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02 キャラクリ


『To Freedom Onlineの世界へようこそ!ここはキャラクタークリエイトを行う場所だよっ。あ、特別メイクは既に有効になってるから気にせず創ってね!』


 変な違和感もなしにTFOが起動してまもなく、視界にリアルの自分を少し2次元補正したアバターと大量の項目の設定プレートが空中に展開された。

 結構細かく調整できるみたいで、凝る人は相当な時間をかけるんだろうと予想できる。聞くところによると作り直しは出来ないみたいだし。


『あっれー?無視?まさか無視してるのかな?!…………おーい!聞こえてますかー!』


 ただ、色の設定は既に用意されているいくつかの色から選ぶみたいで、髪の色とかは全部で20種類……少ないのか多いのかよくわからないけど、自分で色を作れないのはちょっと残念かな。


『私の話を聞けぇっ!!』

「んー、ちゃんと聞こえてるよー?」

『なっ………To Freedom Onlineの世界へようこそ!ここはキャラクタークリエイトを「いや、さっきも聞いたから大丈夫だよ?」……なにか質問があったらいってねっ☆』

「りょうかいですー」


 ほとんど人と遜色のない感情のこもった声で話しかけてくることに、AIの技術はどこまで行くのかなとちょっと不安になるよね。


 とりあえず下手にいじると、人ではないナニカが生まれそうな予感しかしないので、目の色を変えるだけに留めておくことにする。

 ま、二次元的な補正が必ず入るから顔バレとかの心配もそんなにないですし。親しい仲なら気づくかもだけど。


 どうやら髪形も自由に決めれるんだけれど、そういうセンスはないしこのままで。ちなみに髪形はウルフカットなんだけど、最近切ってなかったからちょっと長くなってきたかな?


『いや~、もうさっきから子供のログイン量が多くて多くて……ちっちゃくて可愛らしい子供好きなんだよね私!頬擦りしたくなるよ~!』


 うん………なにか危険な感じがするから無視しよう、無視。というかAIに個人の好みって存在するんだ……。


 さて、髪の色なんだけど……んー、ん?色の選択画面が出てこない代わりに、色を作れるグラフみたいのが表示されてる。それも、髪の毛の根本から先端にかけてグラデーションの設定もできるみたい……なんだけど。


「事前情報では単色の二十種類から選ぶって聞いてるんですけど、これってバグですか?」

『よくぞ聞いてくれましたっ!……こほん…えー、これは先程も言った特別メイクによる仕様で本来は課金要素なんだけど、髪の色に限らず目の色も細かく設定できるよ~。』


 ということらしい。といってもなぁ……髪の色は黒って決めてるし…『黒は黒でも、デフォの二十種の黒は明るめの黒色だから大分違ってくるはずだよ!』


「もしかして、心の声とか読めちゃう感じ?」

『一応VR機器は脳波を検出して行うからねー、基本ダダ漏れだと思ってくれればいいかな☆』

「そっかぁ……」


 まぁ、いいアドバイスも聞けたことだし明るさ0の真っ黒にする。一応グラデーションの設定は先端にかけて明るさが上がっていくという感じにした。まぁほとんど意味がないんだけど、使わないとなんかもったいないじゃん。

 明るさ設定が0のせいか髪が光を吸収してるんじゃないかと思うほどに光が反射しなくて、見た目さらさらしてそう。自分でいうのもあれだけどさわり心地が良さそうです。


 目の色は深緋にしました。この色にするのになかなか時間がかかったかわりに、結構自分好みの色が作れた。力作だねー。

 

『アバター設定はこれで完成でいいのかな?』

「はい、これで大丈夫です」

『それなら次は種族選択!……といきたいんだけど、ここで一つ注意を言うね♪』

「注意?」

『そそ、今創ってもらったアバターは種族によっては反映されないんだよ~。例えば種族:機械人(アンドロイド)はここのアバターに近い感じにはなるけど、所々で機械のパーツが見えるから、このアバターと同一にはならないんだ♪』


 TFOは種族選択だけでも有に100を越える種類があったはず。そのなかにはファンタジーでは定番の"魔族"なるものもあったはずなので、確かにこのアバター通りにはいかない種族もあるよね。


『うん、大体はそんな認識で合ってるよ。なんなら種族:馬とか犬とか…なかには蝙蝠とか魚とかもあるしねー……まっ!そこんとこ気を付けて種族を選んでね』


 といってもまぁ、既に種族は決めてあるし問題はない……はず。


「それじゃあ、"人ならざる存在"から不死族のゾンビにします」

『え"っ?!………本当にその選択でいいの?まだやり直せるよ?……誰一人として選んでない公式認定の不遇種族だよ?』

「え?公式認定なの?……」


 運営が不遇認定するなんてどんなだよーっ!とは思うけど……正直なところ不死族ならなんでもいいと思っている節はあるかな。

 人外の種族は基本極端だけど高いステータスを持ち、種族が人外でない者よりも成長が早い。それに、人外にしかない進化の概念があって、種族も途中で変わる。しかも種族が変わるごとに、前回の種族のスキルを引き継いだ上で新しいスキルを得ることができるとかなり魅力的だね。


 ただ、種族が人外の場合(特に魔物系統)プレイヤーのマーカーが出てても、モンスター判定となってPK扱いにはならないらしい。この設定のせいで一時期β版でモンスター狩り(中身はプレイヤー)が行われて、人外を選択する人がいなくなったみたい。この件で炎上しかけたとかなんとか……。

 ちなみに意思疏通が可能な人外種族なら合法的に街にはいる手段はあるそう。



 まぁ……一番の理由は死んでみたいからというろくでもないものだったりするんだけどね。生きていることが定義できないなら、死にながら生きるっていう矛盾を経験すればなにかわかるかもしれないし。


「と言うことで、種族はこれでお願いします。」

『はぁ……わかったよー、んじゃあそんな人ならざる者を選んだ君に少しいい情報を教えるね☆―――β版の影響のせいか人外の中の魔族系を選んだ人はまだ一人もいないんだ。スタートダッシュを切るなら第2世代のプレイヤーがくる1ヶ月後までに決めるといいよ♪』

「そんなことを教えていいの?」

『これくらいの情報ならなんともないよ!それにナビィのなかでは一番"力"を持ってるからね☆……よし、種族認定されたよ~。試しにメニューって唱えてみて』


 言われた通りメニューと脳内再生する。すると、目の前に一枚のプレートが空中に展開された……声に出さなくても出るんだ…


 名前:

 種族:ゾンビ

 属:低位不死者


 種族スキル

《物理耐性 Lv1》《HP自動回復 Lv1》《低位不死者》《腐乱死体》


 異邦人(プレイヤー)スキル

《》《》《》《》《》


『これがゾンビのステータスになるよー!TFOではステータスがレベルとスキル以外マスクデータになってるから、AGIとかSTRとかを底上げするなら日々トレーニングすることをおすすめするよっ!』

「この異邦人っていうのはTFOのNPCから見た僕たちの"総称"ってことであってるかな?」

『そうだね…その通りだよ~!ついでに教えると、異邦人スキルは初期スキルのなかから5つ選ぶことができるよ。これはここでじゃなくてもできるから、後々までとっておくってのもありだね♪スキルについて詳しい説明がほしかったら、メニューから該当のスキルをタップするなりするといいよー』

「それじゃあ後は名前を決めて終了?」

『そだよー、重複できないから早い者勝ちだよ♪』


 んー、試しにユウで重複チェックする。んっ!意外なことにまだ使われてなかった。

 と言うことでPNはユウにして、と。


『それじゃ最終確認するねー。……こほん、このスキルと見た目、名前でよろしいですか?』


 名前:ユウ

 種族:ゾンビ 

 属:低位不死者


 種族スキル

《物理耐性 Lv1》《HP自動回復 Lv1》《低位不死者》《腐乱死体》


 異邦人(プレイヤー)スキル

《》《》《》《》《》



 全然スキルの欄は埋めてないけど、あとからでも出来るならそのときそのときで決めていけばいいだろうし……


 うん、これで大丈夫。


『種族が人ならざる者のため、開始地点が2つありますどちらにしますか?』


始まりの街:種族が人系統と同じ場所。いろんな施設が揃っている。


無名墓地:名前も何も分からなくなった者たちが無数に埋められている墓地。ゾンビを選んだプレイヤーの開始地点でもある。


 うん……これは無名墓地一択かな。確か同じ種族の敵の場合、こっちから攻撃を仕掛けない限りは大丈夫だから、敵に襲われる心配はないしね。それに町のなかにいきなり腐乱死体が出てきたら……うん、たいへんなことになるよね。


『種族スタート地点の選択を確認しました。メインサーバーに接続中………それじゃあ、TFOの世界を思う存分楽しんでいってね!"あなたの求める自由は、ここにある!"』



 ナビの音声が途切れるとほぼ同時に、視界が赤みがかった黒に覆われる。

 周囲からは「うぅぅうぅ…」という幾つもの同胞の呻き声が響き渡っていた。

 反響しているということから地下墓地のような感じだと()()()()()


 

 話は少し変わって、ゾンビの種族スキルの説明をメニューから開いてみる。


 《低位不死者》精神的な状態異常を無効化し、食事や睡眠は不要だが、光・陽に当たると継続ダメージ(極大)を受ける。また、被光・聖属性4倍となり、闇系魔法強化(小)闇系魔法耐性(小)がつく。自動回復系のスキル効果上昇(小) 暗視を持つ。


 《腐乱死体》のため吐き気を催すほどの酷い腐臭を放っており、五感機能が著しく低下している。場合によっては肉体が一部欠損しているものもいる。


《物理耐性Lv1》物理攻撃に耐性を得る。レベル毎に物理攻撃のカット率上昇。


《HP自動回復Lv1》HPをスキルレベルに応じて自動的に回復する。


 見ての通り《低位不死者》は…かなり強いね。状態異常は死んだ体には意味がないってことなのかな。問題としてお日様ダメージがどんなものかなんだけど……《HP自動回復》のスキルレベルが上がれば打ち消すことができるかも?まぁ現在のHPがどれくらいあるかがまずわかんないけど、低位ってことは中・高と上があるわけでして……進化が待ち遠しいです。


 さて、ゾンビにおける一番の問題スキルがこの《腐乱死体》で……ゾンビの進化先は残念なことに次の進化であるハイゾンビということしかわかってなくて、分岐があるのかどうかもわからない。β版の時に検証組があまりの不遇さに匙を投げたそうな。ワンチャン何回か進化したら外れてくれるかも?


 それで、注目すべきは肉体の一部欠損があるという点についてなんだけど…どうやらゾンビ等はリスポーン時に確率で肉体の一部が欠損するらしい。

 

 メニューから自分の今のアバターが見れるんだけどね。

 いやぁ……一種のグロ画像でも見せられてるのかなって。確かに、ぼくは倫理コードをオフに設定したからかなり具体的に見えるけど、断面までぐちゃぐちゃに再現されているなんて思いませんでした。

 きっと、リアルの自分が死んで腐敗したらこうなるんだろうなぁ……という域を超えているんだよね。思わず苦笑が漏れるほど――あ、はい声も出せないんですね。


 今のからだの状況をまとめるとこうなる。


両目欠損・右腕肘から先欠損・左腕肩先から欠損・両足膝から先が潰れる・鼻は溶け落ちそう


 何て言うか……キャラを作り直したいくらいにはなにもできないよねこれは……どうしよう。




 よしここは切り替えて、まずは異邦人スキルを決めよう。

 5つ()決められると思うけど、初期スキルだけで100個近く存在すると思うと、少なく感じちゃうよね。


 攻撃スキルもあったんだけど、こんな状態じゃ攻撃どころの話じゃないから、とりあえずパッシブ系の《敏捷強化》《器用強化》《筋力強化》の三つに、おそらく必須になってくるであろう《鑑定》に……死にスキルと呼ばれる《空間把握》をつけた。

 なんで死にスキルと呼ばれているかというと、無理矢理脳内に3Dマップを展開されているような感覚みたいで、目が見えたり耳が聞こえたりすると情報の処理が追い付かなくて酔ってしまうからだそう。

 それでも頑張って使い続けた人もいたそうだけど苦労も虚しく、レベルがMaxになってもなにも起こらなかったみたい。


 だけど、今のぼくにとってはこの《空間把握》ほどありがたいスキルはない。初期スキルにこれを見つけた瞬間心が踊ってしまったのは内緒だよ?まぁ、別に内緒にすることでもないんですが。


 五感機能が大幅に低下していたのに、脳内に直接音と風景が僕を中心に半円状で描画された。いわゆる上俯瞰の視点。ただスキルレベルが低いからか、そこまで周囲は見えない。たぶん半径10mってところかな?たしかに、目が見えてたりしたら情報過多で酔うなー。



 とりあえず、気になる周囲の状況は―――


 なるほどなるほど、どうやら結構な数の同胞が歩いているよう。中には這って移動してるのもいた。

 地下墓地という予想は当たっていて、まるで土壁で出来た迷路みたい。そして何よりも暗いです、はい。《空間把握》にも暗視が適用されてるみたいで見えないことはないんだけど、それでも見辛いということは本来は光一つない暗闇なんだろうなと思う。

 

 とりあえずなにもできないので、《空間把握》を常にオンにしておきながらオプションを弄って時間を潰すことにしようかな。



引き続き面白いと感じてくれれば幸いです!応援や評価の程よろしくお願いですー!!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] <低位不死者>の効果で精神的な状態異常を無効化ってあるけど、そのあとに、死んだ体だからかな?って言ってるのはおかしくない?ゾンビなのに魂の呪縛とか混乱とかは無効なのに毒とか麻痺とかは有…
2020/02/26 10:55 退会済み
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