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26 変わらないもの


「旅……ですか…」



 ぼくがこの()()に入り始めてから1ヶ月が経とうというところ。

 公式イベントの後にあったメンテナンスで、こっちがリアルの三倍の速さで日数が経過するようになったけど。それでも毎日二十時間ログインしてたぼくには半日程の影響で済んでいる。


 ひと月の付き合いの重さをどう感じるかは人それぞれだとは思う。もらった愛情や時間の程度、技術や物等の恩。インできる時間の長さもその人の環境で変わるのはもちろんですし。



 ぼくの目的は"死ぬ"こと。それは今も同じ。けど、ただ死にたいわけじゃない……ううん、正確には"きれいな死に場所"を求めているんだ。

――たぶんそれが、ぼくの求める、到達したい目的地だから。


 生きることに意味が見出だせないから、死に存在意義を見つける。人生の過程じゃなくって、終着点にしか目を向けられない。……()()()()()()()()()()



(ん……人の本質って……本当に変わらないんだなぁ…)


「………もちろん、あんたを一人で送り出すつもりはないよ。王都に着くよりも前に、ここに現れるのは想像がつくからねぇ。」

「誰かが一緒に来る…ということですか?」

「そういうことになるねぇ。ま、あたしが信用してる人物ではあるよ……まぁ、その辺はそれはあんたが直接決めることなんだろうね」

「………もうすぐ来るんですね?」

「あんたが旅に出るなら来るだろうね。別にこれはあたしの勝手な行動さね。…恩の押し売りなのさ。」 


 正直なところ、一人で旅をしたい。たしかにヴィンさん達はぼくにいろんなものをくれた。愛情の大きさは理解してるんだ。それがぼくの欲しがっているものなのも知っている。でも、ぼくは…それを貰う価値があるような人間じゃないって思ってる。また、暖かさを与える側にぼくの拗れた感情論は関係ないのもわかってる。


 だから、ぼくは変わらない日常を過ごしてた。慈愛を甘受して、生きていた。でも、どこかに壁を、作ってしまってたんだ。



「ありがとう()()()()()……皆さんがぼくにくれたものがなにかはしっかりと伝わっています……だから…だから、ヴィンさんは決して恩の押し売りなんかしてません……。

 ん、ぼくがその人を信用できるかは、ちょっとまだ分からないんですけど……でも、ヴィンさんが決めた方なので……ご紹介をお願いしてもいいですか…?」

「……あいよ。なら、荷物をまとめて裏口の方から行きな。会って、信用できないと思ったら、一人で旅に出ることさね。正午までなら王都へ向かう方の門番はあいつさ。何事もなく出ることができるだろうね。あたしも陽が上りきるころにはここを出ているだろうさ。」



 ヴィンさんの思ったよりも早い出発に驚いたけど、時間ギリギリまで待っててくれてたことの方が衝撃的だった。ぼくが異邦人で、今日この世界に来るのが確実とも言えないのに。置き手紙で知らせることもできたのに。


「本当にお世話になりました――サラさんやベセミールさんにもお世話になりました。ありがとうございます……と直接言えたら良かったのですが…」

「はん、そんなもの王都から戻ってきたときにでも言いな。あたしよりもあいつらは若いんだからね。数年経ったところでぽっくり逝くことはないのさ。もちろん、あたしもピンピンしてるだろうさ。

――さ、もう行きな。」



 ヴィンさんが立ちあがり、手をしっしっと振りながら、部屋を出ていく。足音とかから、向かう先は表口。もう、準備を終えてたんだ。しばらくして気配を感じられなくなる。ぼくの感知範囲から外れた。本当にヴィンさん達はここから離れるんだ…。



 ぼくは荷物をまとめたあと、もう一つ感知できている人物ののもとへ向かった。裏口横の壁に背を預けている人のもとへ。



「よっ、お前さんがヴィンちゃんの言っていたチビ助か。それにしても綺麗な顔だな~?まっ、そんな貧相な身体じゃあなぁ。ちゃんと食ってんのか~?」


 手をあげた軽い挨拶のあとに、中腰になりながら顔をのぞき、笑いながら背中を叩く。


「とはいえ、互いに名前がわからないんじゃ、この先何をしようが始まらないからな。おっと、ナニってそっちの方じゃないぜぇ?勘違いはノン ノン。つーことで、俺は【万年Bランク】の二つ名を持つBランク冒険者、"ジョンドゥ"ってもんだ!よろしくな~!」


 


 第一印象……さいっっっあく!!……です。






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大盾街ファステクト(始まりの街)(雑貨屋)



「はぁ………いんや、あの子にはああいう態度の方が良かったのかねぇ……近寄ろうとしなかったのはこっちも同じ…ということさ。」


 あたしたち現地民は異邦人に対して"フレンド登録申請"なるものを送ることができる。しかし、異邦人から現地民に登録申請は送れない。正確には、現地民が異邦人を友達として認めていないと、送るという選択が不可能となる。

 つまりは単方向なものなのさ。女神様とやらが作ったルールでは。



「あの子が申請してこない時点で分かってはいたんだけどねぇ……人間だけ…かい……あの子にとっては生き地獄なのかい?この世界も……


 壁をなくそうとしたのは失敗だったということさな……今は内側に入れる存在の方が重要ってことだったのかねぇ



 まったく。あたしがこんなに絆されるとはね。らしくないじゃないか。

――ここからは気を引き締める時間さね」


 


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