与える影響が他の称号よりも大きいこと。最後がスキルみたいに効果の上昇をはかることができるってことなんだよねー!まぁ、効果の上げかたは詳しく知らないんだけどさ~」


 たしかに一人しか獲得できないならのせても意味ない……というかほんとに手の内見せるだけになるんですねー。それならのせないほうがいいですか。

 

「あ、ごちそうさま!じゃあ私はTFOにもどるけど……まだ会えない感じかなっ?」

「んー?あっ、一応始まりの街にぼくはいるよ。吸血鬼になったおかげで街に入れるようになれたから」

「えっ?始まりの街にいるの?………んー、そっかー…。わかった。私も頑張って始まりの街に入ってみるねっ!」


 …………皿洗いと片付けをやらなきゃいけないんですかー……まぁやるんですけども。








 んーっ……おわったー。あ、明日の朝御飯どうしよう……今がだいたい21時だから、3時半に起きれば問題ないですよねー?


「ん、明日は早いからもう寝ようかな………んふぅー♪……じゃあ…おやすみなさい~……」



あけましておめでとうございます!今年もよろしくお願いします!!

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― 新着の感想 ―
[一言] おお~ とうとう街でバレないようにドキドキ生活の始まりだ お婆さんにあっさり正体見破られちゃったけど、 他の人にも見破られたらいろいろ面倒ですよね。 なんとか誤魔化しきりたいね
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