24 意外な結果
「………なんでこんなことになったんでしょうか…。」
死亡して、待機所に来て少し。最後のアナウンスが気になりログを確認。うん……呆然です。
いや、まぁ。隠しクエストがあって、それをたまたまクリアしたのは納得できます。クリア条件を見る限りだと、死なずとも生命の魔力を一定以上捧げれば誰でもクリアできるようなものでしたし。きっとあの結界を通るにも正規の手段があったはずです。
そう、クリアしてしまったこといいんです。既に終わったことですし、いろんなものを得ることが出来ましたから。ただ、問題はその後なんですよ!なんですかこれっ!
〈生命の有翼古竜がPN:ユウのパーティーに加入しました(05:56:43)〉
確認しましたが、しっかりとパーティーに参加してました!ムカデさんの名前の下にちゃんと存在してましたよ!!
「………っふぅ……152番の苺ショートケーキとアイスコーヒーのLをお願いします。」
〈注文、承りました。
受け取り口からお取りください〉
早い……でも美味しそうです。
「んっ、甘い。」
やっぱり、頭を冷やすなら甘いものとコーヒーですよね。それにここならどれだけ食べても心配はないですし……万が一でもぼくは魔力体だから大丈夫、大丈夫…。
「って、現実逃避してる場合でもないんですよね……んぅ…こまった」
んー、ケーキを食べながらヘルプで今回のイベント詳細を見てるのですが……どうやらランキング褒賞というものがあるようです。[生存時間][モンスター討伐数][プレイヤーキル数]の三つのランキング上位5組に与えられるというもの。
これらはヘルプから飛べるランキング一覧で自分の順位と上位999組までを確認できるんですが…。
―――すごい勢いで[生存時間]以外の順位を駆け上がってるんですよね…。その原因は言わずもがなです。待機所のテレビにも映ってます。
辺り一面の地面を隆起させてイビルトレントを根っこごと空中に放り出し、風の刃と思われる何かで一瞬にして斬り裂いて倒す。もはや自然災害とも言える攻撃に、近くにいただけのプレイヤーさんまで巻き込まれてますし……。それでも、攻撃後には元通り綺麗になってるあたり自然には気を遣ってる……のかなぁ。
んー、古竜さんがパーティーにいる時間が約六時間までなので[生存時間]でのランキング上位は狙えないですけど……このペースで行くと残り二つは上位固いかも。
このまま蹂躙劇を観てても緊迫感がなくて面白味がないですし、他のプレイヤーの様子を観てみることにします。何組かは運営からのピックアップで表示されてるのでそれらから選んでみようかな。
「んっ!…ワイズのPNって…確かチトセとよく一緒にいる三人組の一人ですよね。」
そういえば今回は力試しも兼ねて、チームとしてではなく3人ともバラバラに参加してるんでした。ということは……うん、まだ三人とも生存中みたいです。場所は綺麗に分かれてるので、仲間内で闘うのはしばらく先になるかな?
ただ、そのワイズさんが他プレイヤーとばったり出会ってしまったようです。口をパクパクさせてるので何か喋ってるよう。音は………拾ってるには拾ってるようですが、ある程度の大きさでないと聞こえないみたいです。テレビの音量を最大にしてみてもほとんど聞こえないですし。
んで、対する相手は魔法使い然とした装備の二人と大盾を二枚持った鬼の計三人ですね。大分構成が偏っているようにも見えますが、3人チームのPvE込みで考えるとバランスは良いかも。物理火力が乏しいとは思いますが。
んっ!お互い武器を構え始めました。3対1で数的不利ですが、ワイズさんは大丈夫でしょうか。
おー、大盾さんがいきなり地面に盾を突き刺しました。それとほぼ同時に地面が隆起。2m程の土壁で自分達を囲ったようです。何かのスキルでしょうか。その隙に残り二人が口を動かしながら杖を掲げてます……ん?…TFOの魔法って"詠唱"みたいな行為って必要でしたっけ?んー、ジョブの魔法使いだと仕様が異なったりするのでしょうか……一旦保留です。
片方が小さめの火の球を放出する魔法。片方が風の刃を放つ魔法でしょうか。放物線を描くようにして土の壁を越えて着弾。ワイズさんから大きく右に逸れてるので、狙いはそこまで正確じゃないのかも。ただ、同じ場所に風の刃と火の球が同時に着弾しているんですよね。威力は大きさの割にはありそうです。
そして着弾している頃には、次の同じ魔法が壁を越えてきてます。連射性と威力的に結構凶悪ですね。着弾時に軽い爆発の余波もありますし。
ただ先程からワイズさんはそんな攻撃を気にすることなく、しゃがんで地面に手をあててるんですよね…もう片方の手には何かが詰まった麻袋を持ってるので、何もしていないということはないのでしょうが…。
ん、満足げな顔をして立ち上がりました!何かしらの準備が整ったのかも。その間も相手の攻撃は続いていて、徐々に狙いも近づいてきてます。猶予はあまりないですし、行動を起こすならここしかないと思うのですが。
「んっ?!………麻袋を投げて、逃げた?確かに逃走も善い選――
『―――ドゴオォォン……』
……………んぅ、耳が痛いです。少し音量下げます……」
いきなりの大爆発です!うーん、頭がぐわんぐわんします……。いったい何が起こったんでしょうか……今もワイズさんは、比喩抜きに滑るように移動して逃走成功してますし。
おそらく、大爆発の要因に麻袋の中身は高確率で関係してるはずです。その肝心な中身は分からないですし、ワイズさんの情報もあまり得られなかったんですが……想像以上には強いんでしょうねー……んー、機会があってもチトセたちと戦闘は御免です。
そのチトセもなんだかんだで全てのランキング上位二桁にいますし。一応この三人は一週間の遅れがあるはずなんですが……。
う、うーん……まだまだプレイヤーさん達はいますし、いろんな人の動きを観て学んでいきますかー。
* * *
「え、えーっと……どうしても撮らないといけないのでしょうか?」
『そうだねえ―――運営からは是非ともよろしくお願いしたいとのことみたいだねっ!ただ強制はしない感じかなぁ。1位おめでとうの記念写真のようなものだからね~』
[プレイヤーキル数] 19位、[モンスター討伐数] 4位
そして[生存時間] 1位。
これ、信じられないことにぼくの今回の記録なんですよ!ほとんど古竜さんのおかげなんですが…。
ただ、1万人以上が参加しているこのイベントにおいて六時間は短い時間でした。古竜さんが言うには、後4時間あれば…申し訳無い!――とのことでした。この結果でもう充分なんですけど……。
んで。[生存時間]で1位をとれたのは、このMAPの性質とムカデさんの能力がうまく噛み合ったからなんです。
まず、今回のイベントで倒した敵の経験値はパーティーに流れるわけですが、ムカデさんにも当然流れてきていたんです。その結果、
名前:ムカデさん
種族:大魔百足 Lv66
属:オオムカデ
種族スキル
《潜影Lv3》《魔霧Lv2》《圧縮Lv2》《物理耐性 Lv1》《自動回復Lv2》《竜血》
このようなステータスになりまして、もはやレベルは僕よりも高いんですよ……死んでるぼくには流れて来ないので……。しかも全長1m以上になったみたいですし。戦闘中は《圧縮》でサイズ調整していたようで、この写真撮影まで気づかなかったんですけども。
そして、最後の中心の?エリアは地面に空いたとても大きな穴でした。その巨穴の中での大乱闘。残り人数が100人近くというのもあって、障害物のない中での激しい戦いは観る分には面白かったです。
そんな中ムカデさんは大穴の側面をずっと移動して激しい戦闘の巻き添えを回避。徐々に狭まってくるエリア限界に合わせて動き、最後の1チームになるまで待っていました。この時点でムカデさんって意外にも狡猾だなーと思うのですが、まだまだムカデさんの活躍は続きます。
最後の1パーティーはその戦いで人数を減らし残り二人。どちらも軽戦士風の装備でした。狭まってくるエリア限界がかなりこの二人に近づいた時、ムカデさんが《魔霧》を展開。これによって軽戦士さん達がエリア限界だと誤認し反対側に後退りしました。
そして二人のうち一人がエリア限界触れてダメージを受け始めるほどに狭まり、その内一人が脱落。《魔霧》のある範囲はエリア限界ではないのですが、軽戦士さんにその事は分からず。最期まで誤認し続け、エリア限界により脱落。
このような思いもよらない方法で、ムカデさんが1位を掻っ攫いました。さすがはぼくのムカデさんです!
『でー、どうするのかな?撮っちゃう?撮っちゃうよねっ!』
「んー……でもあんまり目立ちたくないですし……ぼくはエンジョイ勢だから…」
『真祖よ。その黒いフードコートを被っている状態で、目立つ目立たないは無いのではないか?口元しか見えてないのではな。』
「……たしかに、そうですね。うん、なら大丈夫です。」
『りょーかいっ!
あっ、もうちょっと竜の真ん中に――そうそう、丁度翼の辺りで!
ムカデさんはその大きさでいいのかな?おっきい方が映えるよ!というか竜が大きすぎてユウさん以上に小さくなると、ほとんど見えなくなっちゃうんだよね~。
OK!その大きさなら充分見えるよっ!
――それじゃあいっくよー!はい、チーズっ!』
どのような写真になったかは読んでくれたみなさんの想像にお任せします!
これからも気ままなペースで更新していきますので、応援や評価の程よろしくですっ!